デビロット大陸に向けて出港!
クルミの修行を終え、オレ達はブラジロン共和国のルミエスさんを訪ねた。
「こんにちは。ルミエスさん。」
「こんにちは。ケンさん。船の準備はできていますよ。」
「ありがとうございます。」
「ですが、以前もお話ししましたが、軍艦ではありませんので、大砲のような武器はありませんから。」
「大丈夫です。」
「そうですね。みなさんなら大丈夫でしょう。余計な心配でしたね。」
「いいえ。心配いただいてありがとうございます。船はどこですか?」
「ああ。そうですね。首都リオの最西端に港があるんですが、そちらに停泊させてあります。ご一緒しましょう。」
「でも、ルミエスさん。忙しいですよね?」
「大丈夫ですよ。ケン殿達はこの国の大恩人なんですから、私が議会を休んでもだれも文句を言いませんよ。」
「ありがとうございます。」
オレ達は近代的な馬車で行くことになった。馬車と言っても馬が引くわけではない。ほぼ自動車だ。魔石をエネルギー源として利用して、人間が運転していくのだ。
「さすが、ブラジロン共和国ですね。すべてが近代的ですね。驚かされますよ。」
「他の皆さんはともかくとして、ケン殿はあまり驚いた様子ではなかった気がしますが。」
「そんなことないですよ。始めて見ましたから。」
「そうですか? ですが、帝国の武器についても知っていたようですし、まさかその弱点をあんなにたやすく見抜くとは思いもしませんでしたよ。」
ルミエスさんは、ブラジロン帝国のブルータス皇帝が異世界からの転生者だということを知ったようだ。そして、オレも同じではないかと疑っているのだろう。
「到着しましたよ。あの船がそうです。」
オレ達の目の前にはかなり大きな船が停泊していた。船に『ワールドピース号』と書いてあった。
「ものすごく大きいですね。ルミエスさん。」
「ですが、以前の帝国の軍艦よりは小さいんですよ。この船は普段は交易船として運航していますから。」
すると、船から乗組員たちが降りてきた。
「紹介しましょう。彼がこの船の船長のマクエルです。」
「初めまして。『ワールドジャスティス』のケンです。彼女達はメンバーです。よろしくお願いします。」
「あなた方があの有名な『ワールドジャスティス』ですか。嬉しいですよ。後で握手をしてください。妻や子ども達に自慢できます。」
マクエルさんは気さくな方だった。
「オレ達が向かうのは魔族の大陸ですが、安心してください。この船に危険が及ばないようにオレが結界を張っておきますから。」
「ケン兄の結界は最強なんだよ! クラーケンもメガロドンも絶対に破れないから!」
「信じていますよ。ケンさんのことを知らない者はこの国にはいないでしょうから。」
ここでミサキが興味津々に聞いた。
「ケンはどんな風に知られてるんですか?」
「ケンさんは神のような存在だって、みんな噂してますよ。切断された足を元に戻したり、空から金属を溶かす雨を降らしたり、転移魔法を使ったり、何よりもあの量子破壊砲が直撃したのに生きてるなんて。神でなければできないことばかりだって。」
「へ~! そうなんだ~!」
ミサキがオレに身体を密着させてきた。ミサキの身体のぬくもりがオレに伝わってくる。
「マクエルさん。なるべく早く行きたいんですけど。もう出航できますか?」
「ええ。そのつもりでしたから。いつでも大丈夫ですよ。」
「ルミエスさん。いろいろありがとうございました。では、行ってきます。」
「皆さん。お気をつけて!」
「は~い!」
船はゆっくりと動き始めた。そして、徐々に速度をあげながら大海原を進んでいく。
「やっぱり船が大きいと揺れないにゃ!」
「ミレイ姉は揺れる乗り物苦手だもんね。」
「ローザちゃん。私も揺れる乗り物は苦手よ。」
「ミサキ姉もそうなの?」
するとクルミがやって来た。
「ミサキ姉ちゃん。お腹空いた~!」
「じゃあ、ケンにお願いして食事にしましょうか?」
オレ達は船の食堂に行った。他の乗組員の方も交代で食事をとるようだ。オレは、先日討伐したハイオークの肉を使った料理を、大量に空間収納に仕舞っている。そして、それを空間収納から取り出した。
「ケン! もしかして、これってこの前討伐したハイオークの肉?」
「そうだよ。」
「ヤッタ—! いただきま~す!」
全員が料理に食らいつく。
「旨いにゃ! ケン! このお肉は最高にゃ!」
「まだまだたくさんあるから、遠慮なく食べてくれよ。」
「うん。」
オレ達が食べていると船長のマクエルさんがやって来た。
「おお。これは美味しそうですね。」
「マクエルさんもどうぞ! 他の船員の皆さんの分もありますよ。」
「そうですか。では、交代で食べさせましょう。」
マクエルさんが一口食べて驚いた。
「こ、こ、これは旨い! これは何の肉ですか?」
「オークキングですよ。」
「あのAランクの魔物のオークキングですか?」
「ええ。そうですよ。出航の準備ができるまで時間があったんで、みんなで討伐に行ってきたんです。」
「さすが『ワールドジャスティス』の皆さんですね。」
「そんなに褒められたら恥ずかしいにゃ!」
「ミレイ! あなただけが褒められたんじゃないわよ! みんなが褒められたんだからね!」
「そうだったにゃ~!」
「アッハッハッ」
その場に笑いが起きて、場の空気が一気に明るくなった。さすがミレイだ。




