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序章

現在進行の物語

一年前

私は、第一志望の高校に合格し、人生初めての届いたばかりのセーラー服に身を包んだ。中学校の制服は冴えない緑のブレザーだった。このセーラー服だってそんなに可愛いデザインでは無い。むしろ地味だ。でも何だかかっこよく見える。スカーフをよく分からないまま通し鏡の前に立つ。あと、何日かで私は高校生になる。何だかワクワクしてた。


そして、入学式当日。

母とともに、これから3年間通うことになる校舎に入る。入学式は大体育館で行われていた。入口にはクラスのメンバーが貼り出されていた。私は2組だった。同じ中学校のメンバーは悪くは無かった。小学校からの幼馴染とはクラスが離れた。そして、各クラスの担任の先生が受付をしていた。2組の担任は年配の女性の先生だった。女性の先生なのが何だか嬉しかった

周りをみれば女子ばかりなのが、ここは中学ではないと自覚させる。ここは、女子校なんだ。つまり高校なんだ。と


そして式が始まり、担任・服担任の紹介がされた。

私は後ろの方だったから先生の顔はよく見えなかった。そしてとあるクラスの副担任が紹介されていた。

「1年○組 副担任の.....先生です」

簡単で古典的な名前が、自分の中の笑いを少しさそった。遠くからみると、意外と雰囲気は悪くないと思った。


入学式を終えると、クラスでは年配の担任の先生が長々と話をして、1日が終わった。


それから何日か経ち、授業が始まった。

私は、この高校レベルの学力を充分に満たしていた。だから、あまり苦労することは無かった。

特に自分の得意教科は社会科で、この学校の中なら誰にも負ける自信が無かったし中学校の時から社会科の授業だけはやる気に満ち溢れていた。歴史なども私的にかなり好きで、届いたばかりの歴史の教科書を眺めていても苦にはならず、むしろワクワクした。この高校は専門高校なので見慣れない専門教科ばかりの毎日にうんざりしかけていた。今日は、自分の大好きな初めての社会科の授業がある。お昼すぐ後の4限目。

私はワクワクしていた。


青春を描く上での必須アイテムとも言えるオーソドックスすぎるチャイムがなる。

その音と共に、ガラガラと教室のドアが開く。

ドアから姿を見せたのは、すらっとした白髪混じりの男性教師だった。その瞬間、教室の空気が緊張を見せた。

誰かが言葉にせずと も

みなそう思ったに違いない。

この先生、怒ったら絶対こわい と。


「起立」

室長の生徒が声を上げる

一連の挨拶を終えると、教室はその教師が醸し出す緊張感に呑まれたように静まり返った。


教師は口を開いた。

「これから、皆さんに1年間社会を教えていく

〇〇と言います。」


とても冷静で低い声だ。

それがまた、怖そうという観念を増幅させる。


「この社会の授業で人の気分を害するような言葉を絶対に言わないでください。

それでは、これからテストします。」

先生は、表情一つ変えずそう私たちに言い放つと小さな紙を淡々と列に配り始めた。

普段なら少しそこでみな私語をするのに、この時はみな無言を貫いた。みな、この先生が怖いと感じているのだ。

中学の頃、社会科が得意教科なこともあり社会の先生とは仲良くしていた。だから、高校の社会の先生とも仲良くしたいななんて思っていた。でも、この社会の先生とはそう出来る自信がでなかった。


先生は紙を配り終わると

「これから、何も見ずに世界地図を描いて下さい」

といった。


私は、絵が得意なこともあり、中学の地理の知識を生かし、地図を描きあげていった。赤道を引き次に本初子午線を引き、そして日付変更線を描く。赤道はヴィクトリア湖を通り、スマトラ島を二分し、そしてエクアドルを突き抜ける。受験前に口酸っぱく教えられたことだ。それをもとにアフリカ大陸とインドネシア、そして南アメリカ大陸を書き上げていく。そして本初子午線が通る当たりにはイギリスを描き....というふうに、描き上げていくと、見事な世界地図が完成した。


「それでは、自分の書いた世界地図を周りの人に見せてあげてください。」と先生はいう。

私は席周辺の少し仲良くなった子達と地図を見せ合いっこした。皆、私の描いた世界地図を見て驚いていた。


先生は、皆のかいた世界地図をみて苦笑を浮かべていた。そして私の世界地図をじっとみつめる。


「すごい。上手いなぁ。こんな上手に描いてある地図は久しぶりにみたぞ。」


先生は低い声でそう言って私に微笑みかけた。


怖いと思ってたせいか、その優しい笑顔が少し嬉しかった。


それと、なんだか、かっこいいなぁ。って思った



先生の授業は独特だったけど凄く新鮮で面白かった。


授業が終わると、

「あの先生やだ。」

「怒ったら絶対やばいよね」

だとか、口々に言っていた。


私は、次の授業が待ち遠しくなった。

この先生と、仲良くなりたいと思った。



次の授業は、早速明日の1限だった。

やっぱり、先生の授業は面白かった。


その日の放課後

部活に行くと、先輩達が何やら会話をしていた。

その会話を聞くと、どうやらあの社会の先生の話だ。


「〇〇先生は、かっこいい」

先輩は言った。

私は思わず「分かります。〇〇先生カッコイイですよね。」と言ってしまった。自分でもなんでこんなこと言ったのかわかんなかった。

先輩が「だよねだよね!」と乗り気でいった。

同じ部活に入った幼馴染は、

「〇〇先生ってなんのひと?」と私に聞いた。

「社会だよ。」私は言った。

「まだ授業やってないわ!あっ丁度明日だ!

