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[Web版] 異世界転移、地雷付き。  作者: いつきみずほ
第七章 ダンジョン
257/500

232 重課金ボーナス (1)

前回のあらすじ ----------------------------------

魚をアエラさんにお裾分けに行くと、アイスをご馳走される。

牛乳が余れば安く卸すことを約束し、代わりにいろんな料理のレシピを習う。

『重課金ボーーーナス!』


「……は?」


 そんな脳天気な声が俺の頭の中に響いたのは、毎朝の日課、ランニング途中の神殿参拝のときだった。


 そして、それと同時に視界が白く染まる。


『たくさん課金……もとい、お布施をしてくれたあなたに、特別ボーナスを、進、呈!』


「………」


 俺の戸惑いも他所に、アドヴァストリス様の言葉は続く。

 おっと、流されるだけじゃマズい、言葉を挟まないと!


「あのっ! これって?」


『ん? だから重課金……じゃなかった。たくさんお布施をしてくれた君へのお礼だよ? 君は律儀に、毎回大銀貨を放り込んでくれるし、それ以外にも色々してくれてるからね』


 まぁ、確かに、こちらに来て神殿に納めた金額は、日本で行った寄付の総額を軽く超えている。そもそも普通の高校生だったあの頃とは、経済力が違うし。


「今回も、私だけですか?」


『ううん。今回は重課金だから、たくさん払ってくれた人には全員だよ?』

 ついに『重課金』を言い直さなくなった。


 でも、正確には『重課金』じゃないよな? 別に俺たち、神様から課金されてるわけじゃないし。


『いいのっ! 意味が分かれば問題ないの! 細かいところ、ツッコまない!』

 神様に怒られた。


『あ、そうそう。一定以上……ううん、僕が気に入る以上のお布施を払ってくれた人には、全員に特別ボーナスをあげるけど、これは秘密ね?』


 一定じゃない……ただ単に大金を払えば良いわけじゃないと。

 訪問回数とか? 初回ログインとか言ってたし、ログイン回数的な。

『ノーコメント。でも、このことを教えたら、その人は無しになるから、注意してね』


「それは、パーティーメンバーも?」


『もちろん。でも、全員にチャンスがあるんだから、前回みたいな気遣いは必要ないと思うよ』


 初回ログインボーナスで、パーティーメンバーに効果がある恩恵をもらったことか。

 しかし、間違って漏らしたりしないようにしないと。


 ハルカたちも神殿には来ているし、そのうちボーナスがもらえるはず。それを俺のミスで潰したりしたら……。


『それじゃ、早速――』


「あ、あの! いくつか質問、良いですか?」


『質問? 答えられるかは解らないけど、良いよ』

 ダメ元だったのに、あっさりオーケーされた。


 今度会えたら聞こうとハルカたちと話していた事……あ、聞いてもハルカたちには話せないじゃないか。重課金ボーナスのことを考えたら。


 ――まぁ、知りたい事は各自で聞くか。

 もしくは、全員がボーナスをもらった後で話し合うか。


「まず、何で私たちをこの世界に連れてきたんですか?」


『それは……』


「それは?」


『禁則事項です!』


「…………はい?」


『あれ、違った? 大抵のことは、こう言っておけば誤魔化せるって聞いたんだけど』

 聞いたって、誰にだよっ!

 それは可愛くて巨乳の女の子がやらないと、意味ないんだぞ?

 てか、微妙に古いな!

『酷いなぁ。僕はきっと可愛いよ?』


「いえ、姿、見えないんですが? 声はちょっと少年っぽいですし」


『神の姿は皆の心の中にあるのです。「僕の考えた最強に可愛い女の子」、それを思い浮かべるのです』


 姿を見せてはくれないワケね。

 そもそも最初の転生時、少年の姿だったよね?

 神殿に祭ってある神像は、普通に若い男神だったし。


『僕、別に男神と言った事なんて無いんだけどねー。偶像をあんまり信じちゃダメダメ』


「つまり、アドヴァストリス様は実は女神?」


『さぁ~、どうだろーね?』

 断言するつもりは無いらしい。

 トリックスターか。


 でも、最初に会った時の姿が本当なら、少年っぽい女の子の可能性はあっても、確実に巨乳の女の子ではない。


『ほらほら、もう質問は良いの? あんまり不遜なことを考えてると、質問タイム、打ち切っちゃうよ?』


「あ、すみません! えっと、レベルとステータスの関係が解りにくいんですが」


『あー、レベルと経験値しか確認できないからねぇ。そのへん、ちょっと不親切だったか』


「それに、自分のレベルが解っても、他の冒険者、この世界の人と比べてどうなのかも解りづらいですし」


『う~ん、そのへんは全国模試みたいな物があるわけじゃないし、統計も取られてないから、君たちだけに、というのもねぇ』


 やっぱそのへん、公平なのか。


『多くの人と会って、【看破】を鍛えて、自分で感じてもらうしかないかな? 一応目安を伝えておくと、レベル換算なら千ぐらいまで上げることは、不可能じゃないよ』


「せん!?」


 ――遠すぎ。

 最近はあまり強い敵と戦っていなかったこともあり、俺のレベルは未だ22なのだ。


『もちろん、簡単じゃないけどね~。エルフの寿命が多少長くても、死ぬ気でやらないと無理だよ?』


 それで何とかなるレベルか?

