相互守秘規定第34項・違反記録
記録形式:互助会内報告書(記録指定:閲覧階層レベルD以上)
出典:旧第9地区対応班・調整官A報告メモ(削除済)/2040年11月8日付
■■件名:対話型封鎖術式の失敗について■■
対象:第9区居住体内に発生した症状者1名(性別不明/年齢不明/記録名義:R)
対応班:第9区班・6名(うち帰還2名、失踪1名、沈黙2名、死亡1名)
■発端:
2040年10月末、“発話内容の意味が重複し続ける”という報告を受理。
症状者は会話文脈を再構築し続け、自他の境界が曖昧になる兆候を示した。
当初は精神障害と診断されたが、記録上の語彙パターンが“明らかに外部構文”に酷似。
■初期対応:
調整官指示のもと、交信型拘束儀式を実施。
第3日目より、以下の現象が発生:
・班員の発話が徐々に“Rの声色”に同期
・構文解析にて“対話内容が逐次変異する構文鎖”を記録
・録音ログにて“第三者の声”が混在(出現パターン非人間構文)
■結果:
封鎖術式は第5日目に崩壊。
班員2名が自発的に発話を停止、記憶の大半を喪失。
残る1名(班長代理・S)はその場で心停止。脳内から高密度構文記録の痕跡。
■備考:
本件の反省として、対話系症状に対する初動に「構文干渉フィルター」を用いるべきと結論。
以降、症状者の“語り”に対して文字記録を優先とする方針が確立された。
なお、対象“R”は現在も所在不明。
封鎖区域内の壁面に“何者かによる自己記述”が継続中との報告が継続している。
——この記録は互助会内部アーカイブにて封印済。