前章╱プロローグ
この物語はフィクションです。
実在する団体・地域・人物・その他等とは一切関係ありません。
そのことを踏まえた上でお楽しみください。
よく晴れた日。
俺は、自分の部屋で仕事をしていた。最近は在宅ワークが主流になっているため、適度に休憩を挟みながら出来るのがありがたい。
(ある程度進んだし、そろそろ休憩するか…。)
時計を見ると時刻は既に12時半をさしていた。
固まった身体を伸ばすため、大きく伸びをしていると、扉を3回ノックされた。
「どうぞ。」
そう返事すると、扉が開き、1人の少女が部屋に入ってきた。手にはお盆を持っており、その上にはサンドイッチとティーカップがのっていた。
少女の名前は周。整った顔立ち、腰まで伸びたストレートな黒い髪。目立った凹凸は無いがスラッとした無駄のない身体。今年高校生になる俺の娘だ。
思春期の女の子にしてはまだ俺と普通に接してくれていて嬉しいと思っている。
「お父さん。昼食持ってきたよ。」
周は机にサンドイッチと、コーヒーの入ったティーカップを置いた。
「ありがとう。」
俺は周に礼を言い、コーヒーを1口飲んだ。
コクの奥にあるコーヒー特有の苦味が口いっぱいに広がる。
(この苦味がコーヒーを飲んでいるって感じがするんだよな。)
そんな風に考えていると、周が
「ひとつ聞きたいんだけど、良い?」
と、聞いてきた。
「どうした?」
「この本についてなんだけど…。」
周は近くの本棚のそばに行き、1冊の本を取り出した。
その本はいわゆるライトノベル。異世界に召喚された高校生達が勇者となり魔王を倒す、というありふれた設定の冒険譚だ。
「それがどうかしたのか?」
「うん。お母さんがね、この本は実際に起きた事実ベースの物語なんだよって、言ってて…。」
頭が痛くなった。
俺は頭に手を当てて大きくため息をついた。
「周。もしも、もしもその話が本当だったとして、周はどうするんだ?」
「物語に出てきた装備とかの実物が見てみたい!」
目をキラキラと輝かせながら勢いよく答える周。そして、「はっ!」となり少し照れながら、
「お母さんは、この中にお父さんもお母さんもいるって言ったし、お父さんが2人の装備を大切に保管してるって言ってた。」と続けた。
(普通は疑うものだがなぁ…。)
そう思いながらも子供に甘いのが親なもので、俺は
「しょうがない。そこまで聞いたなら見せよう。」
と立ち上がりながら言った。
そして俺は部屋の角にある本棚のある1冊を奥に押し込んだ。
すると、本棚は奥に動き、横にずれた。奥には地下に続く階段がある。
「着いておいで。」
俺は周に声をかけ、階段を降りていく。それに続いて周も階段を降りてくる。
下まで降りきると、そこには鍵のかかった鉄扉があった。
「この先に当時の装備がある。」
そう言いながら俺は鍵を開ける。
「装備を見るついでに、少し昔話をしょう。」
扉を開ける。
「俺が高校生の頃の話だ。」
俺達は部屋の中に入って扉を閉めた。