Battle 2 O-moricha-han [18]
私は優勝した。
――は? 何に?
兎に角、勝てそうな気がする。
お腹いっぱいでろくに歩けない状態で、ノロノロと湖岸のベンチに辿り着くと、その上に仰向けに寝転がった。
さっきまで瞳孔が開いていたレンの目は、今はまるで汚い物でも見るかのように細くなり、眉間にシワが出来る。その表情は、所謂顰めっ面というやつだ。まるで般若の面の面持ちだ。
私が優勝したのがそんなに見かねるものか?
てか、「優勝」って言ったの、お前やん。
いえいえ、大食いと優勝は別件。そんな事は分かっているけど、どこかモヤモヤしてしまう私は、レンに、重いひと言をぶつける。
「ラーメンまで頼んだの、レンやで」
「いや、だからぁ、無理やったら俺が食うって言うたやん。それを全部ミンミンが食ってまうから」
「女の意地よ」
「は? ちょっと何言ってんのか分からない。意地って、何の?」
「絶対に負けられない試合」
優勝したのは私だが、明らかにレンの方が優勢な気がする。
って、優勝って何なのよ? そっちの方が、何言ってんのか分からない。
兎に角、動けない私が不利なのは言うまでもない。
ちょっと待って!!
闘う相手はレンじゃない。言うまでもなくO-moricha-hanだ。
仰向きなまま私は、地面に雑に置いたバッグからスマホを取り出した。
「またMTGかぁ?」
こんな私の行動を見て、呆れた口調で言い放つレンに、私はひと言「違う」とだけ言ってスマホを空にかざすように持ち上げた。
佐倉美優:
「ラーメンと大盛りチャーハンを食い潰す!」
「え? 本名?」
「うん。Headbookやねん」
「ビックリしたぁ。MTGなんか本名でやったらヤバすぎやもんな」
本名・フルネーム表示のHeadbookである事を知り、安心したのだろう。レンの表情は般若から戎さんへと変わった。
しかし刹那、今度は怪訝そうに眉を顰める。
「ちょっと待て」
その手が私のスマホを触ろうと伸び、頭の距離感がなくなる程に近付いて来る。
―まさかこんな状態でキス?
アホか、私。そんな事、ある訳がない。食ったモン出るわ。
違う。レンは、私が打った文に違和感を持ったようだ。
「いやっ! 覗き込まんといてっ」
「いや、ちゃうねん。それ…」
「食い潰す」じゃなく、「食い尽くす」だ。正しい日本語で話すとなると、この場合は「食い尽くす」になる。レンはそれを言いたかったのだ。
だけど、敢えて表現を変えたこれには意図がある。そう、大森千夜子にトラップをかけたのだ。大盛チャーハンを食い潰す…と。
これに千夜子がどうレスポンスして来るかで、此奴がO-moricha-hanであるかどうかの判断要素が生まれるのだ。
「食い潰す…で、いいねん」
レンに不敵な笑みを見せると、私はそのままスマホをバッグに仕舞った。あとは千夜子がどういうレスポンスをしてくるのか、リプライはあるのか、そこを楽しみに待つ事にする。
「さ! もうちょっと歩こっ!」
何だか気持ちが盛り上がってきた私は、ベンチからピョコンと起き上がった。
刹那、体の中から込み上げるものを感じた。
「え? え? ミンミン…」
「あぁ、ヤバ。マジで食べたもん出そう…」
「ヲイッ!!」
アクセスありがとうございます。
更新は、X および Instagram にて告知致します。




