それはひとつのスレッドから始まった[9]
自宅に帰り、窓から東の空を見つめ、物思いに耽る。
今日の私、最悪やったわ。
レンは一生懸命笑顔を繕ってくれたけど、きっと楽しくなんかなかったはず。
ショルダーバッグからスマホを取り出した。
アイコンが…この紫地に「M」の文字が憎らしく見える。
少し迷いながらも意を決して、このアイコンを消そうと試みた。
だけど指先はそんな私の意に反して、まるでコウモリの羽を意図したかのようなMの文字を、軽いタッチでタップした。
「あ…」
開いてしまった。
もう見まいと思ったこのSNS。
konoha075@yokohama:
「>O-moricha-han あなたの仰る通り、「貴様」とは室町時代より「あなた様」の意味で使われたとされています。だけど今は令和。現代においては「貴様」とは、相手を蔑むような場合に使われます。
そればかりか、あなたはyozakuraminminさんの事を指して「お前」と記しています。
よってあなたは、yozakuraminminさんを侮蔑していると判断されます」
O-moricha-han:
「>konoha075@yokohama 貴方の言わんとしている事は分からないでもない
でも敬語として使われたのは事実で、私は人を侮蔑するつもりで使ったのではない
勝手に人の気持ちを作り上げないでくれませんか」
tacbo-z:
「>O-moricha-han 受け取る側がどう感じるかやろ
貴様の意図なんかどうでもええんや」
O-moricha-han:
「>tacbo-z 貴様ってお前に言われる筋合いねえんだよ」
yurichanFan:
「>O-moricha-han 敬語でブチ切れてる?」
tngc556:
「>O-moricha-han 言われのない上から目線
草」
bonbon:
「>O-moricha-han オーモリだっせぇww」
tsuyo-r25:
「>O-moricha-han タヒんでくれ」
………
………
これか!!
今度はO-moricha-han に対する激しい罵倒が始まっている。
恐ろしいばかりの批判コメントが飛び交っていて、これらがアイコンの数字をどんどん増やしていたんだ。
見る程にそれは、激しく胸を打つ。
心臓の鼓動が胸を突き破るかの勢いで高まる。
「やめて! この人、メンタル潰されちゃうわ!」
ただ謝らせたかった。
それだけなのに。
私の味方になった人達のコメントは、激しくエスカレートしていく。
さすがにここまで行くと、O-moricha-hanですら気の毒に思ってしまう。
私の望んでいない方向へ向かい、批判コメントが次々と彼を襲う。
私は心の中で、思わず叫んだ。
「よっしゃ!!」
そして、気付かぬ間に両手で拳を握り、強くガッツポーズをしていた。
私は自分で気付かないうちに、この人達と同じになっている。
しかし……。
konoha075@yokohama:
「>yozakuraminmin 助けてもらっといてお礼はねぇのかよ」
「!!!」
第1話「それはひとつのスレッドから始まった」
何とも言い難い雰囲気のまま終了です。
怖いですね。味方が現れたと思ったら、“警察さん”のようですよ。
次回からは第2話へ進みます。
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