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E's world  作者: 星魅夜えりあ
第一話 心は開く 〜静岡防衛戦線第一幕〜
3/4

咲き誇るは心のちから 1-1

1話です。

一週間定期投稿って言いましたが、嘘です。

ごく。ごく。ごく。うぇ。ごく。ごく。

「ぷぁぁ」

「うぇってなんだ大丈夫か」

「いえ、大丈夫です」

とりあえずリビングとキッチンカウンターのある一階の広間に二人を上げることにした。

そこで差し出した麦茶を少女は一気に飲み干した。

明らかに口内の許容量を超えた量を一気に飲んだせいか、嗚咽交じりの吸飲音だったが。

水分が足りてない感じがすごい伝わってきた。

「ほう。女の子なのにあまり行儀を意識しないのか。君、陸上やらないか」

「どこからその結論に至ったんだお前は」

人様の家の庭でぶっ倒れてるやつに行儀もくそもあるのか。

直人が正人にツッコミを入れるが、そんなことを気にせず彼女は二杯目を自分で注ぎ足し、飲み始めた。

相当暑かったのか。

「ぷぇぁ」

正人が少女の麦茶を飲む姿を見てにへらとだらしなく微笑む。

見ていて少し和むのはやはり少女の持つ魔力だろうか。

なぜかリモコンを持たせたがる正人。

手頃なものを持たせようとするんじゃあないよ。

彼女は麦茶を飲み干したコップを再度テーブルの上におく。

「ふぅ。あ、麦茶ありがとうございます」

少女が人心地ついたようだ。

それを見て直人は立ち上がり、リビングの隅にある引き出しへと向かった。

「おう、とりあえず縛るぞお前」

「はぁ」

「まじかお前!?いきなりSM!?直人お前いつからそんな変態になったんだ!!!」

正人がごちゃごちゃ言ってるが、使用するのはただの結束バンドだ。

直人は引き出しから結束バンドを取り出し、少女の背後へ歩み寄る。

意外にも少女は全く抵抗を見せず、素直に両手の親指同士を拘束された。

「まぁ、別にお前をいたぶろうってわけじゃない」

「そんな小さい子いたぶるって、お前何考えて

うるさかったので正人も縛っといた。


少女は行儀よく正座を突き通している。

いざその姿を見直して見ると、ロシア人形のようだった。

顔立ちは絶妙な部位の配置によってまさに美少女と言える様のそれだった。

両目が青色なのを見る限り、きっと外国の娘なんだろう。

体つきも全体的に丸みを帯びていて、これから成長するという幼い感じが伝わってくる。

直人はそんな少女に問いかけを開始した。

「ひとまず、理由だけ把握したらさっさとお家返してやっから、質問に答えてくれると嬉しい」

「お家・・・、あ、わかりました」

「聞きてえことはいくつかあるが、そうだな。まずはなんでそんな服装してんだ」

「この服しかもってないからですけど」

さも当然のような感じの即答だった。

何か決まりごとでもある家の子供なのか?

「ふむ。まぁいいや。次、なんでうちの敷地内で倒れてた」

「インターホン?とやらを押しても、誰も出てこなかったので」

インターホンを知らない?

