久しぶりにドルトンさんに会う!
オレ達はアルメデス王国に帰還し、王城に行った後、エイジやメイド達とご飯を食べた。オレ達が居間で寛いでいると、エイジがやって来た。どうやら、ジミー公爵とクララがオレ達が帰ってきたことを聞きつけて、屋敷に遊びに来たようだ。応接室に行くと、そこにはジミー公爵とクララがいた。クララはオレを見るなり、いきなりオレに抱きついてきた。
「ケン兄様~!」
「こら! クララ!」
「いいんですよ。お久しぶりです。公爵様。」
「久しぶりだな。みんなも元気そうで何よりだ。」
なんかクララが成長したように感じる。ついこの前まで、ローザよりも小さな子どものような気がしたが、今ではドリエほどの身長だ。
「クララ! 大きくなったね!」
「うん! 早くケン兄様のお嫁さんになりたくて、たくさん食べたもん!」
すると、女性陣が一斉にクララの方を見た。そして、ミサキが一言。
「クララちゃん! 私達が先だからね!」
「わかってるもん!」
クララは再びジミー公爵の隣に座った。
「エイジ! みんなにお茶の用意をしてくれ! ケーキも頼む。」
「畏まりました。」
オレは今回の旅についてジミー公爵達に話をした。エリーヌ聖教国での出来事や天空族の里について話した。伝説と思っていた天空族の話を聞いて、ジミー公爵の驚きは半端ではなかった。
「それでは、ケン殿はいつでも天空族の里に行けるのか?」
「はい。行けますよ。」
「この世界にはケン殿がいけないような場所はもうほとんどないな。」
「いいえ。まだありますよ。魔族の住むデビロット大陸にはまだ行ったことがないので、無理ですね。」
「行くつもりなのか?」
「ええ。」
「危険な場所だぞ!」
「知ってますよ。」
「そうか。なら何も言うまい。」
オレとジミー公爵が真剣な顔で話をしていたので、クララが心配そうに言ってきた。
「ケン兄様。行かないといけないんですか? 危険なんでしょ?」
「そうだね。でも、どうしても行かないといけないんだ。オレ達は大丈夫だから。お土産を持ってくるからちゃんと待っててくれるかい?」
「うん。わかった~!」
「ああ、そうだ! 忘れるところだったよ。天空族の里のお土産を渡すよ。」
「なになに!!!」
クララは興味津々で席を立ってオレのところに来た。オレは空間収納からぬいぐるみを出した。
「これ何?」
「これは、天空族の里に行く途中にいたペガサスっていう動物のぬいぐるみさ。本物のペガサスの毛で作ってあるからね。」
「かわいい!!! ケン兄様! ありがとう!」
ローザ達が羨ましそうにオレを見ている。
「ローザ達は実際にペガサスに乗っただろ!」
すると、黙っていたジミー公爵が驚いて言った。
「ケン殿。ペガサスがいたっていうのは本当かね?」
「本当ですよ。実際にみんなもペガサスに乗せてもらいましたから。」
「天空族と言い、ペガサスと言い。どれも伝説の存在だ! それが事実とすれば大発見だぞ!」
「今はまだ時期尚早かと思いますが、人族がすでに竜人族や獣人族、エルフ族と交流しているように、天空族とも交流できる日が来ますよ。」
「信じられん。ケン殿にはいちいち驚かされるな~。」
ジミー公爵とクララが帰った後、オレ達はそれぞれの部屋でゆっくり休んだ。そして、翌日、久しぶりに王都ギアラを散策することにした。
「ケン兄! 久しぶりにドルトンさんのところに行こうよ。」
「そうだな。」
オレ達は全員でドルトンさんのいる工場に向かった。オレ達が行くと、工場はさらに大きくなっていた。受付の女性がドルトンさんを呼びに行った。すると、ドルトンさんと一緒にドワーフ族の男性が数人やって来た。
「ケン! 久しぶりだな~! 帰って来たのか?」
「ええ。久しぶりですね。ドルトンさん。なんか、工場が以前より大きくなった気がするんですが。」
「ああ。温水トイレに泡ふく風呂、それに水晶の通信機器を改良した箱型の通信機器。どれも、人気があってな。オレ一人じゃ手が回らなくて、親父に頼んで人を回してもらったんだ。」
「デンテンさんにですか?」
「ああ。そうさ。親父はあれでもドワーフ族の族長だからな。」
「でも、ドルトンさん。なんか生き生きしてますよ。」
「ケン! ドルトンさんにお土産があるんでしょ!」
「ああ、そうだった。これ、天空族に伝わるお酒です。みんなで飲んでください。」
「天空族だと~!」
「ええ。そうですよ。」
するとローザがオレの手を握りながら可愛く言った。
「ペガサスもいたよ! 私もペガサスに乗ったんだ~!」
「そうか~! そっちのお嬢ちゃんが竜人族と聞いて驚いたが、天空族もいたのか~!」
するとドリエが頬を膨らませて言い返した。
「私はドリエです! お嬢ちゃんじゃありませんから!」
「おお。悪いな! 最近は大勢の人間と会って、名前を覚えるのも一苦労なんだ。」
その後、ドルトンさんの工場を後にして街をぶらぶらした。いつもの通り、女性陣は服屋に行く。オレは外で暇にしている。
“リン。残りのオーブがどこにあるのかわからないか?”
“恐らく、魔族の住むデビロット大陸ではいないでしょうか?”
“やっぱり、そうだよね。オレもそんな気がする。”
“残りのオーブは火と水です。どちらも強力な魔法の源となるものです。一つでも魔王ロンバルトに渡るのは防ぎたいところです。”
“でも、もう2つとも手にしてるかもしれないよ。”
“それはないでしょう。もしそうなら、他の大陸に侵攻しているはずですから。”
“魔王ってさ。一人だけなの? もしかしたら、他にも魔王っているの?”
“わかりません。眷属に調べさせましょうか?”
“ああ。頼むよ。敵は少ない方がいいからね。”
そうこうしているうちに女性陣達が店から出てきた。見るとローザが何やらもじもじしている。
「ローザ! どうしたんだ? トイレなら店で貸してもらえよ!」
「違うもん!」
「ローザは今日、『ブ』を買ったにゃ!」
「『ブ』?」
すると、ここでミサキが小さい声で言ってきた。
「女子の下着よ!」
「ああ、なるほどな。でも、まだ必要ないだろ?」
すると、ローザはぷんぷん怒って先に行ってしまった。
「ローザ! 怒るなよ! 今度ホワイトエンジェルに頼んで、ぬいぐるみを作ってあげるからさ~!」
「本当?」
「ああ、本当さ!」
「なら、許してあげる!」
ローザがオレの手を握って来た。それを見てオレの左手の争奪戦が始まった。勝ったのはミレイだ。オレ達が街を歩いていると、ダンテさんから連絡が来た。
“どうしたの? ダンテさん。珍しいね。ダンテさんから連絡がくるなんて。”
“ケン殿。竜人の里に急いでお越しください。至急、ご相談したいことがありまして。”
“わかった。今から行くよ。”