武術大会個人戦(3)
いよいよ試合が始まった。アントニウスさんは手に剣を持っているが、ケリーは珍しく杖を持っている。最初は様子見なのか、お互い攻撃を仕掛けない。だが、しびれを切らしたアントニウスさんから攻撃を仕掛ける剣に魔法を付与したらしく、光が溢れ出ている。もの凄い速さでケリーに切りかかった。だが、ケリーが左手を前に出すと、土が盛り上がり人の形となる。そして、ケリーの前に土の兵士が現れた。
「奇怪な魔法を使うやつだ!」
ケリーは土の人形を切り壊す。だが、次から次へと土の人形は現れる。そして、ケリーの姿が消えた。恐らく、予選で使った姿と気配を消す魔法だ。アントニウスさんは土の人形を切り壊しながら周りを確認する。だが、ケリーは見つからない。すると、アントニウスさんの後ろから電気の矢が襲い掛かる。
「グホッ」
「ケン! アントニウスさん大丈夫かな~。」
「ケリーがどこにいるのか分かれば対処できるだろうけど、この状況はまずいな。」
アントニウスさんの背中に直撃した。アントニウスさんは思わず地面に膝をついた。何を考えたのか、アントニウスさんは剣に光魔法を付与して、全身を勢いよく回転させる。
「アントニウスさん! 凄いにゃ!」
アントニウスの起こした竜巻の中から、無数の光の斬撃が360度全方位に飛ばされた。
「ドサッ」
姿の見えなかったケリーが手や足から血を流しながら現れた。
「やるじゃない! さすが、白騎士のリーダーね! でも、これならどうかしら?」
ケリーは自分の目の前に結界を張った。光の斬撃がケリーの作りだした結界に阻まれる。そして、ケリーは地面に手を付けて魔法を発動した。
『グランドサンダー』
雷は通常、天から地面に落ちるものだ。だが、アントニウスさんの立っている場所を中心に、雷が地面から上空に向かって走る。
「グワー」
アントニウスさんの竜巻が消え、アントニウスさんは気を失って地面に倒れていた。
「勝者! ケリー!」
「オオオ—————!!!」
「スゲーゾ! ケリー!」
「パチパチパチ・・・・・」
アントニウスさんが担架で運ばれていく。オレ達は救護室のアントニウスさんのところに行った。アントニウスさんはまだ意識を取り戻していない。だが、魔術師達の『ヒール』で意識が戻ったようだ。
「俺は負けたのか?」
「よく頑張ったよ! アントンちゃん!」
「そうか。あのケリーとかいう娘がこれほど強いとは思ってもいなかった。修行不足だな! また、1から出直しだ!」
「アントニウスさんの攻撃もすごかったですよ。それに、あの攻撃にはまだまだ工夫の余地があるしね。」
「それは本当か? ケン殿!」
「そうか。なら、まだ俺は強くなるかもしれないってことだな。」
「そうにゃ! アントンさんはもっと強くなるにゃ!」
「ありがとう。みんな。」
アントニウスさんの怪我も大したことがなくてよかった。オレ達は次の試合の観戦のために、観客席に向かおうとした。すると、係員がやって来た。
「ケン殿! すぐに次の試合が始まります。会場にお越しください。」
「えっ?! だって、第2試合は?」
「すでに決着がつきましたよ。カネロ様の勝利です。」
オレ達がアントニウスさんのところに来ていたわずかな時間で、カネロは緑騎士のリーダーのアリウスを倒したようだ。オレは係員に誘導されて、試合会場に向かった。すると、すでに銀騎士のリーダーであるポンペイが待っていた。
「お前! 俺を待たせるとはいい度胸だな。」
「すみません。こんなに早く第2試合が終わると思ってなかったんで!」
「そうか。だが、安心しろ! この試合も一瞬で終わるからな。」
アントニウスさんの説明では、ポンペイはローザと同じ水魔法、氷魔法を使うようだ。油断はできない。
「始め!」
審判の掛け声と同時にポンペイが剣を振った。すると、地面が凍り始める。オレの足元まで凍ってしまった。上空に飛翔して避けることもできたが、人族であるオレが空中に浮くとものすごく目立ってしまう。他の対戦相手に警戒される可能性もある。何よりも魔族と疑われかねない。そこで、そのまま逃げないことにした。
「どうだ? これで動けまい! もう、お終いだな!」
ポンペイが勝ち誇って言った。
「お前の技ってこの程度なのか?」
「何を~!」
ポンペイが次の魔法を発動しようとした。オレは軽く闘気を解放する。すると、オレの身体からまぶしい光が放射され、辺り一帯に熱風が吹いた。凍っていたはずの地面が溶けていた。
「貴様! 何をした?」
「オレ、まだ何もしてないよ!」
「嘘をつくな! これならどうだ!」
上空に無数の氷の矢が現れる。だが、ローザと違って小さく威力がない。その氷の矢が、オレに向かってきた。オレは軽く手を振った。すると、氷の矢が地面に落ちる。
「そろそろ終わりにしようか。ミサキ達を待たせると、怒られるからね。」
『グラビティ―』
オレはポンペイに右手を向けて重力魔法を発動する。ポンペイは地面に叩きつけられて身動きできない。
「どう? 動けないでしょ! 降参でいいよね!」
ポンペイは返事をしない。しないというよりできないのだろう。オレはさらに重力を高める。すると、ポンペイの身体から嫌な音が聞こえた。
「バキッ、バキ」
ポンペイは口から泡を吹いて意識を失った。
“やばい! やりすぎた。”
「勝者! ケン!」
「オオオオオ————!!!」
「やっぱり『ワールドジャスティス』のリーダーだぜ!」
「あいつ、強すぎねぇか!」
ポンペイが担架で運ばれていく。オレはそれを横に見ながら試合会場を後にした。
「さすがケンにゃ! 相手にならないにゃ!」
ミレイがオレの腕を掴んで喜んでくれている。それを見て、素早くローザが動く。
「ケン兄! おめでとう! やっぱり強いね!」
「ありがと!」
オレの周りに美少女達5人が集まっている状態だ。なんか、周りの男達から敵意の視線を感じる。女性達は嫉妬のまなざしで見ている。
「次の試合を見たら、すぐに帰ろう!」
「そうね。次はベンジャミンさんとイーサンよね。」
「なんか、嫌な胸騒ぎがします。ケン様。」
「大丈夫さ。危険な状況になったら、降参するように言っといたから。」
「そうよ。ドリエちゃん。考えすぎよ。」
「なら、いいんですけど。」




