天空族の新たな族長
オレ達は天空族の里に帰還し、族長のゼットンにすべてを話した。大天使ナルーシャの口添えもあり、族長のゼットンはケンとケリーの結婚をあきらめた。だが、族長ゼットンはカレラの強さを確認するために、天空族最強の戦士デービスとカレラの模擬戦を提案してきた。そして現在、オレ達は宮殿の裏にある訓練場まで来た。すると、2mはありそうな筋肉の塊のような男がオレ達の前に現れた。デービスだ。デービスはオレ達に近づいて声をかけてきた。
「カレラ! 族長に頼まれたからお前に相手をするが、本気でやるからな! 命の補償はしないぞ!」
それだけ言ってその場から去っていった。
「大丈夫だ! ケリー! お前も感じただろ? あのデービスの闘気を。」
「はい。四聖竜様達に比べれば全然大したことはありません。」
「その通りだ。お前はこの世界の最強種の四聖竜さん達と戦ってきたんだ! 負けるはずがないだろう。」
「はい!!!」
カレラの目がギラギラと輝きだした。そして、いよいよ模擬戦の時間が来た。模擬戦の前に双方に注意が与えられた。
「ではこれより2人の試合を始める。始め!」
お互いに闘気を高めていく。当然だがデービスのオーラよりもカレラの方が数倍は大きい。それを見てデービスの顔色が変わった。
「相当強くなったようだな。カレラ! だが、実戦経験豊富な俺には勝てんぞ!」
デービスが瞬間移動でカレラの後ろに回って、剣で攻撃を仕掛けてきた。だが、カレラも瞬時に瞬間移動してその攻撃をかわした。デービスの手から光線が放たれる。カレラはその光線を剣で受け止めた。そして、瞬間移動でデービスの頭上に転移し、炎の攻撃を仕掛ける。デービスは堪らず避けようとするが、避けきれない。
「グワッ」
カレラは素早くデービスの腹に拳を叩き込む。
「グホッ」
デービスはその場に倒れて意識を失った。
「勝者! カレラ!」
審判の声と同時に観客席が大騒ぎとなった。
「オオ—————!!!」
「おい! あれは本当にカレラか?」
「間違いないさ! あれは料理人のカレラだ!」
「カレラ————! お前が最強だ————!」
観客席の中から一人の女性が現れ、こっちに向かって走ってくる。カレラの姉のマーサさんだ。
「カレラ! よくやったわ! さすが私の弟ね!」
オレ達が全員でカレラさんを祝福していると、そこに族長のゼットンがやって来た。
「よく頑張ったな。カレラよ。ここまで強くなるには相当な訓練を積んだのであろう。我が娘ケリーをお前に託そう。2人で力を合わせて、この天空族を守って行ってくれ。」
「あ、あ、ありがとうございます。ゼットン様!!!」
カレラの目から涙が溢れた。何もできないと思っていた自分が、努力に努力を重ねて掴み取ったのだ。愛する者のために。
「カレラ! ありがとう! これからよろしくね!」
ケリーがカレラの胸に飛び込んだ。
「ああ、2人で幸せになろう! そして天空族のみんなも幸せにしよう!」
「うん!!!」
ここで意識を取り戻したデービスもやって来た。
「カレラ! お前には負けたよ! まさかこれほどまでに強くなっているとはな!」
すると、ローザが言った。
「おじちゃん! カレラ兄ちゃんは実力の半分も出してないよ!」
「カレラ! それは本当か?」
カレラが返答に困ってもじもじしている。すると、隣にいるケリーが言った。
「カレラ! もじもじするな! 本当のことを言えばいいんだ!」
「デービスさん。申し訳ないが、本当です。本気を出す前に試合が終わってしまったので。」
「そうか~。そうなのか~。だが、どうしたらそんなに強くなれたんだ!」
ここでケリーが答えた。
「私達は四聖竜様達に鍛えられたからね。」
すると、カレラがポツリと言った。
「でも、僕の強さなんか大したことないよ。ここにいるミレイさんやミサキさん、ローザさんやドリエさんの足元にも及ばないよ。それにケンさんと戦ったら、多分一瞬で殺されるし。」
すると、デービスがカレラに対していきなり片膝をついて言った。
「カレラ様。どうか、このデービスを鍛えてください。私もカレラ様のようにもっともっと強くなりたいのです。」
「デービスさん。立ってください。それに今まで通り『カレラ』って呼んでください。僕はそんなに偉い存在じゃないですから。僕に教えられることはそんなにないかもしれませんが、この里の役に立つなら何でもしますよ。」
デービスとカレラのやり取りを聞いていたゼットンは頷きながら、観客達に聞こえるように大きな声で言った。
「ここに新たな族長の誕生がした! みんな! これからはこのカレラが族長だ!」
「オオオ———————!!!」
「カレラよ。今日からお前がこの里の族長じゃ。よいな!」
カレラさんはケリーを見た。ケリが微笑みながら頷いている。
「わかりました。お引き受けします。」
そして、カレラさんとケリーの結婚式やカレラさんの族長就任式などで、その日から3日間は天空族の里がお祭り騒ぎとなった。そして、いよいよオレ達が里を去る日が来た。
「ケン様。本当にありがとうございました。カレラと力を合わせて、この天空族の里を守っていきます。ケン様が必要であれば、いつでも呼んでください。この天空族はケン様に従います。」
すると、ローザがケリーに話しかけた。
「ケリー姉はその言葉の方が似合うよ。私とおんなじで美人なんだから! ねっ! ケン兄!」
「そうだな。2人ともお幸せに!」
「皆さん。本当にありがとうございました。」
オレ達は天空族のみんなに見送られる中、転移でアルメデス王国に帰還した。