Battle 3 konoha075@yokohama[18]
スマホ没収から4日目となった。
「これからどうしていくか話し合おう」
話し合うって言ったって、そこには私の気持ちなど反映されていなかった。要するに、デトックスの名の下にゴリ押しで没収という荒療治に踏み切った訳だ。
きっと、今からが一番辛い時期になると思う。
「ほな、行くしな。ミンミンもちょっとは運動しぃや」
そう優しく声をかけて、レンは今日も会社へと出かけて行く。
「うん。ちゃんと運動記録も付けていかんと、仕事休んでたら太っていきそう。あはは」
「運動記録かぁ…? どこに付ける?」
「スマホのヘルスケアアプリ…」
「スマホ?」
―あ! わざとやろ、此奴。
「と、兎に角行ってらっしゃい」
さてどうする? このスマホに貼られたシールを頑張って剥がしたところで、レンに見つかればもっと酷い事になるだろう。
―安っすい万歩計でも買うかな。それならいっそ、あの家電量販店まで歩いてみよう。
そう思って私は、一度手に取ったスマホをまたテーブルの上に置き、お気に入りの服を着ると、軽く化粧をしてバッグを手に取った。
―BOOM
―BOOM
―BOOM
テーブルの上で震えるスマホ。不規則な感覚で響くそれが意味するものは。
私は反射的にテーブルに目をやった。しばらくの間、ガン見してその動きを見守る。
バイブレーションが止まった。
訳の分からないシールで覆い尽くされたスマホ。ピクリとも動かなくなった様は、何とも不気味だ。
自分のスマホなのに汚物処理でもするかのような手つきで、恐る恐る触れてみる。
さっきまでのバイブレーションの連続が嘘のように、今は何事もなく静か。
空気の張り詰めた感が和らいで少し安堵した私は、スマホをまたテーブルに戻し、そのまま部屋を出ようとした。
―BOOM
「え?」
確かに響いた、バイブレーションの音。
もう一度テーブルに近寄り、スマホに手を伸ばす。
―BOOM
「きゃあっ!!」
画面に貼られたシールは、そのバイブレーションが持つ意味を覆い隠したまま。
そういえば、あの1345以来「M」のアイコンを侵食する通知の数を見ていない。今、どれ程に増大しているのだろう。もしかして、桁が増えたりしているのだろうか?
あのクソアプリがどれだけのコメントを受け付けるのか、それさえ未知なままだ。
「あかん! まだ気にしてる。忘れろ、忘れろ美優。この世にMTG-roomなんて存在しぃひんねやぁ!」
1人喚きながら、私は何とか自宅を出た。
外は陽気に包まれ、温かな日差しが降り注ぐ。
さっきまでの緊張感から解放され、落ち着きを取り戻した私は青空を仰ぎ見た。
照りつける日差しは、寧ろ暑いぐらいだ。
「あ、日焼け止め忘れてた。んもぉーっ!」
そうは言いながらも、心底苛立っているのではない。部屋に篭ってスマホの画面をひたすら睨んでいた、先日までの私とは違う。今はそんな気がする。
もし不安があるとすれば、それは自宅に帰ればまたスマホの画面を求めてしまうのではないか?という事。こうしている間にも、あの通知の数は増え続けているのだろう。
だけどこの日差しを浴びていれば、そんな事もどうでも良くなってきた。
河原のベンチに座ってみた。
サラサラと流れる水の音。スズメ達の遊ぶ姿とその声。道端で毛繕いする猫。
こんな穏やかさを感じるのも、どれぐらいぶりなんだろう。
「そうか。今は自分と向き合う時間なんや」
部屋でのワンシーン、1人コントみたいなのを想定して書いてみましたよ。
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