びゅーてぃふる
びゅーてぃふる
「うーん……」
神の言った通りさっきとは別の場所に転生した。
そう、確かに別の場所だ。
ただのどかなって部分を忘れてはいやしないかい?
してるよねぇ。
だってここ絶対あれじゃん。
ドラゴンの巣じゃん?
暗い洞穴の中、眠るドラゴンの懐にポツンと転生させられた。
俺を卵か何かと勘違いしているのか、温めるようそっと包まれている。
ザ•悪者って感じの見た目、黒と赤模様の巨大ドラゴン。
起こしたらマズイってのはもう十分理解した。
だからと言ってここにじっとしているのはよろしくない。
「こんなところで死んでたまるか」
そっと体を起こし、音を立てないよう慎重に脱出する。
ゆっくりーゆっくりー、よし。
何とかドラゴンの尻尾を跨ぐのに成功。
あとはこの洞穴から抜け出すのみ!
――バキ――
おっと、何か足元から音が……何でここに枝が落ちてるんだ!
木の枝に気づかず踏んで折れた音が響く。
――フガ――
その音に反応しドラゴンが頭を起こす。
マズイ……。
これは終わったかぁ……。
と思ったが大丈夫そう。
起こしてしまったと思ったが、ただ姿勢を変えただけのようだ。
また眠りについたのを確認し、再度歩みを進める。
はぁ……。
死んだかと思った。
死ぬのはもう二度とごめんよ。
「おけ、いいぞ」
ドラゴンから距離が離れていくのを確認しつつ、先に明かりが見えてきた。
あった、きっとあれは出口だ!
最後はもう早歩きで、こんな死を感じる場所からさっさと抜け出そう。
目指せ希望の未来へ!
「よっしゃ! 外だああああああ。 …………え」
と思ったら二匹目のドラゴンがいた。
律儀にお座りしては俺を凝視している、獲物を見つめる目で……。
ヴォォォン。
火を吐いた。
死んだ。
「おおおおおおい」
「なにぃ。またしんだふぉ。なはけないわねぇ」
「何呑気に飯食ってんだよ。こっちは死んでんだぞ」
「べつにいいしゃないのぉ。めしぐらいくうふぁよ」
「まぁそれはいい。のどかな!場所に転生させろっての。なんで生き返って早々死を感じなきゃいけないんだよ!」
「もーいいじゃないの、別に。社会勉強社会勉強」
「そんなものいらん! さっさとハーレムさせろ!」
「はいはい。でハーレムって何よ。どこに行きたいのよじゃぁ。具体的に行って」
「え、場所? どこでも転生させれるの?」
「できるわよ。海の底から空の果てまで」
「じゃ、じゃあ女の子の風呂とか……どうですかね」
「いいわよ、いってらっしゃい」
「かるぅ」
――転生――
「oh......そーびゅーてぃふる」
「へぇ……………………きゃあああああああ」
何とも可愛くて綺麗なお方だ。
赤髪短髪でくりっとした目に幼い華奢な体。
雪のように白く輝くその肌は思わず見惚れてしまう。
これが女性のお身体か、生で初めてみた、ちょっと触ったら崩れてしまいそう。儚い。
「旅のお方……お名前は?」
上品にやさしく俺が問いかけてみる。
そしたら女の子は俺にナイフを突きつけてきた。
「oh......これは心臓ひとつき!」
死んだ。
「幸せな人生でした」
「なら良かった」
「あぁ、あれが本物の妖精ですかね。まるで空に輝く星のよう」
「あらそう、一応私は本物の神ですけども」
「じゃあ神様、すみません。もう一度あの方のもとへ」
「別にいいけど……結末は一緒だと思うよ」
「大丈夫、大丈夫。あの方と共にハッピーエンドを迎えますから」
「そうですか、じゃあいってらっしゃい」