エレフト山の試練
オレ達が雷竜に会いにエレフト山を登り始めた。空気が薄くなる中、徒歩で登るよりも飛行の方が早いとドリエが言ってきたので、飛行して山頂を目指すことになった。やっとの思いで山頂まで来ると、いきなりオレ達を威嚇するように雷が落ちた。
「バキバキバキドッガ—————ン」
いきなりの雷に驚いたオレ達が、一斉に後ろを振り向くと、そこには金色のドラゴンがいた。
「貴様らは何者だ? 我の領域に無断で侵入するとはいい度胸だ!」
「ちょっと待ってください!」
オレが説明しようとしたが、聞く耳を持たない。いきなり攻撃を仕掛けてきた。大きな翼を羽ばたかせる。すると、オレ達に向かって小さな雷が次々と襲い掛かった。オレは結界を張ってそれを防ぐ。
「貴様! なかなかやるではないか!」
「あの~、ちょっと、話を」
今度は頭の角に電気が集まり始めた。このままではまずい。オレは慌てて『神気』を解放した。オレの身体から神々しい光が放たれる。そして、オレの身体から無数の光の矢が放たれた。金色をしたドラゴンの身体に突き刺さる。
「ギャー」
「どう? オレの話を聞く気になったか?」
「貴様は何者だ! ま、ま、まさか、その光は神なのか?」
「違うから。人間だから。ちょっと話を聞いてくれ!」
金色をしたドラゴンはオレの話を聞いてくれることになった。オレは『リカバリー』でドラゴンの傷を治して話し始めた。
「オレに名前はケン。地竜さんに言われて、このケリーの修行に来たんだ。お願いできないか?」
「地竜にか?」
「ああ、そうさ。嘘だと思うなら、念話で確認すればいいだろ!」
すると、暫く黙っていたと思ったら話しかけてきた。
「すまなかったな。地竜に確認したぞ! よかろう。この雷竜が責任をもって指導しよう。」
オレ達は一人ずつ自己紹介をした。
「そうか~。お前達は天空族か? なるほど神聖な気が感じられるわけだな。だが、ケンとやら。お前は本当に人族か?」
「また、その話か~。地竜さんにも言われたけど、本当に人族だから。」
「わかった。深くは聞くまい。では、ケリーに稽古をつければいいんだな。」
すると、カレラさんが大声で言った。
「僕にも稽古をつけてください。お願いします。」
雷竜がオレを見た。オレはゆっくり頷く。
「わかった。2人を鍛えてやろう。」
それから10日、オレ達はやることがないので、転移で竜人の里まで戻って魔物の討伐をした。地竜も雷竜もドラゴンだけあって、食べる量が半端ではないのだ。ケリーとカレラは毎日ぼろ雑巾のようになっていた。
「ケン。2人の修行は今日で終わりだ。もうこの雷竜が教えることは何もない。」
すると、ケリーが雷竜に深々と頭を下げた。
「師匠。今日までありがとうございました。俺、なんか強くなった気がします。」
「僕も使えないと思っていた雷魔法が使えるようになりました。師匠のおかげです。ありがとうございました。」
「2人ともよく頑張った。これからも精進するがよい。」
「はい。」
「ところで、お前達はこれからどうするんだ?」
「キラウイ山の炎竜さんを尋ねようと思うんですけど。」
「あいつのとこか。あいつは気難しいから注意した方がいいぞ!」
「そうなんですか? 」
「ケン。困ったことがあったらいつでもわしを呼ぶがよい。」
「ありがとうございます。」
オレ達は転移で竜人の里に帰った。そして、その日はゆっくりと休んで、翌日キラウイ山に出発することにした。
「ドリエ! キラウイ山ってどの辺りにあるんだ?」
「このアデール山脈の最西端にある火山です。ですが、いくつか山を越える必要があります。」
「ケン! もしかして、また山を登るの?」
「また、飛んでいったらいいにゃ!」
「ミレイさん。残念ですが、それは無理です。行く途中に天候が悪く、激しく吹雪いている地帯を通過しなければなりません。さらに、ワイバーンの居住地域を通過しますので、今回は地上を行く方が無難です。」
「ドリエ姉! なら、途中まで飛んで行って、途中から徒歩でもいいよね?」
「それなら、大丈夫です。」
するとケリーが言ってきた。
「話を聞いてりゃ軟弱な奴らだ! 俺なら吹雪でもワイバーンでも問題ないぞ!」
「ケリー! 僕は無理かもしれない!」
「何を言ってるんだ! カレラ! お前だってもう十分強いじゃないか!」
「ケリー! 今回の目的はお前とカレラさんの修行だろ! 楽してどうするんだ! 修行の一環だ! 地上を行くぞ!」
「チェッ! 仕方ねぇな~!」
オレ達は旅の準備をして、その翌日早朝、キラウイ山に向けて出発した。ローザの提案通り、途中までは飛んでいくことにした。今回は、オレがローザ、ドリエがミサキ、ケリーがミレイを運んでいる。
「ケン兄に抱っこされるの久しぶりな気がする!」
「いいから、あまり動くなよ!」
「だって、こんな事めったにないもん!」
途中までは何の問題もなく順調に進んだ。だが、雪山に差し掛かったあたりから急に冷え込んで風が強くなってきた。
「ケン様。そろそろ地上に降りましょう。」
「わかった。」
「え~! もう降りちゃうの~!」
「また今度、抱っこするからいいだろ!」
「約束だよ! ケン兄!」
オレ達が地上に降りるとかなり雪が積もっていた。しかも吹雪いている。
「ワオ——————」
遠くで狼のような遠吠えが聞こえた。すると、ドリエがみんなに言った。
「この辺りにはスノーウルフやスノーモンキー、それにイエティやアイスゴーレムのような強力な魔物もいますので、注意してください。」
「僕、寒いの苦手にゃ! ケン! 温めて欲しいにゃ!」
ミレイがオレに抱きついてきた。暖かく柔らかい感触がある。なんか気持ちいい。すると、反対側にローザも来た。
「私も寒いのは苦手! ケン兄! 抱っこして!」
「ローザちゃん! ずるい!」
「だって、さっきケン兄が約束してくれたもん!」
「ケン! それ本当なの?」
ミレイ、ミサキ、ドリエが鋭い眼差しでこっちを睨んでる。
「別にローザだけじゃないさ! 交代でみんなも抱っこするつもりだったからね。」
「さすがケンにゃ!」
「でも、今は無だよ! どこから魔物が襲ってくるかわからないからさ!」
なんかケリーが、イヤらしいものを見る目つきでオレを見ていた。これは無視するしかない。
「ケン様。スノーモンキーの群れです。気を付けてください。」
「みんな、いつでも攻撃できるように準備して進むぞ!」