怪しい洞穴
ケリーとカレラの修行を始めて2日目だ。2日目は魔力循環の練習をしてから、身体強化の魔法を教えた。やはり、ケリーは無意識で発動していたようだった。
「やっぱり基本が大切だな。今までとは全然違うぞ! なんか体が軽くなったな。」
「僕も少し体が軽くなったような気がします。」
「なら、カレラさん。この剣を振ってみてください。」
オレはわざと大剣を渡した。
「こんな重そうな剣なんか、振れるわけないですよ。」
「いいから。やってみて!」
「ブ~ン ブ~ン」
カレラが軽々と大剣を振る。
「ケンさん。これ、わざと軽く作ってますか?」
「いいえ。普通の大剣ですよ。」
「本当に?」
やはり魔力循環を覚えると体の動きがよくなるようだ。身体強化が成功している。
「じゃあ、午後からはダンテさんから体術を学んでください。」
お昼休憩の間、女性陣が言ってきた。
「ケン。私達の時のように実践訓練の方がよくない?」
「ケリーはともかく、カレラさんはもう少ししたら実践訓練するつもりだよ。」
「なら、私達暇だから山の方に魔物を狩りに行ってもいいかな~?」
「別にいいよ。ドリエ! みんなを案内してやってくれ!」
「はい。ケン様。」
女性陣がドリエの案内で山に向かった後、オレはダンテさんと一緒にケリーとカレラさんを鍛えるべく、修行に参加した。持久力や筋力のトレーニングでは、意外にもケリーよりもカレラさんの方が能力が高かった。
「僕は毎日厨房でたくさんの料理を作っているから、体力があるのかもしれませんね。」
「ケリー! その程度でバテルなんて情けないぞ!」
「俺は長期戦なんて考えたことないから!」
夕方近くになって、2人は立ち上がることすらできなくなった。
「今日はここまでだな。明日からもっとレベルを上げてくからな!」
「もっとですか? 今日の訓練だけでも限界なのに~!」
「俺も限界だ~!」
オレ達が解散して、ドラクさんの家に行くとすでに女性陣が帰ってきていた。
「ケン兄! おかえり~!」
「ケン! カレラさんはどう?」
「時間はかかるけど大丈夫だと思うよ。」
「僕達と一緒に山に魔物を討伐しに行った方がいいにゃ!」
「ミレイ達はどうだったんだ?」
「ホーンベアやホーンボアがいたにゃ! 今日はお肉料理にゃ!」
「みんなのストレスの解消にもなるし、この里の安全にもなるから一石二鳥だね。」
「明日も行くにゃ!」
それから数日が経った。ケリーはすでに実力があったので、驚くほどの成果は見られなかったが、カレラさんはもはや別人のようになっていた。男らしく身体が引き締まっただけではない。魔法も体術も、その辺の冒険者では勝てないレベルまで到達している。
「ケリー。カレラさん。そろそろ実践訓練に移ろうか?」
「俺は大丈夫だが、カレラは大丈夫なのか?」
するとダンテさんが答えた。
「恐らく、ワイバーンなら一人で倒せるぐらいには強くなってると思うぞ!」
「まさか?! 俺だってワイバーンと戦うのは大変なんだぞ!」
「実際に戦ってみればわかるさ!」
その日、いつものようにドラクさんの家に帰ると女性陣が帰っていた。どうやら、この近くにはすでに魔物がいなくなっているので、少し離れた山まで行っているようだ。
「ケン! 今日、ここから離れた山に行ったんだけど、変な穴を見つけたんだよね。」
「ドリエは知らないのか?」
「はい。私も今まで気づきませんでした。」
するとドラクさんが聞いてきた。
「ドリエ。その穴の位置はどのあたりだ?」
「休息の滝の近くよ。」
ドラクさんが考え込んでしまった。
「その穴の近くに大きな石はなかったか?」
「あったよ! でも、私が粉々に壊しちゃった!」
「それは封印石だな。」
「ケン兄! どうしよう? 私、大事な石を壊しちゃったよ~!」
「ドラクさん。その穴には何を封印していたんですか?」
「詳しいことは、私も知らないんです。ただ、私の父、つまり私の前の族長が封印したと聞いてます。」
「なら、明日みんなで行こうか?」
「でも、ケリーとカレラさんの修行は大丈夫なの?」
「あの2人も連れて行くさ!」
そして、翌日、オレ達はダンテさんに断って、ケリーとカレラさんを連れて山の中腹にある謎の穴に行くことにした。
「ケン兄! 魔物を見つけたら討伐していい?」
「ああ、いいよ。オレが空間収納に仕舞ってやるよ。」
「なら、私も討伐する!」
「いいけど、カレラさんが優先だから。その次はケリーだからね。」
「わかってるにゃ!」
謎の穴までは意外と距離がある。途中で、ホーンボアやホーンベアがいた。最初は及び腰だったカレラさんも、次第に自分の強さに自信が持てるようになったようだ。
「カレラ兄ちゃん。意外と強いじゃん。」
「ケンさんやダンテさんに厳しい指導を受けましたからね。」
するとケリーが横から言った。
「まだまだだな。俺の夫として認めてもらうには、もっと強くなってもらわないとな。」
「ケン。そろそろよ。」