Battle1 s_n_boy [7]
―BOOM
「ん? ミンミン、スマホ鳴ってへん?」
「え? あ、いいの。今はレンが大事♡」
「また♡付いてるで」
―見えるんかいっ!
折角のデート。久しぶりのデート。
こんな素敵な時間を、MTG-roomなんかに奪われたくない。
今はこの状態でいたい。くだらないクソリプ合戦など忘れて、レンとの時間を目一杯楽しみたい。
もうひとつのお楽しみは、その後だ。
「大事なメッセージやったらアカンし、とりあえず見ときいや」
「ええ〜?」
躊躇う様子を繕ってみる。
まあ、確かにレンの言う通りだわ。
ちょっと嫌なふりをしながら、スマホを取り出して画面に目をやる。
―!!
「どう?」
「い、いえ、もうホンマ、しょうもない迷惑メールやわ」
「そっか。消しちゃえ」
「ねぇ」
レンはバッサリ切り捨てた。その言葉に従うかのように、私の指は「削除」……ではなく「保存」を、ふふふ…タップする。
あとでたっぷり料理してやるのだ。
ああ、私って何て酷い女なの!
こんな事考えながら、レンと一緒に居る幸せを噛み締めている。
一体私、幾つ顔を持ってるんだろう。
「ミンミン、どした?」
「へっ!?」
「顔は笑ってるけど、目が笑ろてへん」
―うっそぉ!!
「それはね、折角レンと2人で居るのに、迷惑メールに邪魔されたから…ちょっとムカついてんねん」
「ごめんな。俺が「見とき」って言うたからやなぁ」
その腰の低さがウザくて可愛い。
ああ、晒したい。いや、大切な人なのだから、晒したくない。
少し肌寒くなってきた。
気が付けば、日は西に傾き、間もなく沈み行こうとしている。
すぐ近くの駅から電車が発車して行く。私はちょっとお茶目に駆け足で線路の下を潜った。
「クロス!」
「何やそれ?」
「電車と交差したらラッキーなんやって。鉄ヲタさんが言うてはった」
「ほな、環状線やったら、しょっちゅうラッキーやん。あっはっは!」
レンは笑ってくれた。
MTGのようなSNSだって、たまには役に立つものなんだ。
「今日はありがとな」
「え? 何?」
「たまたま会うただけやのに、半日付き合ってくれて」
「何よそれ、よそよそしいやんっ」
ありがとう…。
きっとレンは、半日一緒に居た事より、一緒に居る間にMTGを開かなかった事に「ありがとう」と言ったのだと思う。
厳密には開いたのだけど、それに対するアクションを取らなかった事…。
厳密にはアクションを取った。感謝されながらも、クソリプを保存しておいた。
厳密には、厳密には…。
大切な時間に、レンを欺いてMTGをチェックしている。私、何ちゅう事しとんねん!
帰りは地下鉄に乗った。
レンは私の2駅手前で降りる。
1人になった私は、ひとり笑みを浮かべながら呟いた。
「さあ! やったろやん! ヒッヒッヒ!!」
いやぁ〜、怖い怖い。
美優の腹黒さが怖いっ:(;゛゜'ω゜'):
関西圏にお住まいならご存知の、大阪環状線。
大阪市内外周をぐるっと回る大都市の交通の要で、ひっきりなしに電車が走ります。
交差したらラッキーなら、大阪市内で暮らす方に不幸はありませんね 笑。
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