闇組織『スネイクヘッド』殲滅作戦(3)
全員が自分の担当個所を討伐していたころ、ケンは『スネイクヘッド』の本部に来ていた。さすがに本部の建物は大きい。不思議と建物の中には少人数の魔力しか感じない。だが、1つだけ人や獣人とは違う魔力を感じ取っていた。
“こうして、リンと2人だけで戦うのって久しぶりだよな。”
“そうですね。でも、私は指輪なんですけどね。何の役にも立ちませんけど。”
“いいや。それは違うさ。オレは何度もリンに助けられてきたさ。”
“マスタ~”
“ありがとうな。リン。さあ、行くよ。”
“はい。”
オレは正面から建物の中に入った。中から現れるものは次々に意識を刈り取っていく。そして、3Fの一番大きな部屋に来た時に、中の人物の魔力がどんどん膨れ上がっていった。
「お前が『スネイクヘッド』のティガか?」
「ああ、そうだ。お前は何者だ?」
「オレはただの冒険者さ。それより、正体を現せよ。お前、獣人族じゃないだろ?」
「よくわかったな。」
「ああ、お前と似た魔力の奴と一度戦ったことがあるからな。」
「どこでだ?」
「ドワーフの村だったかな?」
「そうか。俺は奴のような低級ではないぞ。」
「やっぱりね。弱くて相手にならなかったからね。すぐに逃げちゃったよ。」
ティガの体がどす黒いオーラに包まれていく。そして、頭から1本大きな角が生え、背中に黒い翼が出た。
「聞いていいかな?」
「何だ?」
「魔族って、いろんな種類がいるのか?」
「お前が知っても仕方がないだろう。すぐに死ぬんだからな。」
「そうか~? なら、オレがお前を殺しても文句言うなよな。あっ、死んだら文句も言えないか。」
「お前、なめてるのか? なら、思い知るがいい!」
ティガの手の爪が長くなった。そして、武器を持たずに爪で切りかかって来た。恐らく常人には見えない速さだ。だが、オレにはかなり余裕の速さに感じた。
「お前、それが全力か? もっと本気を出せよ!」
「なるほど、言うだけのことはあるな。だが、やはりお前も人族ではないな。」
「自分ではまだ人間だと思ってるけどね。」
ティガの魔力が上昇し始めた。このまま戦いになると、このあたり一帯が大惨事になってしまう。オレはティガを連れて、オレが最初にこの世界に来た草原に転移した。
「転移魔法か?」
「そうだ。そう言えば、この前の魔族も使ってたな。」
「転移魔法ぐらい、魔族なら使えるのが当たり前だ。」
「ここでなら思いっきり戦えるさ。かかってこいよ。」
「よかろう。」
ティガの膨れ上がったオーラがどんどん変形していく。真っ黒のドラゴンとなる。
『シャドウバースト』
ドラゴンの口から真っ黒な光線が放たれた。オレは右手を前に出して対処する。
『グラトニー』
真っ黒な光線がどんどんオレの右手に吸い込まれていく。
「き、き、貴様!」
「もう、お終いか? お終いなら今度はオレが攻撃するけどな。」
オレは身動きしない。だが、ティガの背中の翼がズタズタになっていく。
「グワー!」
ティガが地面に膝をついた。
「貴様! 何をした?」
「見えなかったのか? お前の翼をこの剣で切っただけだ!」
「何~! 俺が見えなかっただと~?」
「もう一度やってやろうか。」
今度はティガの両腕を切り落とした。
「ギャ———!」
「どうだ? 今度は見えたか?」
ティガは再生能力があるらしく、翼と腕がどんどん治っていく。
「凄いな! 再生能力があるのか? それで、どうするんだ? まだ戦うのか?」
「確かにお前は強い。だが、オレも魔族の戦士だ。」
ここで、オレは気になることを聞いた。
「どうして魔族って平和を乱そうとするんだ?」
「知らん。俺は魔王様に従うだけだ!」
ティガはかなわないと思ったのか、捨て身の攻撃を仕掛けてきた。
『シャドウミスト』
ティガの姿が消えたと思ったら、黒い霧が立ち込めてきた。そして、その霧がオレの体が触れると触れた個所から血が流れだす。
“リン。この攻撃はなんだ?”
“はい。マスター。これは、身体を気体化させてマスターに攻撃を仕掛けるようです。この霧は切っても相手にダメージを与えることはできません。”
“どうすればいい?”
“はい。マスターのオーラで打ち消すことも可能ですが、光魔法を発動することをお勧めします。”
“ありがとう。リン。”
リンから対処法を聞いて、それを行動に移した。
『シャイニングサン』
すると、上空に小さな太陽が現れ、その太陽がどんどんと大きくなっていく。そして、霧を消滅させていった。
「お、お、おのれ~!」
ティガの姿が再び現れたが体中が溶けていた。さすがの再生も追いつかない。
「魔王様————————!!!」
ティガが光の粒子となって消滅した。オレは再び転移で元居た場所まで戻り、気絶している者達を縛り上げて、ビャッコさんの屋敷まで転移で戻った。