Battle 2 O-moricha-han [6]
今日の収穫。
TmCの和柄ブラウス。京都を前面に押し出し、和のテイストを洋服に盛り込んだ、独特のセンスが人気のブランド。その価格設定も魅力的。
さっき案内してくれた人は、いつもは見かけないけど、本社とか工場の人だろうか?
スラッと背が高くて顔立ちも美しい。にこやかで、言葉も分かりやすくハッキリしている。
素敵だ。あんな素敵な人が、こんな素敵な服を作っているのか。
しかし…、ああいう人は、絶対にMTGに毒されて欲しくない。
忘れよう。見なかった事にして。
「なぁ、ミンミン。さっきの店の人、谷山さん。なんかええよなぁ」
「女から好かれるタイプやわ。ってか、私に他の女の話するぅ?」
レンは少し、何か言いたげな態度でいる。
いいえ、言いたい事は分かる。どうせMTGにどっぷりな私への批判に決まってる。
分かるの。分かるのよ。谷山さん? だっけ、あの申し訳なさそうな表情で「売れてしまいました」のあの語尾のイントネーションの可愛さ。
私にはないのは分かってるの。
「てゆか、あざとくない?」
「そうか? ミンミンなぁ、何か否定が多なってきたな」
心にもない事を口走ってしまった。
私、もしかして…女性に対してアンチになってる?
それじゃあ…、
O-moricha-hanと一緒やん!!
全てが、全て…。
「彼奴のせいやわ」
「彼奴って? あのなミンミン。最近やっぱりオカシイわ。その“彼奴”のせいかも知らんけどな、オカシイねん」
尤もだ。オカシイ事も理解している。
きっと、谷山さんを否定するのも、その素敵さに対する嫉妬心の表れ。
なのに、それをデート中にレンに言ってしまうなんて、本当にどうかしている。
帰りの電車、レンはまた私の自宅の最寄駅で降りた。
いつもなら電車に乗ったまま手を振るのだけど、今日は私と一緒に降りてしまった。
そして、私の右腕を掴み、ホームから人が居なくなるのを待った。
「なぁミンミン。俺な」
これは…!
今の状況だと、絶対に有り得ない壁ドン。
こんな気まずい雰囲気でそんな事するのなら、私は逆にレンの神経を疑ってしま……、
え!?
ドン……⭐︎
―嘘やろ?
レンの唇が近くなる。
あぁ、私、奪われてしま……、
「今の…ミンミンが今の状態で変わらへんのやったら、俺ら、距離置いた方がいいと思う」
ハッ!?
予想だにしないの言葉が私の両耳から侵入し、胸を内部から突き刺した。
このレンの眼差しに、私は言葉を失った。
だけど、声だけは失わなかった。
それはそれは、とても大きな悲鳴。
「ぎゃぁぁぁあああああああっ!!!」
目を閉じた。
足音が聞こえる。
「どうしました!? おいっ! お前っ!!」
駅員が全速力で走って来て、レンを取り押さえた。
「違う! 違うねん!」
「違わへんわっ! 別れ話なんか要らんねんっ!!」
「別れ話…ですか? 兎に角お前、ちょっと来なさい!!」
「いや、だから違うんですよ! この女と距離置きたいのは俺の方なんやてっ!!」
「嫌っ! 勘弁してぇ」
「ほら、この人は…」
「ミンミン、俺の手を離せ!!」
「嫌やっ!! 距離なんて置きたない〜っ!!」
呆気に取られた駅員は、ボソッと呟いた。
「俺はどうしたらええんな?」
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