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最強転生者が神になるまで  作者: バーチ君
アルメデス王国
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宿屋のメアリーさんとセバスさん

 オレは屋台のおじさんに教えてもらった通りに、宿屋を探しに行こうとすると、人相の悪い男達にぶつかってしまった。謝ったが許してもらえず、男達は暴力に出ようとしている。



“リン。どうしようか?”


“この世界の通常の攻撃力はさほどではありませんので、目立ちたくないのでしたら、殴られた方がよいと思います。”


“わかったよ。”



 男達が全員でオレに殴りかかってきた。その動きはものすごく遅かったが、あえてよけずに殴られた。



「グホッ」


「おい! まだネンネするのは早いぞ。」



 男達は容赦なくオレを殴ったり蹴ったりしている。口の中が切れたらしく血の味がしてきた。すると、そこに一人の女性が現れ、止めに入った。



「あんた達、何してるの! この子は謝ったじゃないの。」


「うるせえなぁ! 女は引っ込んでろ!」



 再び男達がオレを殴ろうとすると、今度は見物人の中から一人の男が現れた。



「そのぐらいにしておけ!」



 その男性はどうやら冒険者のようだ。



「チッ、次からは前をよく見て歩けよ! 小僧!」



 男達は捨て台詞を吐いてそのままいなくなった。すると、最初に止めに入ってくれた女性が声をかけてきた。



「君、大丈夫? 立てる?」


「ありがとうございます。おかげで助かりました。」


「別にいいのよ。あなた、見かけない顔ね?」


「ええ、今日この街に来たばかりですので。」


「そう。宿は決まってるの?」


「いいえ、これから探します。」


「なら、うちにおいで。」


「えっ?!」


「うちはこの裏にある宿屋だから。」


「あ、はい。」



 オレがなんとか立ち上がろうとすると、女性が冒険者風の男性に声をかけた。



「セバス。この子に手を貸してあげて。」



 すると、冒険者風の男性が肩を貸してくれた。



「先ほどはありがとうございました。」


「この街にはああいう冒険者がいるから、注意しろよ。」


「はい。」



 宿屋は裏通りにあった。他の宿屋と同じで2階建てだ。オレはあらためてお礼を言って自己紹介をした。



「オレはケンです。」


「私はメアリーよ。この宿の女将よ。こっちはセバス。本当はお客だったんだけど、見た通りかっこいいでしょ。だから、一緒に暮らしてるのよ。冒険者兼ボディーガードみたいなもんね。」


「俺はセバスだ。よろしくな。」


「ところで、ケンはセバスと同じ冒険者なの?」


「いいえ。オレ、よく覚えてないんです。気が付いたら草原で倒れていて。」


「そう?! もしかしたら、記憶をなくしてるのね。」


「あの、お代を先に払いたいんですけど。」


「ああ、そうね。1泊2食付きで銀貨5枚よ。」


「これで足りますか?」



 オレは袋から金貨1枚を渡した。



「こんなに多いわよ。何泊するつもりなの?」


「これで足りるまでいたいです。」


「なら20日分ね。」


「はい。」



 オレはお金を渡し、案内された部屋に行ってベッドで休んだ。下の階ではメアリーさんとセバスさんが話をしている。



「セバス。あの子のことどう思う?」


「何か隠してるな。」


「やっぱりそう思った? あの子、荷物を持ってないのよ。」


「盗賊にでも襲われたんじゃないのか?」


「でも、盗賊に襲われたなら、お金も取られるはずよね?」


「確かにな。俺が気になったのは、あいつは無意識だろうが、殴られるときに致命傷にならないように避けてたんだ。もしかしたら、相当強いのかもしれんな。」


「なら、なんで殴られたんだろうね。」


「さあな。」


「でも、悪い子ではなさそうね。」


「そうだな。」



 オレはベッドに寝転んで休んでいた。なるべく酷くならないように殴られたつもりだったが、やはり傷が痛い。



“あの川の水のように怪我や病気を治すなんてできないよな~。”



“聖魔法が使えれば簡単ですが、今のマスターにはまだ使いこなせません。そこで、洞窟にあった魔石を使うことをお勧めします。”



 オレは慌ててポケットの中を探した。



「あったー!!」



 オレはリンに教えられた通り、魔石を握って自分に聖魔法の『ヒール』を発動した。すると体の痛みがどんどん消えていく。心地よくなったせいだろう。そのまま寝てしまった。しばらくして、ドアをノックする音で目を覚ました。


 

「ご飯の用意ができたわよ。」


「は~い。すぐに行きま~す。」



 オレは、食事に行く前に部屋を見渡した。すると、壁に1枚の鏡があった。恐る恐る鏡の前に立って確認すると、前世の自分の顔と全く同じだ。だが、髪の色と瞳の色が違ってる。髪はブルー、瞳は緑になっていたのだ。



“なんかアニメの主人公みたいだな~。”


“・・・・・”



 オレが階段を下りていくと、夕方だけあって食堂には大勢の人がいた。中には冒険者風の人達もいる。酒が入っているせいか賑やかだ。オレが座って待っていると、料理が運ばれてきた。



「ケン。どこも具合悪くない?」



 心配そうにメアリーさんがオレの顔を覗き込んだ。オレを見てメアリーさんが驚いた表情をしている。



「どうかしました?」


「いいえ、別に。よく噛んで食べてね。」


「はい。ありがとうございます。」



 出てきた料理はサラダと肉料理だ。何の肉かわからないが柔らかくて美味しい。それに、サラダなのに、オレの知っているサラダとは違う。野菜というよりも見た目はフルーツだ。サラダも肉もあまりに美味しかったので、追加料金を払っておかわりしてしまった。



「おいしかったです。ごちそうさまでした。」


「“ごちそうさま” ってな~に?」



 メアリーさんが不思議そうな顔をして聞いてきた。周りの客もオレに注目している。目立ちたくないのに目立ってしまったようだ。



「料理を作ってくれた人や、食材になった生き物に感謝する言葉ですよ。」


「そう。よかったわ。喜んでくれて。」



 キッチンにいるセバスさんとメアリーさんが、何やら目で合図をしていた。オレは構わず部屋に戻って再び横になった。だが、さっきまで寝ていたオレは寝ようにも寝れない。そこで、しばらく休んだ後外に出かけようと下に降りて行った。すると、客のいなくなった食堂でメアリーさんとセバスさんが座って話をしていた。



「やっぱりあのケンって子、どこかの貴族の子じゃないかしら。」


「どうしてだ?」


「だって、“ごちそうさま” なんて言葉、平民の私達は使わないもの。それに、顔の傷が治っていたのも不思議よね~。」


「そうかもな。だが、悪い奴ではなさそうだ。なんかわけでもあるんだろう。そっとしておいた方がいいんじゃないか。」


「そうね。余計な詮索はしないようにするわ。」



 2人の会話を聞いて申し訳ない気持ちになった。でも、オレは目立たないように生活しないといけない。神様との約束だから。オレは、再び階段を上がって自分の部屋に戻った。


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