最後の戦い(3)
竜人族がダークエルフ族との戦闘を終えた翌日、西南に出向いた天空族ケリーとカレラ達も戦闘が始まろうとしていた。ケリーとカレラ達の目の前にいるのは、アラクネ族、巨人族、ハーピー族達1,000人の連合軍だ。
「どうする? ケリー!」
「当然、正面から戦うさ!」
すると、雷竜と炎竜が後ろから声をかけてきた。
「正面から戦えば、こちらにかなりの犠牲が出るだろうな。アラクネ族は魔法の糸を吐いてくる。その糸に捕まれば簡単には抜け出せないぞ! そこに、巨人族が来たら殺されるだけだ。」
「ならば、どうすれば?」
「俺と炎竜で奴らを蹴散らそう。奴らは分散してしまえば、個々の戦闘力は恐れるに値しないさ。」
「ケリー! 雷竜様の言う通りだよ。僕達は上空で待機していて、分散したところをそれぞれ攻撃した方がいい。」
「そうだな。ハーピー族とは空中戦になるだろうしな。」
作戦は決まった。雷竜と炎竜が竜化して空に舞い上がった。ケリー達も翼を広げて、その後に続く。上空に現れた敵を見つけ、ハーピー族がこちらに向かってくる。地上ではアラクネ族と巨人族が何もできずにただ上空を見上げていた。
「では、ケリー! カレラ! ハーピー族は天空族に任せたぞ!」
ハーピー族が目の前に迫ると、雷竜と炎竜は地上に向かった。天空族の目の前にはハーピー族がいる。ケリーもカレラも腰の剣を抜いてハーピー達に切りかかった。ハーピー族はそれを避けながら鋭い足の爪で攻撃してきた。
「カレラ! こいつらの武器は足の鋭い爪だ! 気をつけろ!」
「わかってるよ~!」
一方、雷竜と炎竜は地上のアラクネ族と巨人族に攻撃を仕掛けた。雷竜の2本の角から凄まじい電流が、巨人族を襲う。巨人族は地上で逃げ惑うしかない。炎竜も翼を羽ばたかせ、獄炎の竜巻を引き起こした。すると、アラクネ達は森の木々と一緒に丸焦げ状態だ。こうなると、一方的な蹂躙にしか見えない。
「炎竜様や雷竜様には負けてられないよ!」
「ああ、そうだね。全員で一斉に攻撃を仕掛けるよ!」
天空族は全員が剣に魔法を付与して攻撃を仕掛ける。魔法を付与された剣は眩しい光を放っている。ハーピー達は剣の光とケンが太陽の光を反射する眩しさに目を開けていられない。
「いくぞ! 私に続け~!」
200人の天空族が600人のハーピー族の大集団に切りかかった。ハーピー族は次々と地上に落下していく。30分ほどかかっただろうか。上空のハーピー族は全滅した。そして、天空族と雷竜、炎竜は地上へと舞い降りた。
「我々の負けです。どうか命ばかりはお助けください。」
身体の大きな巨人族が土下座状態で懇願してきた。アラクネ族達も傷ついたハーピー族達も同様だ。
「我らは最高神エリーヌ様の願いで戦っている! そなたらはエリーヌ様に楯突く気なのか? もしそうであれば、この世界の平和を乱す存在として、この場で成敗する!」
すると、アラクネ族達もハーピー族達も同じように言った。
「私達は何も聞かされていなかったんです。ラミア―公国が我々を皆殺しにしようとしているから、力を合わせてラミア―公国を攻めるんだと聞いていました。違うんですか?」
「誰に聞かされていたんだ?」
「魔王ロンバルト様です。」
「奴は邪神となりはて、天界から追い出された元冥府神ハーデスだ! エリーヌ様の敵、この世界の敵だ!」
「知らなかった~! 俺達は騙されていたのか!」
「もうよい。それよりも、我らとともにこの世界の平和のために戦う意思はあるか?」
「はい! 我らもエリーヌ様のために戦います!」
アラクネ族も巨人族もハーピー族も、全員がケリー達とともに魔王城に向かうことになった。
中央を任されたシエンとルミエル率いるブラジロン共和国の部隊は、ラミア―公国の最西の砦にいた。丁度、ケリー達天空族が戦闘をしている最中、この砦でも戦闘が始まっていた。サイクロプスが巨大な目から光線を放ってきた。シエンが強固な結界を張って、それを防いでいる。コカトリスを中心に鳥や昆虫の魔物達が攻撃を仕掛けてきた。
「シエン様。もうしばらくお待ちください。もうすぐ準備が整います。」
すると、共和国の兵士から声がかかった。
「高射砲の準備が整いました。量子破壊砲はエネルギーも充填が80%までできています。あと1分で発射できます。」
「わかった。高射砲! 撃て————!」
「ダッダッダッ・・・・・・」
50基の高射砲が一斉に上空の敵を攻撃する。上空の敵がどんどん撃墜されて落ちていく。だが、コカトリスの目が赤く光った瞬間、高射砲が1基、石に変化してしまった。近くに居た兵士達も体の一部が石化した。
「コカトリスの弱点は目だ! 一斉に目を狙え~! 撃て———!」
「ダッダッダッ・・・・・・」
高射砲がコカトリスを狙うが、さすがにコカトリスも球を避ける。すると、古代竜シエンがコカトリスに向けて太陽よりも眩しい光を放った。すると、コカトリスの動きが止まった。次の瞬間、コカトリスの頭、目、身体が高射砲の直撃を受けた。コカトリスは体がばらばらになって、地面に落ちていった。
「やったぞ—————!!!」
「喜ぶのはまだ早い! まだ、100,000近い魔物が残っているんだ!」
「ルミエス様! 量子破壊砲の準備が整いました!」
「よし! では、2門同時に発射する。目標は。サイクロプスを中心にした左側の魔物と、ヒドラを中心とした右側の魔物だ! 中央の小物は高射砲で倒す! よいな!」
「了解しました!」
「撃て—————!!!」
ケンをも一瞬で消滅させた武器だ。魔物達が耐えられるはずがない。七色に光る巨大な光線が、魔物の大群の左側と右側を飲み込んでいく。光が収まると、地面には巨大な穴が3㎞先まで続いていた。見渡す限り、魔物の姿はない。中央の魔物も、同時に消滅していた。100,000いた魔物達が一瞬で消滅したのだ。
「ルミエル殿。この武器は凄いな。こんなものが世の中に発明されていたとはな。」
「シエン様。この武器は危険なものです。世界が平和になった時には、すべてを処分するつもりでいます。」
「そうだな。その方がよいだろうな。強大な武器は戦争の減になりかねないからな。」
「はい。そのことをケンさんから教えられました。」
「そうであったか。」
ラミア―公国防衛の戦いは無事に終了した。残すはオレ達だけだ。
「待っていろよ! ハーデス!」