固定アンチ!?[8]
「巨漢女なんだけど…」
主語がない。いや、主語は“巨漢女”であり、それが誰なのかがこの文面では特定出来ない。
そこを奴らは勘違い…じゃない、餌にして、このスレ主を弄ろうという魂胆だ。
私はまたすぐにMTGを閉じると、範子に電話をかけた。
「範子、さっきはごめん。もう一回会える?」
「サクラ…う、うん」
一旦自宅に帰ったのに、また出て来る。ただ事ではない。
女子にとって、容姿をでっち上げられて拡散などというのは許しがたいし、放っておく事も出来る訳がない。
範子のように美意識高め女子なら尚更。
だけど……。
「私、文章下手すぎなん?」
範子の気持ちを思いやれば、いささか答えにくい質問ではある。
だけど、やらかしたのは事実。そこははっきりと言ってあげるべきだろうと思う。
「そ…そやなぁ。あのね、範子」
この文面からは、巨漢女がどちらに該当するのか分かりづらい。いや、寧ろ読み手の捉え方に委ねてしまっている。
SNSでネタにされないためには、文面の細やかな部分までをじっくり確認し、第三者の立場に立って伝わるかどうかを吟味する必要がある。
「どうしたら…?」
「ん〜、拡散してしまってる以上、この文面を編集しても無駄かなぁ」
「引用って、私の投稿にリンクするんちゃうの?」
「引用だけやったらそれで何とかなるかもしれへんけど、こういう嫌らしい根性した奴は…」
スクリーンショット、所謂スクショを撮っておいて、元の投稿が消去されてもその文面を画像として晒す。
スクショされればもう、太刀打ち出来ない。
「何!? 何でそこまでして人のミスを晒すん!?」
「大盛の引用スレがズバリそれ。ミスを晒すんじゃなくて、揚げ足取ったりして笑い物にしよるねん」
「性格悪ぅ!! そんなんハラスメントやん」
「そんな奴らが蔓延るのがMTGねん」
見れば見る程に辛くなりそう。だけど範子は、自分自身の投稿の引用スレッドを見てはコメントをチェックしている。
konoha075@yokohama:
「>O-moricha-han この文面から察するに、この人は巨漢女に弾き飛ばされたんじゃないですか? 自分の事を言うのなら、「女」は付けずに「巨漢」でしょう。つまりこのスレ主さんを巨漢女と捉えた人は読解力がない訳です」
tacbo-z:
「>O-moricha-han 貴様の見解なんかどうでもええんや 正しい意図を読み取れ」
tngc556:
「>O-moricha-han 中傷スレ草」
bonbon:
「>オーモリだっせぇww」
tsuyo-r25:
「>O-moricha-han タヒんでくれ」
……
……
「な、何? この反応」
「みんな大盛の固定アンチやと思う」
「怖っ」
「怖いなぁ。あ、とりあえずコノハさんにはお礼リプ送っとき」
「あ、は、はい……」
これが、これがMTG-roomの怖さ。
マトモな奴なんて居やしない。
分かったのよ、範子。ここで生き延びるには、力のある者を味方に付ける事。
konoha075@yokohama氏は是非とも味方にしたい。
「サクラ…」
「うん?」
「私、サクラをフォローしていい?」
「私の界隈、キツイで。いいの?」
やめるという選択肢はないのか。
範子は戦うつもりだ。
だけど私もMTGの人間。最早人の心など持ち合わせていない。範子を、ライバルとして受け入れようじゃないか。
みんな孤独な戦士。
MTGには耳よりな情報が溢れている。しかし、それを手に入れるには、数多居るアンチの心ないレスや的外れなリプに打ち勝たねばならない。
時にはフォロワー同士でもやり合わねばならない。
つまり範子は、私とやり合う事も想定しておかねばならないんだ。
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