10入学生
「ふふふっ、頑張らなくちゃ!!」
冬休み前の試験が始まったので学園内はピリピリした空気に包まれていた、私も一番になりたいからそれはもう集中して問題を解いていた。どうして授業も受けないお前が一番なのかって、『星の乙女アストリア』にはパラメーターがあるのだ。特に『知力』という項目が重要でこれは図書室で勉強すると上げることができるのだ、だからゲームでは朝から昼間に攻略対象とイベントを起こしておいて、午後は図書館通いということが多かった。それが授業サボって朝から図書館通いしている私の『知力』は今は見えないけど、多分凄い数値になっているはずだった。
「よっし、一番だ!!」
試験結果が貼りだされて私はまた一番だった、ふっ伊達に『知力』のパラメーターを上げていないのだ。またウエイン王太子が二番目で悔しがっていて、そっちには近づかないで済ませた。私はこれから神殿に帰るのだ、そうすればスフィア大神官様がいらっしゃるのだ。抜き足差し足であっという間に荷物をまとめて帰った。
「スフィア大神官様、ただいま戻りました」
「おかえりなさい、ティア。学園生活は楽しかったですか?」
「ああ、この前学園パーティがあって参加しました」
「パートナーはどなたにしたのです?」
「リーリア様です、あの方ほど紳士な方はいません」
「そうですか、また他の話しも聞かせてくださいね。ティア」
冬休みこれでスフィア大神官様以外の攻略対象とはお別れだと思っていた、だが何故かウエイン王太子やアクシス第二王子が来た、それにキルシェ先生とサシュ、ロイド君まで来た。
「おお、ティア。俺が遊びに来てやったぞ」
「私は兄上の付き添いで」
「僕は貴女の成績をスフィア大神官様に報告に来ました」
「俺は暇だから来た」
「僕は貴女に会いたかったから来ました」
なんで攻略対象がこんなに来るんだよ、それぞれ実家で大人しくしとけよと思った。リーリア様だけが来ていなかった、さすが紳士は乙女のいるところに押しかけたりしないのだ。
「皆さん、神殿に泊まるおつもりでしょうけど大丈夫ですか?」
神殿っていうのは基本的に清貧がモットーである、寝床は固いベッドだし出てくる食事も粗末なものである、基本的に王族・貴族様がそれに耐えられるのかと思った。
「アクシス、俺は神殿の予算を増やすぞ。固いベッドで昨夜は凍え死ぬかと思った!!」
「そうですね、兄上。星の乙女の棲む場所がこれではいけませんね」
「僕は成績の報告は終ったので、次の生徒の家へ向かいます」
「はははっ、俺は転移魔法が使えるからな。昨日は自宅のベッドで寝た」
「ティアさんはこんな厳しい生活をしてるんですね、僕は尊敬します」
まずキルシェ先生が次の生徒の家に行くということで帰っていった、ウエイン王太子とアクシス第二王子は耐えていたが神殿の寒さに負けてお帰りになった。サシュにはそんなに暇なら神殿の手伝いをしろと言ったら帰った。ロイドくんは神殿の寒さで熱をだしてしまい、スフィア大神官様に治療して貰ったら帰った。キルシェ先生はともかく、他は根性のない男どもである、私はようやく冬休みを過ごせるようになった。私は固いベッドも粗末な食事も慣れていた、だから寮で出てくる料理には感動したものだった。
「冬休みはやっぱりいいなぁ、攻略対象もいなくなったし」
私は冬休みを孤児院の子どもと遊んだり、スフィア大神官様に神官になる方法をきいたりして過ごした。そしてあっという間に冬休みはおわってしまった、アストリア学園に帰る時がきた。私はスフィア大神官様に別れを告げ、アストリア学園に戻った。はぁ、また攻略対象と追いかけっこのはじまりかあと思った。外には桜が咲いていたが、私は絶対に桜には近づかなかった。何故なら桜の下で出会うというスチル、つまり恋愛イベントがあるのだ。だから私は桜を慎重に避けた、裏道を通って寮には帰った。
「ティア、桜のしたで俺と花見をしないか?」
「絶対にお断りです」
「それでは私とではどうでしょうか」
「アクシス第二王子、私の返事は変わりません」
その後も攻略対象が桜を見に行きませんかと来たが、絶対にいきませんとお断りした。だれが好きこのんで恋愛イベントなんか起こすもんか、と私は絶対に桜には近づかなかった。サシュが花見に行くかと言った時には、私の屍を乗り越えていけと言っておいた。そういえば俺の屍を乗り越えていけっていうゲームがあったなぁと私は懐かしく思い出した、ゲームバランスが絶妙で面白かったものだ。私は生前いろんなゲームをやっていた、ファイナルファンタジーはやっぱり七がベストだと思った、バイオハザードも初期からやっていた、あのくるくる回るキャラクター操作には苦しめられたものだ。そうやって昔を思い出しているうちに桜は散った、これでどうどうと私は学園を歩き放題だった。
「ティア、俺と王宮の春のパーティに行くぞ」
「謹んでお断りさせて貰います」
「何故だ!?」
「もうパーティには行きたくありません」
ウエイン王太子と言い争った上、私は王宮の春のパーティに行かずに済んだ。そしてぶっとんだ新入生が入ってきた、縦ロールにお嬢様言葉にキツイ目つき、あっこれ悪役令嬢だと思った。紫色の縦ロールと同じ色の瞳をもつ彼女はアレーヌ公爵令嬢というお嬢様だった。そして悪役令嬢として堂々と私に話しかけてきた。
「男をはべらせて、庶民の女ははしたないこと」
「いや侍らせてる男なんかいないから」
「とぼけるんじゃない、ああ可哀そうな皆さま。こんな悪女に騙されて」
「とぼけるもなにも、本当に男なんていないから」
「お黙りなさい、このわたくしが来たのだから、皆さんには目を覚まして貰うわ」
「どうぞ、どうぞ好きにやっちゃってください」
私は男を侍らせてはいなかったし、むしろ攻略対象からは逃げ回っていた。恋愛イベントも一つも起こしていない。だからアレーヌ公爵令嬢の行動は空回りするだけだった。アレーヌ公爵令嬢は私が誰の恋人でもないことを知るときょとんとしていた、その後嫌がらせをしようとしてきた。汚水を私にぶっかけようとして、足が滑って自分にかけてしまい泣いていた。あんまり可哀そうだったから、『洗浄』と『乾燥』の魔法で綺麗にしてやった。
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