固定アンチ!?[4]
「何か悩んでるんちゃうの?」
範子は既に察知しているようだ。だけど、きっとそれは少し違う。
「叩かれてるんやろ?」
「違う…」
「じゃあ何? 折角会えたんやから、全部言うていいのよ」
繁華街を、ショーウィンドウを眺めながら歩く。
ファストファッションの大手量販店でさえ、マネキンが纏う衣服のコーディネートは素晴らしい。
「私な、彼氏が居るんやけど…」
「ええっ!? いやぁ〜、いいやん。どんな人? どこで知り合ったの? どうやって知り合ったん? どっちから付き合おうって言うたん?」
まだ何も答えてないのに、幾つも質問が連発してくる。
だけど、今日はレンとの交際について話したい訳じゃない。レンには訊けないし、ましてや職場の連中に話したらどんな展開になるのか。考えただけでも恐ろしい。だから少し距離のある範子を呼び出したのだ。
「範子、話聞いて」
「はいっ! 聞くで。話してみて」
私のひと言に、範子は急に畏まる。
そうなると余計に話しにくくなる。
久しぶりに会ったけど、この女、扱いにくくなってやがる。
「なるほどぉ」
何と軽い事か。
範子の口調は、さも喜んでいるかのように軽快そのものだ。
兎に角私は、レンから言われた「やめれば?」と、今さっき範子が言った「お勧め出来ない」を受けて、それでもやめたくない自分に苛立ちながら、繰り返し無駄に言葉を発し続けている。
そんな自分が見えず、相談しようと思ったのだけど。
じゃあ、求めてる答は何?
答は2人から既に出されているじゃない。
結局何? 私って、人の意見を求めながら何も受け入れずに、ただ自分を肯定したいだけなの?
「でね、サクラ。そのレン君ってどんな人? イケメン? どこで知り合ったの? 言うてよぉ。優しい?」
何なんだ此奴。
「それ聞いてどうすんの?」
「いやっ! 冷たいなぁ。どうするとかそんなんじゃなくて、サクラの彼氏がどんな人か知りたいだけよ」
だから知ってどうすんの!?
「もしサクラがMTGで他人を誹謗中傷するようなコメントしてたりしたら、レン君って嫌がらへん?」
嫌がるに決まってるやん。だからやめろって言われてんの。
「ところで範子。“レン君”って、もう友達みたいに言うてる」
「友達みたいなもんやん。サクラの彼氏なんやし。そうかぁ、奪っちゃおっかなぁ、ふふふっ」
これが本音?
「範子…MTG向きやな」
「は、はあっ???」
喧嘩する訳ではないけど、お互い言葉を失った。
ジョークのつもりで言ったのに、お互いが黙り込んでしまった。
やっちまったか、私?
凄く寒い空気が流れてる。
どうしよう。どうしたらいい?
私、この場をどう取り繕えばいいの?
恐る恐る目を範子に向けてみる。
鼓動が激しくなっているのを感じ取る。
焦点の定まらない範子の目。若干血の気の薄くなった頬。
まさかMTGの中に、既に居る?
私のアカウントに辿り着いているの?
誰?
女と判別できるそれなら、yo-ko0713だな。彼女なら、今範子が纏っているようなファッションじゃない。
違う。
じゃあ男とも女とも分からないハンネだとしたら?
tk.walker
bonbon
konoha075@yokohama
もしかしたら、O-moricha-hanだって女かもしれない。
女をターゲットにしてたって、そいつが男とは限らない。
そう考え始めると、男と見られるハンネを使っていても、実は女かもしれない場合だってあるんだ。
ふと我に返ると、そこには私の顔を心配そうに覗き込む範子が居た。
「サクラ…、貴女、もしかして病気?」
さてさて、何か起こりそうな展開になってきましたよ。
友達面する美優のブラックな部分も、かなり見えてきていますね。
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