楽しみにしとくわァ!」

「イケメンだよ!」


部活帰り、自転車を漕ぎながら私は幼馴染に何故かずっと先生の話をした。


そして次の日の部活になった。

私は真っ先に幼馴染に

「先生どうだった?!」と聞いた。

「普通のおじさんじゃーんw

てか、なんか初回からちょっと怒られたんだけど。

まじ嫌だわあの先生。」

と幼馴染はスマホ片手にそういった。

そして、その日の部活に卒業生の先輩が技術指導のために来られた。

しばらくして、その先輩が私に話しかけてきた。


「ねぇねぇ、社会の先生ってだれ?」と聞かれた。

私は、「〇〇先生です。」と答えた。

「え?!〇〇〇〇(フルネーム)先生?!」

と先輩は顔色をかえ言った。


それから、〇〇先生の話をたくさん聞いた。

先輩が2年生だった時の担任が〇〇先生だったこと。

その時、精神的に病んでいた先輩を〇〇先生は助けたこと。〇〇先生は、どんなに夜遅くなってもしっかり先輩の話を聞いてくれていたこと。


〇〇先生の素晴らしい所をたくさん聞いた。


私は、とてもびっくりした。

最初、怖くて神経質そうだとしか思って無かった〇〇先生がこんなに素晴らしい先生だなんて思いもしなかった。


また、先生のプライベートについても聞いた。

先生には小さい娘がいることなどたくさんの事を聞いた。


正直、先生が結婚していることが衝撃だった。

なんだか、結婚してなさそうな雰囲気だったからだ。

顔とか風体を見てではなく、性格的な面で。


先輩からたくさん〇〇先生の事を聞けてなんだか嬉しかった。そして、〇〇先生を見る目がかなり変わった出来事だった。



そして、次の日

クラスの中で少し仲良くなった子と中学校の話になった。すると、彼女は

「私さ、中学の時先生に恋してたんだよね。」と

言った。

「え?!まじ?!」私は、衝撃を受けた。

彼女は、担任の先生に恋したらしい。

部活で辛かった時話を聞いてくれたこと。

イケメンであること。

その先生は英語担当で、彼女は先生に褒められるため英語を凄く頑張っていたこと。

私は興味津々に聞いた。

そして、私は社会の〇〇先生のことを彼女にいった。

昨日先輩から聞いたことや、私が思っていることすべて話した。

彼女も私の話を真剣に聞いてくれた。

すると彼女は「なんか、中学校の時の私みたい!」

と言った。

私は、「え?ほんとー?」と聞いた。


「〇〇先生に恋したんじゃない?」


彼女は笑いながら私に言った。


私は、冗談交じりに笑い飛ばしたが心中は複雑だった。そして、しっかりと否定することが出来なかった自分が怖かった。先生は先生で、ましてや既婚者で娘もいるのに。そんな人に恋しちゃってどうするの?と。葛藤した。


私と仲良くしてくれる子の中に、〇〇先生が顧問の部活に入ってる子がいた。その子に思い切って〇〇先生のことを聞いてみた。

「〇〇先生めっちゃ怖い。まじで。怖い無理。」と口を揃えていうのだ。

しかし、卒業された先輩が言った先生の素晴らしい行動を聞いたあとでは全く心がゆるがなかった。

この子達は、〇〇先生の怖い面しか見てないんだ。


そう思った。


いつしか私が〇〇先生かっこいいと言っているせいか

社会の授業で先生が教室に入ってくると

「先生きたよ!ほら!」と言ってくる人達が出てきた。先生にバレることだけは避けたかったから、必死にとぼけたり、特定の人にしか先生の事は言わないことにした。


習慣化してきた週数回の社会の授業は、私の中ではかなり面白かった。〇〇先生だからというのもあるかもしれないが、いつも楽しかった。物語口調で展開されていく授業は私の頭の中で留まり、様々な想像を掻き立てた。元々大好きな歴史をもっと好きになれた。



そして、時が経つのは早く、中間テストがやってきた。何だかんだ、先生とは授業で質問される以外の事で喋る機会は無かった。だから、このテストで高得点をとって自分が大好きな歴史の話を先生とできるきっかけを作ろう。と決心した。


元々、社会は大得意だ。

入試の社会満点をとって入った私に勝てる人などそうそういないだろう。その心意気でテスト勉強に望んだ。まず、先生に私を覚えてもらうんだ。


そして、テスト返しがの日がやってきた。

この日は私にとって何よりも重い日だった。

あと30分で、あと20分で、あと、5分で....

歴史の授業が近づいて来る緊張感に耐えられなくなったのか心臓とドクドクと早いビートを刻み、

お腹が緊張独特の痛みに襲われる。


そして、ドアが開き、答案用紙片手に〇〇先生が入ってきた。チャイムが鳴り、挨拶を終える


「今回のテスト、このクラスの最高点は97点」

先生はそう言い終わると一人一人、名前を呼んで短いメッセージをいって返していく。

「....〇〇、〇〇、」

刻一刻と私に近づく。


「〇〇」

先生は私の苗字を呼んだ。

そして、先生の元へゆく。

「〇〇、凄いなぁ。よく頑張った。最高点。」

先生は私に答案用紙を渡した。


答案用紙の右下には綺麗で読みやすい字で

「97」と書かれていた。


点数に納得はしなかったが、

先生の一言が嬉しかった。


先生が、適当に言った言葉さえも嬉しかった。



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