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[Web版] 異世界転移、地雷付き。  作者: いつきみずほ
第七章 ダンジョン
258/500

233 重課金ボーナス (2)

前回のあらすじ ----------------------------------

いつものように神殿に赴き、お布施を入れて祈りを捧げると、神の声が。

たくさんお布施をしたので、ボーナスが貰えるらしい。

「ところで神様、今回は希望を聞いてくれたりは……?」


『ダメ』

 やっぱ、前回が特別だったか。

 そうそう希望を聞いてられない――

『せっかく作ったのが無駄になるから』

 そっちの理由かよっ!

『さあさあ、好きなのを選んで良いよ。後悔無いようにね!』

 好きなようにと言われても……ダーツ以外は全部、運任せだよなぁ。


 ガラガラは何が入っているのかすら解らないし、スロットも3つ揃えるタイプでは無く、ドラムは1つだけで、窓から見えているのは止まっている部分と前後の3つのみ。


 こちらも『ハーレムルート突入!』、『逆ハールート突入!』、『ざまぁルート突入!』とか、突っ込みどころ満載。


 『ハーレム』にツッコみたいのに、『逆ハー』とか『ざまぁ』が強烈すぎる。

 全然そんな状況、無いよな!?

 俺が突然、学園にでも通い始めない限り。

 運命がねじ曲がるの?

 相手は神様だけに、あり得ないとは言えないのが……。


 紐釣りクジはまだまともな――でも、絶対当たりそうに無い物が混じっているだけで、おかしな物は無い。


 ダーツも的がくるくる回る以上、ほぼ運だが、微妙に自分の行為が介在する余地がある。


 中心、タワシ、だけど!

 大事なことだから繰り返すけど、中心は『タワシ』!

 ボーナスなのに!


「あの、これって本当にコレ?」


『いつもニコニコ、明朗会計。当たった物は確実に履行します』


「タワシでも?」


『タワシでも。でも、良いタワシだよ? 日本の職人の手による高級タワシ――のレプリカ(神製)』


 あぁ、1個1万円以上のタワシってあるらしいね~~って、嬉しくねぇよ。さすがにこの状況で当たっても。


 取りあえず、スロットは無し。

 変に人生ねじ曲がるのは好みじゃない。

 紐釣りには凄いのがあるが、あれは絶対当たらない。

 当たれば履行するとは言っても、当たらなければ意味が無いのだから。

 ガラガラは完全な運。俺が介在する余地は無い。

 自分のミスがあり得ない分、諦めやすい気はするが、何が出るか解らないのが怖い。


「ちなみに神様、お勧めとかあります?」


『引き紐についてはノーコメント。スロットはコモン、アンコモン、レア、スーパーレア、ウルトラスーパーレアの5種類。確率的には全部出るけど、どれが出やすいかは解るよね?』


 解ります。

 レア以上はほぼ確率ゼロなんですね?

 ウルトラスーパーレアなんて、ただの客寄せですよね?


 ……さっきの怪しげな『ルート』がいったいどんなレアリティなのか、微妙に気になる。


『ガラガラはある意味お勧め。あらゆる物が1つずつしか入ってないから。スロットで言うところのコモンもウルトラスーパーレアも同じ確率で出るよ』


 え、マジで?

 なら、ガラガラ1択じゃ――。


『但し、他の3つには入っていない物もたくさん入っているから要注意。ちょっと微妙なスキルとかね』


 はい、消えたー。

 無しです、無し。

 絶対地雷込みですよ、それ。


『ダーツは見ての通り、すごく良い物もあるけど、外れ枠も多いよ。投げさせてあげるけど、やり直しは無し。完全にフェアだよ』


 ダーツは判りやすい。

 貰える物がオープンなのが良いね。

 扇型の幅で確率もおおよそ読めるし。

 タワシがあるけど。

 当たる物もあんまりピーキーなのは無いし――ん?


「あの、神様。あの細い、『パジャマ』の欄は?」


『え? パジャマだけど? お好みのパジャマをプレゼントしてあげるよ?』

 本当にパジャマだった!

 タワシも大概だけど、何でパジャマ!?

『よく解らないよね。あれもタワシと同じ外れ枠なのかな?』

 え――? あっ、それパジャマちゃう! パジェ○じゃん! 車の名前だよ、神様!

 俺の世代だと、リアルタイムでは見たこと無いヤツだよ、それ!


『あれ、そうだった? さすがに自動車はプレゼントできないなぁ、世界観的に。そもそもガソリンスタンドないから、動かせないし』


 うん、俺も貰っても困る。

 ただの置物的な?


 珍しい物なのは間違いないので、場合によっては売れるかもしれないが、もれなく厄介事も引っ付いてきそうである。


『だよね。じゃ、パジャマのままで』


「え? 他の物に変更は?」


『う~ん、良いのが思いつかないので、無しで』


「無し!?」


 酷い。


 かなーり細いから、早々当たらないと思うが……そういうときに限って当たったりするんだよなぁ。


 一応、レベル1ながら【投擲】スキルを覚えたので、タワシにヒットする可能性は無いと思うが、緊張するとつい中心を狙ってしまう可能性も……。


「ちなみに、ダーツ、練習ってありですか?」


『練習? んー、ま、1回なら良いか。どぞ』

 そう聞こえると同時に、スロットやガラガラなどが消え、手の中にダーツが現れる。

 見た目は俺が知っているダーツと全く同じ。


 フライト――羽の部分はプラスチックみたいな素材で、シャフトやバレル、ポイントの部分は金属製。


 ダーツなんて、数回しかやったことないのだが、【投擲】スキルを信じよう。

 今は停止しているルーレットの前に立ち、パジャマを狙って投擲。

 カツン、と音を立ててダーツの矢は狙い通り、パジャマの『パ』を射貫いた。

 思った以上に狙った場所に行く。

 うん、これならタワシ以外の何かしらは当たりそうだ。

『準備良さそうだね。それじゃ、本番行くよ。離れて離れて』


「え?」


 離れて、とか言いつつ、俺は一切動いていないのに、遠ざかっていく的。

 あれあれ? どーゆーこと?


