表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/19

それはひとつのスレッドから始まった[8]

 今日のランチは、昔からある洋食屋。

 口コミによると、40年も前には既にこの場所で営業していたそう。

 しかし、だからといって古臭くもなく、私達の世代にとっては憧れの佇まい。


 私はトルコライスを。

 レンは豪快にステーキランチをチョイス。

 背が高いから、お肉をガッツリ食べないと栄養が全身に回らないのね。


「そんな事あるかいっ! あははは」


 でも、ガッツリ食べてるのには違いないよね。


 老舗洋食屋。

 レトロランチなんて銘打ってるけど、昭和の時代にはこんな雰囲気のこんな味わいのランチが好まれてたのだという。


 私達世代には、「懐かしい」などという言葉は思い浮かばない。むしろ斬新かもしれない。だけどSNSでは、多くの人が「懐かしい味」と表現している。


 つまり、昭和を過ごした世代の人達がここを訪れ、ご自身の青春時代の味を懐かしみ、SNSに投稿しているという訳だ。


「ちょっと…」

「うん、行ってきて」


 レンは席を立つと、お手洗いへと向かった。

 1人手持ち無沙汰になった私は…。

 バッグの中から…。


 スマートフォン。


 今日は触らないと思っていた。

 なのに自然と右手がざわつき始める。

 そして、あのアイコンを親指が…。


「ミンミン…」


 声を聞いて我に返る。


「ミンミンは? 行く?」

「う、うん」


 戻って来たレンを席に残し、今度は私がお手洗いへと向かった。

 その手には…。


「うっ……」


 私の意思とは裏腹に、このスマホは手から離れてくれないのだ。


 この、触れたくないアイコン。


 そこに表示される数字、Mの右上の42。


「よんじゅうに…」


 怖い。

 何ていう数字なの!?


「大丈夫ですか? もし!? 大丈夫!?」


 けたたましく響く声に、ハッと我に返った。

 その個室の中には、アイコンに表示された数字に目が釘付けの私。

 あまりにも時間が経っていて、レンが心配して女性店員に声をかけて欲しいと伝えたのだった。


 ふとアイコンに目をやると、そこには…。


「51」


 何故か安心する私だけど、どんどん増えていく数字は「炎上」を意味する。


 今私は、どんな言葉で罵られているのだろう。

 いやいや、今日はレンとのデート。

 こんなSNS如きに心を乗っ取られている場合ではない。

 このお楽しみは、家に帰ってからだ。


 え? 何?

 お楽しみって何よ!? 私、何言ってんのか分かんない…。

アクセスありがとうございます。

更新は、X および Instagram にて告知致します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
とても面白かったです! ミンミンに共感できるところがたくさんありました。 SNSって、どんな人が見ているかわからないから本当に怖いですよね。 自分もいつもおっかなびっくりで使っています。 大量の通知…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