Episode.5 開幕、勉強会!
今日も俺は白いカッターシャツを着て、ズボンを履き、制服を身に纏う。そして、昨晩玲奈が作ってくれた料理の残りを食べる。
玲奈が言っていた通り、筍とジャガイモの煮物は一層味が染み込んでおり、実に美味だ。
その後、おにぎりを作ってラップで包み、これも昨晩玲奈が作ってくれた鶏肉とシメジの炒め物をパックに詰めてカバンへ。今日の昼食だ。
そして、完全に朝の支度が整ったところで、玄関に向かいスライド式のドアを横にガラガラと開ける。
(……レーナとどんな顔して会えば良いんだろう?)
パッと目に飛び込んできた陽光に視界が白熱し、俺は目を細める。
すると────
「お、おはようございます……カナタ君」
家の先に、燦爛と煌めく銀髪をたなびかせた玲奈が待っていた。
昨晩のこともあるので、俺は若干の恥ずかしさを感じてしまう。
「待っててくれたのか?」
「はい……一応、アレになったわけですし……アレに」
アレとは恋人のことで間違いないだろう。厳密に言えば、俺が恋愛描写を上手く書けるようになるまでの仮の恋人だが、それは些細な問題でしかない。
「何か……恥ずかしいな……」
「そ、そうですか? わわわ私は別に?」
「そうか、お前の顔が真っ赤に見えるのは俺の気のせいか」
「うぅ……見ないでください……」
玲奈は両手で顔を覆い隠してしまう。しかし、今まで漠然に思っているだけだったが、こんな仕草一つ一つが実に可愛らしい。
(な、なるほど、付き合い始めたらこういう気付きもあるのか……)
折角玲奈がここまでして、俺が恋愛描写を書けるようになるための手伝いをしてくれているのだ。俺もこの機会を無駄にせず、きちんと役立てなければ。
「まあ、行こうか」
「そ、そうですね」
俺と玲奈は、並んで学校に歩いていった────
■□■□■□
「ほら、私の言った通り」
教室に入るなり、すでに席に着いていた彩夏は、俺と玲奈を見た後、何かを競っていたらしい香音に視線を向けてそう言う。
「どうした突然?」
「ん……カナタ君とレーナが日に日に仲良くなっていくから、どこまでいくのか香音と賭けをしてた」
「そ、それで……?」
「香音はカナタ君とレーナが恋人になってるって予想して、私は二人が一緒に登校してくるって予想した」
「「……ッ!?」」
彩夏の説明に驚いて、俺と玲奈は互いの顔を見合わせる。
「まだ出会って数日のカナタ君と流石にそこまではいってないって言ったんだけど、香音は聞かなくて」
「ぼ、ボクの魔眼は欺けんぞ!? 貴様ら、付き合っているだろうッ!?」
まだ負けてないという風に、相変わらず中二病全開にしながらも、多少自分の言っていることに恥ずかしさを覚えるのか、若干顔を赤くした香音が、ピシッと指を差してくる。
恐るべし香音の自称魔眼。見事に的中させてやがる。
この勝負、俺と玲奈が一緒に登校してくるという予想をした彩夏も間違ってはいないが、より正確に当ててきた香音の勝利だ。
しかし、この関係をはたして二人に言って良いものなのか……
俺は視線を玲奈に向けて確認してみる。すると、目があって一瞬身体をビクンと強張らせた玲奈が、ブンブン顔を振ってくる。どうやら仮恋愛をしていることはバレたくないらしい。
「ま、まぁ……お前の魔眼でも見通せないものはこの世にはあるってことだな、ははは……」
今、俺は自然に笑えているだろうか。嘘を吐いている自覚があるので、顔がひきつっている感覚がある。
「くっ……ボクもまだまだというわけか……」
(いや、凄いよ自称魔眼……確かに見通せているぞ……)
俺は心の中で、香音に称賛を贈る。
「そ、そうだ! もうすぐ中間テストですけど、毎回赤点ギリギリの香音は大丈夫ですか?」