 いやまぁ、俺たちが、かなりのんびりと冒険者をやっていることは否定しないが。


『ステータスの方は……そうだねぇ、レベルが2倍になると、得意な分野――キミなら魔力が2倍になるようなイメージかな? 同じ魔法が2倍使えるようになる、と思えば良いよ』


「それだと、訓練の内容は関係ないんですか? 魔力を頑張って伸ばそうと努力しても、レベルに応じた量にしか?」


『いや、そんな事はないよ。う~ん、なんて言えば良いのかなぁ。ゲームをやる君に解りやすく説明するなら、レベルはステータスの最低保証値? 例えば、ひたすら魔法の練習だけを続ければ、魔力は増やせる。でも、経験値は得られなくなってレベルアップはしない、って感じ?』


 えっと……つまり、極振りでキャラメイクした高レベルって事はあり得ない、と?


 どれだけとんでもない魔法が使えても、もしくは筋力だけが異常にあっても、他を鍛えない限りは低レベルのままなのか。


『それと同様に、雑魚の魔物を斃し続けても経験値は殆ど得られなくなるし、逆に雑魚でも倒し方次第では経験値が得られる。その戦闘で何が得られたか、だね』


 ……なるほど。経験値を溜めたからステータスがアップするわけではなく、ステータスアップの結果が経験値として換算されるというイメージか?


『そうそう。そんな感じ~。強い魔物を倒す事はそれはそれで意味があるけど、いわゆるパワーレベリング的な物はほとんど効果が無いと思って良いよ』


 『ほとんど』ね。


 斃させれば多少は効果があるのか、それとも強敵との戦いを見ること自体が経験になるのか。


 だが、神様はそれに応えること無く話を進める。


『もちろん、人それぞれ傾向があるから、君とトーヤ君が、同じレベルで同じ筋力を持っているってワケじゃない。その人に応じた総合的強さがレベルだと思えば良いよ』


 ステータスの最低保証値は人によって異なり、同じレベルであれば、誰でもすべてのステータスにおいて、一定以上が保証されているわけではない、という事らしい。


 例えば、俺は魔力が100以上なければレベル10にならないが、トーヤは50あればレベル10になれる、みたいに。


『質問は終わりかな?』


「あの、ステータスを数値化して見られるようになったりは……しませんか? HPとかMPとかも」


『……ナオ君、現実を見ようよ? 世の中、簡単に数値で計れるような物じゃないんだよ?』


 ファンタジーな神様に諭されたっ!?


 いや、確かに、人間の耐久値がHPに数値化されるとか、ちょっとおかしいかな? とは思うけれども!


『君の世界で神様がファンタジーでも、こっちの世界ではリアルです。諦めてね?』

 何を!?


「ま、魔力。魔力の方は? MPで消費量が測れたら便利なんですが」


『う~~ん、不可能じゃ無いけど……却下』


「なんで!?」


『君たちが有利すぎるから』


「………」


 ぶれないお人である。

 神だけど。


『頑張って感覚を身につけてね。体調によって結構左右されるから、簡単じゃないけど。使う魔力の最小単位を把握できるようになれば、なんとかなるかも?』


 アドバイスはありがたいが、それが難しいんだよなぁ。


 高度な職人が、触っただけでコンマ1ミリ以下の厚みを把握できるような感じだろうか?


 そこまで技量を高めるのは時間が掛かりそうである。


「それでは、ステータス――能力値の方も?」


『それは……気が向いたら実装するかも? でも、期待しないで』

 ゲームかよ!

 ――ま、運営に希望を出したところで、大抵はダメだよな。

 頑張ったけど無理だったよ、みんな!


『さて、話を戻して。重課金ボーナスだよ。今なら、ダーツ、スロット、ガラガラ、紐釣りクジから選べます!』


 そんな言葉と共に目の前に現れる、各種設備。

 スロットとガラガラは言うまでも無いだろう。

 ダーツはアレ。くるくると回るまとにダーツを投げる奴。


 紐釣りクジは大量の紐がまとめられた中から1本を引っ張り、その先に付いている物が貰えるやつ。


 並んでいる中には『全能力2倍!』とか『全魔法解禁!』とか、凄いと言うか、怪しげと言うか、そんな物も並んでいるのだが……うん、解ってる。アレには繋がってないんだよな?


 この神様が、素直にチートを用意するはずがない。


『ちぇ。ネタバレはダメだよ。せっかく用意したんだから。ほら、縁日でも大人買いしてクジを買い占めるとか嫌われるでしょ?』


「いえ、アレはアレで、詐欺だと思うんですが」


 高いゲーム機をこれ見よがしに掲げ、客寄せするのに、クジを引いても絶対に当たらないという、子供から搾取する酷い仕組みである。


 俺も昔は騙されたものである。


『入ってる、って言ったら詐欺だけど、アレはきっと飾ってるだけなんだよ。クジの値段を考えれば、入ってるかどうかは解るでしょ』


 ……あの頃はそんな事も知らない無垢な子供だったのだ。


「しかし神様、妙に詳しいですね?」


『神様ですから』


 納得の答えである。

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2025年3月5日発売
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異世界転移、地雷付き。 コミック2巻 書影

ComicWalkerにてコミカライズ版が連載中です。


以下のような作品も書いています。よろしくお願いします。

ファンタジア文庫より書籍化しました
『新米錬金師の店舗経営』

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― 新着の感想 ―
[一言] 言うまでもないらしいガラガラが分からぬ……! 調べてもポケモンと赤ちゃんのおもちゃしか出てこないしw もしかして福引きとかで使う回転抽選機のことだろうかと思ったら当たっていたけれど、あれガ…
[一言] 一から百まで教えてもらえないと何もできない馬鹿なガキなの?
2021/02/10 02:16 退会済み
管理
[気になる点] >『入ってる、って言ったら詐欺だけど、アレはきっと飾ってるだけなんだよ。クジの値段を考えれば、入ってるかどうかは解るでしょ』 あれ法律番組でやってましたけど、 入ってないものが棚に飾…
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