インターホンという単語で疑問形にするあたり、もしかしたらあまり他人の家に訪ねたことがないのかもしれない。

直人は続ける。

「それでなぜ庭で倒れる結論に行き着いたんだ」

「いえ、私も最初は倒れていたわけではなかったのですが、窓とやらを割ってこの家の中に侵入しようとしたら意外と硬くてですね」

「いや、どんだけ無礼だよ」

「そうなんですか?」

彼女はあくまで無表情でそう答える。

今思ったけど、この娘ほとんど表情を変えていない。

何か理由があるのだろうか。

横で猿が「クールだね、陸上部へ来ないか」とか馬鹿なこと呟いてるが放っておく。

「なるほど・・・お前、人の家に来るのは初めてだな」

「えーっと、そうですね初めてです」

「うちの家は二人しか住んでない。日中は外出している俺と今は仕事に行ってるやつがもう一人だ」

直人は続ける。

「そりゃあ、家に人がいない時間帯の方が多いから当然留守になりやすくなる。そりゃインターホンにも気づかないわけだよ」

「あ、インターホンって内部と繋がっているんですね」

「そうだ。それで来客を知らせるようになってる。お前がうちにきたタイミングは誰もいなかったから、インターホンが反応しなかったってわけだ」

「なるほど・・・了解です。理解しました」

「まぁそっからガラス割って家に侵入しようとかそんな考え持つんじゃねえぞ。犯罪だからな」

さも当たり前のことを告げた気がするけど、きっと何もかもわかっていないような少女だ。

どんな教育を受けたのかはわからないが、これを機会にいろいろ覚えて欲しいものだ。

ただ、押してダメならぶっ壊せみたいなそういう精神、嫌いではない。

今も今聞いたことを必死に覚えているのか、顔を俯けたままだった。

「んまぁ、わかってくれればいいんだけどよ。とりあえず熱中症になってなくて安心したよ」

「ファンキーだね君。是非」

腹パン。

効果、正人は黙る。

「なるほど、私自身かなり無礼なことをしていたようですね。申し訳ありません」

「いや、まぁ慣れてないんならしかたねえよ。今後同じようなことを起こさずに注意しろよ」

慣れてなくてもガラスは割らないと思うけどな。

「はい。ご忠告ありがとうございます」

指を結束バンドで固定されながらも頭をさげる少女。

割とシュールな光景だったが、やはりどこか可愛らしさが滲み出ていた。

つい俺も微笑えんでしまったから情けない。

「さ、まぁ一番謎だったとこは解けた、わけでもないけど一応あらかた聞きたいことは聞けたよ」

直人も麦茶を飲みながら少女に告げる。

正直一番大事なところはここからだしな。

「んで、用件はなんなんだ」

そう言いながら直人は麦茶の入ったグラスをテーブルの上に置いた。

しかし、直人の予測していた、質問に対する返答とは掛け離れた現実が、彼らを襲うことになる。


刹那、そのコップがすごいスピードで視界を左から右へ吹き飛ぶことを直人は目の当たりにする。

「あ?」

いや、正確には吹き飛んだのではない。

吹き飛ばされた(・・・・・・・)のだ。

一体何に吹き飛ばされた?

理解しがたい現実が直人を襲う。

「速い!?」

少女が何か言っているが、直人の耳には入ってこない。

不思議になっている直人を次に襲ったのは、鼓膜へかなり響く物の割れた音だった。

しかもそれも先ほど飛んだガラス製のコップだけじゃない。

その音源は、窓ガラスからだった。

保護フィルムを貼っている窓ガラスは万が一割れても飛び散りづらくなるという。

鈴木家も、防災の一環としてそのフィルムを貼っている。

しかし、そのガラスが勢いよく割れて、直人に襲いかかろうとしているのだ。

原因は、同時に吹いている事に気付いた謎の爆風によるものだろう。破片と一緒に室内へと遅いかかろうとしていた。

コップが吹き飛んだ原因もそれだ。

「直人!!!!!!!」

正人が反射的にそう叫ぶ。

正人と窓の間の位置にいる直人は、間違いなくその鋭利な破片によってその体にものすごい傷を覆うだろう。

「嘘だろ」

思わずそう呟いてしまった。

直人は状況の整理がつかないまま、ただこの一瞬で大怪我を負うことを確信した。

なぜ急にこんな事態になったのか。

おそらくこの状況を判断できる人はそういないだろう。

見慣れていた窓が、自分を傷つけるものに変わる。


次の瞬間、鈴木家のリビングは、いつも見慣れている風景ではなくなる。

飛んでくるガラスの破片、吹き込む爆風、荒れる室内。

あらかた大惨事になる予想はつく。

しかしこの意味不明な状況を最もよく表しているのは、そんな物理的な現象ではなかった。



「伏せてください!」



そう叫んだ彼女の手腕が、結束バンドの拘束を無理やり抜け出し、想像できないほどにどす黒くなり、想像できないほどに大きくなったことだろう。



一瞬にしてその掌は、二人の少年を守るように、壁のような形で窓ガラスから少年達を阻んだ。

バリン!バリン!と、その掌にいろいろなものが激突しては壊れる音が感知できた。

「!?」

直人はその掌に守られて、ようやく自分が身を守るような体勢でしゃがんでいることに気づく。

自分に襲いかかるはずのガラスを見て、体の反射が動いたんだろう。

しかし、その予測は裏切られた。

「・・・一体何がどうなってやがんだ」

五秒ほどで、爆風とともにその一連の現象は収まる。

彼女はそれと同時にありえないほどの速さで手腕を収縮させていった。

元に戻ったそれには一切の傷がなく、色も元通り、透き通るほどの肌の白さに戻っていた。

ここまでで約三十秒。

全く理解しがたいことが起こっていた。

開放的になった窓からは、いつも通り田んぼと、その周りに乱雑に建つ民家がいくつか見えた。

しかし、どれもいつもの光景のものばかりだ。

直人はミサイルか爆弾でも近くに落ちたんじゃないかと思ったのだが、どうやらそんな非現実的なことではないらしい。

正人は口を開けたまま、気絶している。

全く状況が読めない。

今の文字通り一瞬で何が起こってこうなるのか。

数々の記憶の引き出しを開けてもそれらしい答えを直人はついに導けなかった。

つまり、これは直人の知らない現象だ。

「直人さん、でしたっけ。先ほどの話の続きは、また後にしたいのですがいいですか」

少女は窓の外に視線を向け、謎の構えを取る。


「今は私と、ともに来てください」


その次の瞬間、少女は窓から外へとびだした。

いつの間にか、先ほど履いていたパンプスを再度履き直して。

「・・・は?」


くまさんパンツの、謎の女の子に導かれて。

意味のわからないまま、行動は開始する。

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