早々に話題を切り替えたかったのだろう、玲奈が半ば無理矢理にそう切り出すと、香音が渋い顔を浮かべる。
「ぼ、ボクは……その……この科学文明の発達した世界の学問には疎いのだ……」
「安心しろ、千本松は科学文明の影響をあまり受けていないようだぞ。都会育ちの俺からしたらここは魔境だ」
「ま、魔境……カッコいい……ッ!」
「そういうことを言いたかったんじゃない……」
まあ、この千本松はかなりの過疎地域であるがゆえに、学校もこの分校しかない。離れた町の本校から教科の先生が来てくれるものの、勉強に整った環境とは言い難い。
都市と過疎地域で学力の格差が発生しているというのは、最近でも問題にされている。もしかすると、ここでもそうなのかもしれない。
「じゃ、今回もやるしかなさそう……」
「そうですね!」
彩夏の呟きに、玲奈がニコッと笑って手を合わせる。
「何をやるんだ?」
「毎回テスト前は、香音の家で勉強会をするんです。まあ、主に香音に教えるという形になっていますが……」
そう答える玲奈は、苦笑いを浮かべている。
「もちろんカナタ君も参加してくださいね? 授業中、ノートを覗いた感じでは、かなり勉強できるようなので!」
「まあ、勉強は苦手ではないけど……って、何勝手にノート覗いてんのッ!?」
「良いじゃないですかー、減るものではありませんしー」
そういうわけで、今日から放課後は、香音の家で勉強会をすることになったのだ────
■□■□■□
「家でっか……」
自然とそう言葉が溢れてしまう。
予定通り、放課後に皆で香音の家に来たのだが、俺はその敷地に入る前に立ち止まる。
家とその庭の外周は塀で囲まれていて、家自体も伝統的な日本建築で立派なものだ。流石は千本松の村長の家といったところか。
戦々恐々としながらも、慣れたように入っていく三人についていく。
そして────
「な、何だこの部屋は……」
「ふっ……ようこそボクの世界へ」
どや顔を見せ付けてきながら自信ありげにそう言ってくる香音。
「あはは……初めて見たらそう反応しますよね……」
「相変わらずカオス」
苦笑いの玲奈と、僅かに呆れ顔を浮かべる彩夏。
この家──いや、お屋敷か? の外観通り、香音の部屋は畳部屋で、かなりの広さがあるのだが、何というか……家具や装飾品が個性的だ。
本棚には何やら分厚い本が大量に入っており、中には外国語で書かれたものもある。これを見れば、「凄い難しい本を読んでるんだね!」と思うかもしれないが、出会って日の浅い俺でもわかる。香音に限ってこんな本を読むわけがない。絶対に見た目がカッコいいから置いてあるだけだ。
その他も大量のガラクタがゴロゴロと……
「まあ、勉強できる人の部屋ではないな」
「な、何を言う!? これでもボクは日々魔法の研究に──」
「そんな役に立つかどうかもわからないものの研究より、一般教科の勉強をしような?」
「うっ……」
そんな会話をしながら、部屋の真ん中にある長方形のテーブルに座る。俺の左隣に玲奈、机を挟んだ対面に香音、左斜向かいに彩夏だ。
「で、勉強会ってどうするの?」
俺はこういったことは初めてなので、勝手が良くわからない。そんな疑問に、玲奈が答えてくれる。
「まあ、自分の好きな勉強をして、わからなかったら尋ね合う……とは言っても、皆さん学年がバラバラなので、私はどちらかというと教える立場でしたけど」
「なるほど」
俺は早速カバンから教材を取り出す。他の三人もそれぞれの教科の教科書やワークを取り出して、勉強に取り掛かる。
こうして、中間テスト対策勉強会が始まった────
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