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ハットトリックと先輩

作者: 花野シオン

 後半が始まって既に30分が経過しようとしていた。

今日の予選で負ければ3年生は引退となり、俺たち2年が次の代を引き継ぐことになる。

俺たちの一つ上の世代は、丁度その時に流行っていたバスケのマンガの影響を受け、長谷川さん一人しかいない。なぜ、長谷川さんが、バスケ部に行かなかったのには、明確な理由がある。それは、長谷川さんは、身長が低い。確かに、サッカーは、身長が低くても活躍をしている選手は、たくさんいる。しかし、長谷川さんは、背が低いだけでなく足も遅い。この間の大会までは、ベンチだったのだが、監督が最後の試合だからということもあり、今日は、スタメンで使っている。そして、その影響もあり、今の時点で、8ー2で負けている。


 自慢ではないが、うちのチームの2点は、俺が決めている。あと、1点決めれば自身初のハットトリックだ。

そして、丁度いい位置で味方がフリーキックを獲得してくれた。

「コースケ、あと1点決めればハットトリックだな」と、司令塔の藤崎が俺のところに近寄ってきてくれた。

俺は、「新チームのためにも、いい形でこの試合を終わらせたいな」と、靴ひもを結びなおし気合を入れた。

藤崎は、俺の耳元に作戦を言い、ボールのところへ向かう。

そして、藤崎は、ボールをセットし、3歩くらい後ろに下がる。センタリングで来ると思っているディフェンダーの裏をかき藤崎の蹴ったボールがグランダーで俺の足元へと作戦通りに来る。

俺は、ディフェンダーの逆を突き、シュートモーションに入る。その時、ディフェンダーの足が俺の軸足を蹴りPKを獲得した。俺は、内心、これでハットトリックだと思った。


 すると、長谷川さんが、笑顔で俺に近寄ってくる。長谷川さんは、そのあと、両手を出し、ボールを渡すように催促する。俺は、それは違うだろと長谷川さんの方を見るが、長谷川さんも引かない。

そして、スタンドの方を見ると、スタンドの父兄も長谷川さんに蹴らせてあげればいいんじゃないみたいな雰囲気になっていた。俺は、渋々、ボールを渡した。長谷川さんは、俺が思っていた通り、そのPKを外し、頭を搔いた。

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