虎耳族のビャッコ
ミレイの故郷を悩ませていたキメラを討伐したケン達一行は、セザール王国の王都に向けて街道を歩いていた。
「ミレイ。そのまま家族と一緒にいてもいいんだぞ!」
「ダメにゃ。僕はずっとケンといると決めてるにゃ。ケンとスピカの街で出会ったのは偶然じゃないにゃ。運命にゃ。」
「そうだな。オレもそんな気がするよ。」
珍しくミレイがオレの手を握ってきた。今日に限っては誰も文句を言わない。
「ミレイ。王都まではどれくらいかかるんだ?」
「徒歩で行ったら1週間ぐらいにゃ。」
オレ達はのんびりと街道を歩いていくことにした。さすがにここまで来るとほとんど人族は見かけない。獣人族だけだ。しかも商人らしき人が多い。たまに荷台のある馬車に乗っている人を見かける。
「ミレイ。この国の人達は馬車をあまり使わないのか?」
「そう言われてみればみんな歩くにゃ。商人は荷物を運ぶのに使うにゃ。」
そんな話をしていると、豪華な馬車が1台後ろからやって来た。周りには馬に乗った10人ほどの兵士達がいる。
「あれはこの国の貴族の馬車にゃ。恐らくこのあたり一帯の領主の馬車にゃ。」
「この国にも貴族はいるのか?」
「いるにゃ。でも、ミサキの国のような感じじゃないにゃ。どっちかというと村長や町長のような存在にゃ。」
オレ達が歩いていると、前方で土煙が起こっている。急いで現場に駆け付けると、先ほどの馬車が50人ほどの武装集団に襲われていた。馬に乗った兵士が応戦しているが、多勢に無勢だ。すでに数人の兵士が馬から落ちて倒れている。
「みんな。助けに行くぞ!」
「了解にゃ。」
「うん。」
オレ達は武装集団と兵士達の間に割り込んだ。どちらを助けていいのかわからない。
「お前達は何故この馬車を襲うんだ?」
「知れたことだ。領主を殺すためさ。」
すると兵士達が声をかけてきた。
「この馬車には領主様が乗っているんだ。我々に協力してもらえないか?」
“マスター。心の目で見てください。悪に満ちた存在からは黒いオーラが立ち込めています。”
オレはリンに言われた通り心を落ち着かせて、兵士達と武装集団を見比べた。すると、武装集団の方から黒い靄のようなものが立ち込めていた。
「みんな。領主を助けるぞ! でも、殺すなよ!」
「わかった。」
あどけないローザもドリエも戦闘態勢に入った。武装集団達はオレ達を女や子どもと思ってなめているようだ。だが、次の瞬間、その思いは恐怖へと変わった。ミレイ、ミサキ、ドリエが剣で切りかかった。ローザは後ろから弓矢で攻撃する。すると、1分も経たないうちに武装集団を制圧した。残るは首領の男一人だけだ。
「お前たちは何者だ?」
すると、ミレイが大きな胸を張って答えた。
「『ワールドジャスティス』よ!」
「ま、まさか、本物なのか?」
「まあね。」
オレは首領一気に首領に近づき、腹に拳を叩き込んで気絶させた。すると、馬に乗っていた兵士達がお礼を言ってきた。
「感謝する。助かった。」
「ちょうど通りかかってよかったです。」
すると、馬車の中から虎耳族の女性が現れた。人間の年で言うと25歳ぐらいだろうか。かなりの美形だ。
「私は、この先の街ダマスクを治める領主のビャッコです。助勢に感謝します。」
「ビャッコ様。この倒れている奴らはどうしますか?」
「オレに任せてください。」
オレは50人の武装集団の首に『正義の輪』をはめた。首に違和感を感じたのか、武装集団が徐々に意識を取り戻し始めた。だが、目の前にいるオレ達を見て怯えている。
「彼らの首の輪は何なんですか?」
ビャッコさんが聞いてきた。オレは武装集団に聞こえるようにわざと大きな声で答えた。
「『正義の輪』です。悪事を働いたり逃げようとしたりすると、この輪が締まって最後は首を切り落とします。」
「なら、彼らはもう2度と悪いことはできませんね。」
「ええ、このまま街まで連れて行きましょう。」
武装集団の男達はあきらめたようで、全員が頭をうなだれている。
「『ワールドジャスティス』の皆さんは馬車に乗ってください。中で、話を伺いたいわ。」
オレ達は馬車に乗せてもらうことにした。ローザとドリエは御者さんの隣に座って、周りに注意を払っている。オレとミレイとミサキはビャッコさんと馬車の中に案内された。
「オレはケンです。こっちは仲間のミレイとミサキです。外にいるのがローザとドリエです。」
「皆さんはお強いのですね。」
するとミレイが言った。
「僕達は冒険者にゃ。いろんな敵と戦ってきたにゃ。」
「今まで手強かった敵って何かしら?」
「湖の魔物にゃ。あのキメラは強かったにゃ。」
「あなた方があの湖の魔物を討伐したんですか?」
「討伐したのは、このミレイですよ。オレ達はそれを見ていただけですから。」
「ミレイさんって強いのね。冒険者ランクは?」
「僕はSランクにゃ。」
「S? すごいわね~!」
「えへへへ。褒められたにゃ。」
ここでビャッコが真剣な顔で考え事を始めた。そして、しばらくして話し始めた。
「ミレイさんにお願いがあるんです。私の街ダマスクに住む魔物達を退治してほしいんです。」
「魔物にゃ?」
暑くて溶けそうにゃ~!
ミレイ姉! 私の作ったかき氷食べて!
ローザは神様にゃ!