『はっはっは、【投擲】持ちに、そんな距離で投げさせるわけないじゃない。簡単すぎるでしょ?』


 うわぉ、スキルでの確率操作は許さないって?

 そして止まった的までの距離は、10メートルほど。

 これぐらいがスキル無しの場合と同じ確率?

 それとも、ダーツの上手さなども加味されているのだろうか。

『それじゃ、どうぞ!!』

 的がくるくると回り始めると同時に、俺の手の中に先ほどと同じダーツが現れる。


 いや、まぁ、神様が厚意でくれるボーナスだし、このくらいがフェアだというのなら、受け入れるしかないのだが……遠いなぁ……。


 【鷹の目】があるから、見るのには苦労しないが、かなり高速で回っているため、何処に何があるのかはさっぱり解らない。


 判るのは中心に広がるタワシの領域のみ。


「……ま、気楽に行くか。仮にタワシでも、マイナスじゃ無いだけマシ」


『そうそう。女性たちにプレゼントしたら、喜ばれるかもよ?』


「いや、このこと、喋っちゃダメなんじゃ?」


『おっと、そうだった。それじゃ、君たちの中で一番最後に条件を満たした人に伝言しておくよ。もう仲間内なら喋っても大丈夫、って』


 それは地味にありがたいな。

 何かスキルを得ても、それをどうやって得たのか説明ができないのも困るし。


「それじゃ、いきます」


『いっちゃってー』


 神様の軽い言葉に気が抜けそうになりながら、俺は遠くに見える的に向かってダーツを投擲。


 シュッと高速で飛んだダーツは、カツンと音を立てて、狙い通り中心を避けて突き刺さる。


 ――よしっ、タワシは回避!


 それと同時に、ルーレットの回転が緩やかになり、先ほどとは逆に、的がゆっくりとこちらに戻ってくる。


 おっ、パジャマ並みに細い場所。

 何か良い物かな……?


「『ラッキー!』?」


『お、「ラッキー!」、だね』

 これがボーナス?

 ラッキーだから投げられる本数が増える、とかではなくて?

 てか、こんなん、さっきあったっけ?


「えっと、『ラッキー!』ってなんですか?」


『ラッキーはラッキーだよ。ちょっと幸運になるの』


「幸運……」


 この世界、ステータスの能力値には、幸運値があったのだろうか?

 『神はサイコロを振らない』んじゃないのか?

 ――いや、この神様、振りそうだなぁ、サイコロ。

 それにボーナス値が付くのなら、価値はあるかもしれない。


『そうだね、例えば、「膝に矢を受けてしまった!」になるところを、「太股に矢を受けてしまった!」になるとか、雨でずぶ濡れになっても風邪を引かないとか、そんな幸運』


「随分とショボ――いえ、ささやかな幸運ですね?」


 せめて矢に当たらないとか、雨に降られないとか、そのくらいにはならないのだろうか?


 しかもそのレベルの幸運だと、本当に幸運なのかすら解らない気がする。

 矢に当たったら、普通に不運だと思ってしまうし。

『いやいや、こんなささやかな幸運も重要だよ?』

 自分で『ささやか』って言った!?

『具体的には1D100が1D100+1になるぐらいの幸運だよ?』

 また、一部の人にしか解りづらい表現を。


 D100、つまり100面ダイスを振る場合に、1~100の出目が、2~101になるという事である。


 1が出ると、ファンブルで死亡! とかいう状況だと凄くありがたいボーナスだが、神ならざる人の視点では認識できないのが、ちょっと空しい。


「え~っと、まぁ、うん。ありがとうございます?」


『存分に感謝すると良いよ。地味に君の人生を良い物にしてくれる――可能性があるから』


「はい……」


『それじゃ、またね~』

 ボーナスを与えれば用はないとばかりに、あっさりと消えていく神の声。


「え? 『また』? 次があるんですか!? ねえ!」


 だがそんな俺の問いかけに応える声は無く、次の瞬間に俺は、いつものように神殿で立っている自分を認識することになる。


 何の変化も無い自分の身体。


 だが確認したステータスには……恩恵欄に【経験値ちょっぴりアップ】に続いて【ラッキー!】が追加されている。


 ……どっちも字面が酷いな!

 だが今のところ、そんな気持ちをハルカたちと共有することもできない。


 俺は深くため息をつくと、気を取り直し、何事も無かったかのようにいつも通りに帰宅したのだった。

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以下のような作品も書いています。よろしくお願いします。

ファンタジア文庫より書籍化しました
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『図書迷宮と心の魔導書』

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― 新着の感想 ―
[一言] フレンドリーパークかよ!今の子わからんぞwww
[良い点] この神様のノリいいですね、
[気になる点] 1D100なら95〜100がファンブルなのでは? ハウスルールならすみません。(クトゥルフ神話TRPG)
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