Battle 2 O-moricha-han [16]
次の週末、私はそのあほと会った。地下鉄壁ドン事件以来、面と向かって話す事がなかったため、ちょっぴり緊張してしまう。
何で? 私達、恋人同士やん。
そのあほは、やっぱり私にとってはイケメン。誰が何と言おうと、レンはイケメンなのだ。
そのイケメンが、私に問う。
「どした? 行き詰まったんか?」
え? 何に?
確かに行き詰まっているのは正解だ。だけど私、MTGは開いてないんだけど。
て言うか、このイケメンは知ってるの? 私が今、大森千夜子をO-moricha-hanであると仮定して、ネットから葬り去ろうとしている事を。
「急に会おうて言うから」
「私、レンと会う時っていつも行き詰まってたっけ?」
「いや、そういう事もないけど…」
いささか不愉快ではあるが、見透かされているのも事実。何も言い返せない自分が居る。
いいよ。今日は完全降伏だわ。
この日は、京都市内へは向かわず、府県境を跨いで大津の琵琶湖岸のプロムナードを歩いてみた。
暖かな日差しが降り注ぎ、濃いピンクで彩られた芝桜畑が、目にも鮮やかに映える。
「たまには…」
「うん」
私のバッグから取り出した自撮り棒にレンのスマホをセットし、芝桜の前に2人しゃがむと、自撮り棒を目一杯伸ばして俯瞰気味に持つ。
私達の背景は、一面濃いピンクの芝桜。
「そうか! そうなんや」
「え? 何が?」
またぁ、惚けてぇ。分かるくせにぃ。
そう。こんな単純な事で、私達の愛は確かめ合える。そして…。
「今日はスマホ触ってへんな」
レンはちょっぴり嬉しそうに言う。
「そうよ。触らへんよ」
何となく、浜大津から近江大橋が見える辺りまで歩いて来た。
レンと一緒に買い物に出かけて、大好きなブランドのショップで見つけた、この和柄のブラウス。レンは何も言わないけど、彼の視線は何度も何度も私の顔から腰の辺りまでを往復し、そして瞳はキラキラと輝く。
「さっきから、もう! 何チラチラ見てんのっ!」
「いや、ははは…」
照れくさそうに笑う。優しさと温かさを感じる。そしてちょっとだけ、◯◯…いやん♡ (※脚注)
「良かったな、それ買えて。似合ってるで」
やっと言ってくれた。こんなひと言を言うだけなのに、照れてるのね。
「ところでなあ、そろそろ腹減ってへんか?」
「ね! この先の公園にコンテナカフェが出来てるねん。行ってみぃひん?」
「どの辺? 何ていうとこ?」
「ちょっと待ってな…」
―あ!
その刹那、私は戸惑い、硬直した。
調べる=スマホ。今この瞬間に、私は自分自身で沈黙を破ろうとしている。
見なければいい。「M」のアイコンを無視すれば、それでいい。
無視すれば…。
「164……」
「ん? 何が?」
「な、な、何でもない」
とんでもない数字を見てしまった。
兎に角誤魔化してみせるも、何と歯切れの悪い事だろう。
私は言葉を発する訳でもないのに、何故か吃りながら「Gurugle」のアイコンをタップした。
※脚注 ◯◯に適当な言葉を入れて下さいね。
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