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戦闘が始まる

「格納庫と滑走路に二〇〇、本部棟に二〇〇、兵舎と基地の周辺に一〇〇か……」

 雨の降るレトナーク空軍基地をたった一人で歩きながら、レーナ大尉は呟く。

 彼女は腰に無線機を付けており、部下たちからの報告を管理していた。

 レーナは、部下たちから提供されるバラバラな情報と、事前に確認しておいたレトナーク空軍基地に関する情報を、一瞬にして脳内で組み立てて、敵の状況を把握していく。

「警備隊は必要がない限り無視していい。駐機してる爆撃機の破壊が最優先だ。次がパイロット、整備兵の殺害。ただ、爆薬を使い切った部隊は、兵員の殺傷を最優先とせよ。それと、格納庫周りに敵の兵力が集中している。陽動班は兵力の半分を破壊工作班に向けろ」

 レーナ大尉は命令した。

 〈了解〉

 無線越しの応答が帰ってくる。

「各班、作戦完了次第、撤退を許可する。その間、私は本部棟において陽動作戦を行う。総員、一人でも多く生きて帰るぞ」

 〈了解〉

 レーナは無線の電源を落とす。

 もう通話は必要ない。

 彼女はナイフを構えて、本部棟へと接近していく。

 本部棟の正門には装甲車が展開しており、さらに建物の屋上には狙撃手まで配置されている。正面からぶつかっても勝てないことは明白だ。

 レーナは、建物の裏手を侵入経路に極めた。

 匍匐前進と駆け足を組み合わせながら、慎重に本部棟の建物へと近づいていく。幸い、豪雨が彼女の姿を隠してくれていた。

 三階建ての本部棟は、無駄な装飾のない無骨な鉄筋コンクリート造りで、豪雨の中で見ると、とてつもなく大きく見える。

 レーナは兵力が集中している正面を避けて、裏側から建物に接近した。

 本部棟の裏側は、正面ほどの兵力こそいなかったものの、それでも十名ほどの警備隊員が警戒に当たっている。

 ただ、建物裏側は駐輪場になっており、豪雨と相まってかなり視界が悪い。

 単独行動するレーナにとって、かなり都合の良いことだ。

 レーナは物陰に隠れながら警備隊員の一人へと近づいていく。

 その人物は、駐輪場の中を落ち着きなく歩き回っており、ちょうど周囲の人間にとって死角となっている場所に入り込んでいた。

 レーナは素早くその警備隊員に近づくと、手のひらで彼の口を押さえ、首筋をナイフで切り裂いた。

 標的にされた警備隊員は、悲鳴を上げることもなく崩れ落ちる。

「どうした?」

 別の警備隊員が自分の方に向かってくるのを確認して、レーナは素早くその近くに隠れる。

「お……」

 仲間の死体を発見した警備隊員は、また叫び声を上げることもできず、首筋から脳髄までをナイフで貫かれて倒れた。

 二名が死亡して、ようやく事態を把握した警備隊員たちは、慌てて銃の安全装置を解除し反撃を開始しようとする。

 だが、その時にはもう遅かった。

 レーナは即座に物陰から飛び出して警備隊員たちの中央に躍り出ると、消音器を取り付けた短機関銃を構え、セレクターをフルオートに合わせる。

 三発の弾丸が放たれ、警備隊員の一人が頭部を吹き飛ばされ倒れた。

「撃て!」

「クソっ!」

 警備隊員たちは即座にレーナへと照準を合わせ、引き金を引いた。

 レーナは警備隊員たちの構えた銃口の向きを見切り、舞い踊るような動きで飛び交う弾丸を躱していく。

「撃つな! 同士討ちになるぞ! 銃剣かナイフで処理しろ!」

 命令を下そうとした隊長らしき人物に対し、レーナは短機関銃の弾丸を叩き込む。

「ぐっ!」

 たとえ防弾ベストを着用していても、ダメージを一切受けないわけじゃない。同じ場所を何発も撃たれれば、その衝撃は防弾ベスト越しに着用者の内臓を叩き潰す。

 隊長らしき人物は腕に三発、防弾ベストに十発ほど撃ち込まれて、仰向けに倒れた。

 そして、彼の懸念は現実のものとなる。

 レーナの素早い回避機動にフルオートで応じた警備隊員が、自身の向かいに立っていた仲間を、その弾幕に巻き込んだのだ。

 仲間から撃たれた隊員は、信じられないと言った目をしながら倒れる。内臓を損傷したらしく、その口から血が溢れた。

「うわぁあああ」

 仲間を射殺したという事実にあっけなくパニックを起こした隊員を放置して、レーナはひたすら射撃を続ける。

 一分とかからず、レーナは十名ほどの隊員を全員射殺した。

 生き残ったのは、仲間を射殺したことでパニックを起こしている隊員だけだ。

 レーナは短機関銃を首から下げて、代わりに拳銃を抜く。

「ひっ! いや……! 助けて!」

 パニックを起こした隊員は、泣き叫びながら地面を這いずってレーナから逃げようとする。

 レーナはその頭に一発、発砲した。

 隊員は頭部を撃たれて倒れる。

「全滅か。弱いな」

 レーナはそう呟くと、地面に転がる死体の一つから銃を奪い、窓ガラスに向けて連射した。

 多少の防弾性能も考慮されていた窓ガラスだが、自動小銃による連射にはひとたまりも無かったようで、すぐに亀裂が入り始め、弾倉二つ分ほどを撃ち込む頃には、粉々に砕け散ってしまった。

「何だ!」

「敵襲だ!」

 室内が、にわかに騒がしくなる。

 レーナは窓枠を乗り越えて、室内戦を開始した。


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