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第18話 結氷令嬢 その8 科学はほどほどでも魔法がある世界


 例えば、旅行先のホテルや民宿などに到着した際、どういった構造なのか、何があるのか調べてみたくならないだろうか?

 

 オレはなる。

 

 まして今回は、どれぐらいの期間になるかはわからないが、少なくとも一日や二日ではない間お世話になるのだ。仮宿の様子をある程度把握しておきたかった。

 ……まあ、簡単に言えば探検したいよな!

 

 未知の建物というのは、少年心をくすぐるのに十分なのである。


「ちょっとダンジョン感あるかも。わかりみが深い」


 面倒くさがりそうななっちゃんも、意外とこういう事は好きだったりする。

 さすが生粋のゲーマーである。


 大した意味もなく、その場その場の感想を吐きながら屋敷を回るオレとなっちゃん。


「しっかし、とんでもないお屋敷だよな。これで別荘って。本宅はどうなっているんだか」

 

「田舎暮らしのわたし達とは天地の差があるかも。まあ今日からわたしの家だけど」


 うーん。無遠慮極まりない。ジャイアニズムここに極まれり。


 見て回った感じ、屋敷の部屋はカギがついていない部屋が12部屋。鍵がかかっていて入れなかった部屋が8部屋。

  

 そして大浴場が1つに、二回りほど小さな浴場が1つ。

 そう、大浴場である。さすがこの規模のお屋敷だ。

 風呂に入るのが楽しみになるというのは素直に嬉しい。

 ……掃除も大変そうだが。


 カギがついていなかった部屋は、恐らく客人向けの部屋なのだろう。

 カギがついている部屋は、屋敷の主の部屋や物置などだろうか。

 奥に行けそうな場所にも鍵が掛かっていた為、部屋数は正確ではないが、概ねこんな所だろう。

 

 

 回れる場所をグルっと時計回りに回り、あーだこーだとしているうちに、最初にアヤメと話していた居間と思わしき場所が見えてきた。


 と、そこで突然――


「うおっ!?」


 廊下に並んでいたいくつものランプに、突然明かりが灯った。


「あ、あにあにあにあになにこれなにこれ……」


 なっちゃんは突然の事に腰が抜けたのか、床にお尻をつけて半分涙目になっている。


 もちろんオレも解らない。

 

 そもそもどういう構造なんだ、これ。

 思わずランプを凝視する。

 


 『鑑定』を習得

  物の名称・性質を看破する能力。

  ランクに応じて物体以外にも、現象・魔法などに適応可能。

  使用者に応じて名称・性質の内容は最適化される。

 

 

 『グローランプ』

  魔力を鍵として周囲を照らす照明。

  周囲の光量に応じて自動で点灯・消灯する機能を持つものも存在する。


 

 そう思った矢先、勝手に情報が頭に入り込んできた。

 先ほど、ギルドでスキルを習得した時の感覚に近いが――。

 


「ん。なっちゃん安心して大丈夫。魔法の道具か何かみたいだ。日が落ちて暗くなってきたからそれに反応したんだろう」

 

「ふぇ……。あになんでそんなの解るの?」

 

「どうも、『そういうスキル』を覚えたっぽい。スカウトランクのスキルだと思う」


 いかにも盗賊やレンジャーらしいスキルだ。

 『風詠み』を覚えた経験があったからか、オレも慣れたものであまり動じなくなっていた。

 


 しかし、これはかなり便利そうだな。

 

 『使用者に応じて名称・性質が最適化される』ってのは、オレみたいにこの世界の知識が少なくても、ある程度理解できるレベルで翻訳してくれるって事だと思うし。

 インターネットで検索するよりも親切設計かもしれない。

 初心者あるあるの、変なウイルスやフェイク記事に踊らされる事も無いしな。


 腰の抜けたなっちゃんを引っ張り起こし居間へ入ると、程なくしてエプロン姿のアヤメが奥から姿を現した。


「お嬢サマのエプロン姿とかキュンなんですけど……萌え殺す気かも……」

 

「すこしわかる」

 

「何を仰っているんですの……」


 オレ達のリアクションを理解できない様子のアヤメは、少し首を傾げながらも食事の準備が出来た事を教えてくれた。


「お食事の後は、明日からの方針を決める必要がありましてよ」


 そしてそんな悪役令嬢は、少し怪しいお嬢様言葉を吐きながら、何故か左手に一升瓶を持っていた。






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