Battle1 s_n_boy [9]
「佐倉さん、ここ…」
「あ! すみません。記載ミスですね」
職場のマネージャーから指摘。
今まで、記載事項のミスなどなかった私だけど、何故か7を2と書いてしまっている。
「内容量が5つも違ってたら、場合によってはクレーム案件。注意してっ」
「ユーザーからの指摘ですか?」
「まだ出荷前。まぁ幸いやな。事務の杉本さんにお礼言うときや」
ううっ…、間違ったのは確かに私。なのにマネージャーのこの言い草には腹が立つ。
そんな私の顔を覗き込んだ、仕事の相方の岸本さん。怪訝そうに眉を顰めた。
「何か気に入らへん? まぁ棘のある口調やけど、言うてる事は何もおかしくないで」
う…此奴も敵か?
「最近、佐倉さんおかしい。何か悩んでる? 仕事、やりにくかったら言うてな」
違う。仕事がやりにくいんじゃない。岸本さんは何も悪くない。私が悪いんだ。
え? 悪いのは私…やん!?
また自己嫌悪が襲って来る。一瞬でも岸本さんを敵と思った事で、また私は自分を責めてしまう。
「ごめんなさい。最近私、病んでますよね?」
「知らんけど…確かにちょっと変かなぁ」
事の成り行きを話したって、岸本さんに分かる訳がない。兎に角ややこしい世界に、私は踏み込んでしまっている。
ん? 何で?
成り行きを話す必要なんて、ないはず。「SNSで尽く炎上してしまう」と言えば、それは伝わるし、答も単純明快。
それなのに、思考回路が右往左往し、複雑に絡み合ってしまう。
「話したい事あったら、あとで聞くわ。とりあえず仕事に集中しよか」
「あ、はい」
こんな時は、相当意識していなければいけない。気を抜けばすぐに、余計な事を考えてしまう。
今日の伝票は、岸本さんが書いてくれる事になった。それだけでも救われた気分だ。
「さあ、言いたい事は言うてな」
仕事が終わり、私服に着替えると、岸本さんは休憩室へと私を呼んだ。
「いつもお洒落やなぁ。それは?」
「SNSでフォローしてる人が、ちょくちょくアップしてはるん。それを参考にしてコーデしてんですよ」
岸本さんは、私の服装を褒めてくれた。そしてそれは、話の本題へと繋げるのに好都合だった。
「そのSNSねんけど…」
岸本さんは、何かを察したのだろうか。その表情が少し動いた。
「私がスレ立てると…」
「炎上?」
私はコクリと頷いた。
「ははーん、MTG-roomかな?」
やっぱり気付いた? えっ!? そんなに有名なの?
「アンタなぁ、あんなもんやるしやわ」
呆れたと言わんばかりに笑う岸本さん。私はそのひと言に、妙に納得した。
「やるなとは言わへんけど、やるんやったら覚悟要るわなぁ」
「そうですねぇ。私、まだ覚悟が足らんのかなぁ」
あれぇ? 会話、おかしくない?
「あんなもん、スレ立てたら漏れなく炎上やで。アンタ、分かっててやってんのちゃうん?」
「分かってる…つもり」
つもり。つもりなんだけど、もしかしたら分かっていないのかもしれない。心の片隅で、楽しいやり取りを期待しているのかもしれない。
「ところで岸本さん、何でそんな事…」
その刹那、岸本さんの表情は変わった。
それは紛れもなく、不敵な笑み。
そのあと、岸本さんはニヤついたまま言葉を伏せた。
もしかして此奴…キモイやんかっ!!
ええっ!?
新たな刺客登場??
怖いよ。岸本さん、怖〜い!!
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