俺はハーレムを築きたい
「思ってたんと違う」
中世ヨーロッパを彷彿される町並み。
ここに住む人々は魔王率いる最恐の魔王軍によって、日々その恐怖に脅かされてる。
だから転生したこの俺は最強の力を手にして、一際目立つカラフルな髪色をした可愛い少女と最高ラブラブハーレムを築きつつ魔王へと挑み、この町の平和を取り戻す。
何てことを想像していたがどうやら違うっぽい。
いや確かに可愛い女の子はいるよ。
しかも百人、二百人ぐらい。
でも何だろう、なんていうかグロいというか。
……生首しかないんですけど。
可愛い少女の生首たちがふらふら空を飛び交っている。しかも大笑いしながら。
なにこの世界……。気色が悪い……。
言葉も出ない。
ただ呆然とそれを眺めているなか、一つの少女の生首が俺に近づいてきた。
「え……」
キスするのかと思うほどの距離に寄ってきて……。
――どかーーーん――
自爆した。
死んだ。
「ちょっと神様神様。聞いてた話と違うんですけども」
「聞いてたって何よ。私何も言ってないわよ」
「いやでも異世界転生するってなったら……もっとこう……ね、町とかハーレムとかあるじゃないですか。僕が行ったところただひたすらグロいだけだったのですが」
「何よ。たまたま生まれた場所がグロい場所だったんじゃないの? あるわよハーレムなんていくらでも」
「じゃあもっとのどかでハーレムがある場所に生まれさせてくださいよ。何ですかあそこは」
「はいはいわかったわよ。やってあげるから」
めんどくさそーにそう返事をして、ちょちょいのちょいと神様ことリゼルは俺を再度転生させた。
やっとだ。
焦ったわ、あんな世界にこれから生きていかなくちゃならないかと思った。
――転生――
「うーん…………」
これがあの神の言うのどかでハーレムのある場所なんだろうか。
見渡す限りさっきと何も変わってない。
ただ少女の生首が宙を舞っている地獄のようなところ。笑い声がうるさい。
どうしようか。
またここに立ち続けるとさっきみたいに自爆させられる可能性も。
ちょっとこの場から離れようか。
そう後ろに一歩踏み出した。
そしたら落ちていたタワシを踏んだ。
爆発した。
死んだ。
「神様……神様……」
「何よ。あんた死ぬの早すぎじゃない?」
「そんなこと言われましても。話が違いますって。のどかでハーレムのある場所つったじゃないですか。さっきと全く変わってなかったですけど」
「もーめんどくさいわね」
「そもそも何ですかあそこは。どういう世界? タワシを踏んだだけで爆発するし。てか何であそこにタワシがあるのよ」
「どういう世界って言われてもそういう世界としか言えないわね。直に慣れるわよ。まぁ今度はちゃんと別のとこに転生させてあげるから」
「頼みますよ」
さぁ今度こそ。……夢のハーレムへ