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第11話 ルカは男の子?女の子?

 アンブラと話してからもう、四日が立った。


 未だにゴーレムが弱くなった理由もわからない、それにほかの魔物も弱くなっているような気がする。


「本格的にまずいな」

「そうですね。しかも四天王が、どこにいるのかすらわからない」


 俺はこの近くに魔王軍四天王がいるかもしれない現状について、テオと話しあっていた。


「せめて目的くらい分かればいいのですが……」


 テオは考え込むように頭を抱える。


 ただ悪い。四天王の目的はわかっている。

 それは勇者、つまり俺だ。


「でも話すワケにもいかないよなぁ」

「なにがです?」

「あ、ナンデモナイナンデモナイ」

「すごく怪しいんですが……」


 テオは目を細くして、まじまじと見てくる。


「な、なぁテオ、そういえば他の連中はどこいったんだ?」

「は、はい……」


 ふと我に返ったようにテオは返事をした。


「えっと、アンブラは山へ魔物狩りに。ルカは川に水浴びに生きましたよ?」

「どこかで聞いたような……。まぁいいか、それでオリンは?」

「あ、オリンさんならそこで寝てますよ」


 テオは部屋の端の方を指で指した。


「うわ、びっくりした」


 オリンは部屋の端っこで縮こまって寝ていたのだ。


「ハシっこぐらし……」

「オリンはどこでも寝ることが出来るんですよ」

「へぇー、ムカつくくらい気持ちよさそうに寝てやがる」


 ただあまりに無防備な恰好で寝ているので、さすがに起こしてやろうと思い、俺は肩に手を伸ばした。


 ビシッ――。


「いってぇ」


 その一瞬で、オリンは俺の手を叩いて突っぱねた。

 そして気が済んだのか、また気持ちよさそうにすやすやと寝た。


「オリンは寝ているときでも無意識で、常に周囲を警戒しているんですよ」

「野生動物かよ」

「あながち間違ってなさそうなのが困りますね」


 さらっとバカにされてないか、オリンのヤツ。


「それにしてもルカの方は大丈夫なのか?」

「ルカなら大丈夫だと思いますが……」

「でもまだ子供だろ?」

「その言い方はあまりよくないと思いますよ」

「そうかよ」


 吐き捨てるように言うと、俺はルカのところへと早足で向かった。


◆ □ ◆ □ ◆


「おーいルカ、いるか?」


 ルカらしきヤツが見えたので俺はソイツに向かって大声で叫ぶ。


 するとソイツ――ルカはこちらを向いて……。


「ヒャッい!」


 甲高い声で叫んだ。その時見た顔は確かにルカで間違いなかったのだが……俺は何か叫ばれるようなことをしたか?


「なななな、お前何をしてるんだ!」

「何って、お前のこと心配してきてやったんだよ感謝しろ」

「感謝って……つかこっち向くなバカ!」

「どうしたんだよ、裸を見られたのがそんなに嫌だったか?別に見られたからって減るようなモンじゃないだろ」

「なななな、言うな。はだかって……言うなあああ」


 あまりに大声でルカが叫ぶから俺も仕方なくそっぽを向いた。


「ほら、これでいいんだろこれで」

「ホントに信じられない」

「だから悪かったって」

「謝ったからって許される問題じゃないッ!」

「だけどさ勘違いしないでほしい、別に俺は男の裸なんて見る趣味はねぇんだよ」

「……おとこ?」

「ん?なんて言った?」


 声があまりに小さかったおかげで、なんて言ったのか聞き取れなかった。


「俺は男じゃねぇぇぇ――!」

「は!?なにいってんだ……」


 俺が聞き返そうとした時にはすでに遅かった。どこからか大きな石が俺の頭へと投げつけられていた、明らかにルカが投げたのだろうが。


「うぐふっっ」


 そしてソレは見事俺の顔面にクリーンヒット!


「俺がいったい何をしたっていうんだぁ……」


 いくら俺と言えど泣きそうである。まぁ、自分が犯してしまった罪に薄々(うすうす)気づきつつあったのだが。



「はっ!」


 俺は顔に何か冷たいモノが当たって……。


「うがががぎゃ」


 少しの間息ができなかった。俺はパニックになりながらも状況を冷静に分析……できたら困らねーんだよ!


 ただ、一つわかることがある。どうやら俺は今川に顔の方から溺れているらしい。


 おかげで視界は歪んで見えるし、後頭部が抑えつけられていて顔をあげることもかなわない。


「おでじんだば」


 俺死んだわ、と言いたかったのだが。あいにく水中では寿命を縮めるだけであった。


 俺の意識が再び途切れそうになった時、やっと口の中が空気で満たされた。


「すううう」


 俺は息をできる限り吸い込む。


「げほっげほっ」


 それと同時に水も吸い込んでしまったようで、咳が止まらなくなった。


「何しやがるんだ、テメェ」

「何って?ただ勇者を殺そうとしただけだけど?」

「まさかお前、魔王軍!?」

「そうだ、この我こそが魔王軍四天王。ルカ様だ」

「な、なにっ!」


 ルカは口角をグイっと上げると、悪そうにニヒヒと笑った。


「おい、さすがにこれ以上の茶番には付き合う気はないぞ?」

「えーつまんないなぁ」

「こっちはホントに死ぬかと思ったんだぞ?」


 退屈そうな声を発するルカに、呆れながら俺は少し怒ったように言った。


「でも、今のはアレスが悪い」

「え?俺何かしたっけ?」

「はあああああああ、あれだけのことしといて覚えてないっ!?」


 いつだったか、随分最近聞いたような甲高い叫び声が草原に響き渡る。


「俺が何したっていうんだよ。俺は何もしてない、なんならお前の方がひどいことしてるだろ」

「あれくらいされても当然のことをお前がしたからだろ!」

「いや、だから俺本当に何したかわからないんだけど」


 俺は必死にルカに向かって無罪を主張する。


「あ……そういえばなんか頭の後ろの方がすげぇ痛いんだけど、何か知らないか?」


 俺は首を少しひねると、ルカに後頭部を見せつけた。


「あ、でっかい、ありえないくらいでかいたんこぶ……あるね」

「嘘だろ!?なんでだよ。まさか俺の頭がおかしくなったりしてないよな」

「ウン……大丈夫ダト思ウヨ」


 何故か突然、ルカのしゃべり方が片言になった。


「もしかして、さっきからルカと話がかみ合わないのも……」

「あーアレはこちらのー勘違いというかー」

「本当か?」

「ホントウ。オレ、嘘ツカナイ。何モ知ラナイ」

「うーん、怪しいなぁ」


 俺はルカの目をじっと凝視する。


「いや……ほんとうに……」


 ルカはそう言いかけてやめた。

 いや、やめたというより、どちらかというと、俺の後ろに視線がいったという感じだが……。


 しかも何か、後ろの方からいやぁな気配がするし。


「まっさか……ねぇ~」


 俺はゆっくりと振り返る――そこにいたのは!

突然現れたソイツ。それでも俺は決して……戦わない。次回「クズ勇者はセールスマン」お楽しみに!

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