↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
67/186

姫様と内緒のお話

〔何してんだ!〕

〔邪魔しないで〕

 返事は即座に来た。俺は言い返す。

〔山藤には関係ないだろ〕

 こいつを現実世界に返すか返さないか、それが俺たちの勝負だったはずだ。だが、沙羅がやったことは明らかに目的が違う。

〔テヒブを探さないと〕

 これが目の前にいる相手だったら、一発ひっぱたいて正気に戻すところだ。やったことはないが。

〔それやったら山藤こっちに残んのかよ〕

 メッセージで反論して気がついた。

 ……何で俺が対戦相手の心配しなくちゃならんのだ。

 沙羅が勝負とは別方向に気をそらせば、シャント…山藤のやることにご都合主義的サポートはできなくなる。

 今、こいつにはヴォクス男爵という強敵が立ちはだかっている。更には、リューナも何かの拍子に暴れ出すらしい。おまけに、協力な助っ人だったテヒブは行方が知れない。

 ……ハードル設定いらんだろ、もう。

 このまま行けば、俺は何もしなくていいんじゃないかという気がした。せいぜい苦労して、吸血鬼ヴォクス男爵を倒せばいい。そこで現実世界に帰るかどうか聞かれれば、一も二もなく「Yes」と答えるだろう。

 それでも一応、どのくらい苦労しそうかは見ておいたほうがいい。

 沙羅から返信が来る前に、ちょっとステータスを確認してみた。


 Hit Point(生命力)…5

 |Mental Power《精神力》…4

 Phisycal(身体)… 4

 Smart(賢さ)…8

 Tough(頑丈さ)…5

 Nimble(身軽さ)…7

 Attractive(格好よさ)…4

 Patient(辛抱強さ)…3


 山藤のことだからMAXはそう高くないはずだ。簡単に吸血鬼退治はできないだろう。むしろ、沙羅にちょっとは介入してほしいくらいだ。

 だが、俺は次のパラメータを見たとき、シャント…山藤の変化に気付いた。


 Class(階級)… |Successor of Warrior (戦士を継ぐ者)

 Items(所持品)… |Commoner’s Cloth(平民の衣服)

 Weapons(武器)… |Pole Weapon(長柄の武器)

 Cash(所持金)…0

 

 ポール・ウェポン。

 ……戦士として、武器らしい武器を持ったってことか。

 こいつはもう、ネトゲ廃人じゃないのかもしれない。確かに身体は貧弱で、体力もない。頭も悪い。だが、リューナを守るために必死で戦っている。それは認めてやってもいいんじゃないかという気もする。

 そんなことを考えていると、沙羅からメッセージが入った。

〔残るんじゃない? 面倒なことは全部テヒブにやってもらえばいいんだし〕

 案外、冷静な答えが返ってきた。高ぶった感情も、文字を打ち込んでいるうちに落ち付いてきたのだろう。

 ……そう来るか。

 俺は何だかほっとして、返事を送った。

〔じゃあ、勝手に探せ〕

〔あ、そういう言い方ないんじゃない?〕

 軽い返信に、気が楽になった。立ち直ったみたいだ。

 俺は調子に乗って悪態をついた。

〔俺は全然困らんからな〕

 即座に、更なる悪態が返ってくる。

〔バカと怠け者はどこでも嫌われるからね〕

 さすがにカチンと来た。そこまで言われる筋合いはない。だいたい、もっとふさわしい奴がいる。

〔それは山藤のことだろが〕

〔八十島君よりよっぽどマシ〕

 結構、プライドは傷ついた。いくらなんでも、山藤より下ってことはない。 

 だが、よく考えたら先に引き合いに出してディスったのは俺だった。沙羅に何を言われようと文句も言えない。

〔分かった。たっぷり泣かせてやるから見てろ〕

 もともとそうするのが俺の立場だ。クラス全員転生なんていうデタラメな非日常を許しておけずに乗った勝負だった。

 だが、この時ばかりはちょっと私情が入っていた。

 そりゃ、山藤にしては頑張った方だと思う。だが、沙羅がその肩を持つというのが気にくわなかった。

 それを見抜いたかのように、沙羅は余計に挑発してきた。 

〔大丈夫、私の山藤クンならちゃんとやるから〕

 ……クン? や・ま・ふ・じ・クン?

 ……誰のだって? 私の? 

 全く面白くなかった。冗談でも面白くなかった。

 リューナとキスして、沙羅からもこんなこと言われるなんて!

 山藤のくせに、と思うと許せなかった。

 男のジェラシーだというのは自覚していたが、嫌味のひとつも言ってやらないと気が済まない。 

〔お前、ああいうのが趣味なワケ?〕

 いくらなんでも否定するだろうと思っていたが、沙羅もまた嫌味たっぷりに返してきた。

〔だって、八十島君よりずううううううっとマシだもの〕

 きりがないし、面白くもないので、俺は山藤の様子をモニターすることにした。バカで怠け者と言われてしまった以上、現代世界に戻るとしても、その前に何かやっておかないと格好がつかなかった。

 まあ、何かにつけていびってやろうという下心はあったが。

 スマホの向こうの異世界では、リューナが村長のもとへ戻っていた。驚いたのは、自ら十字架のある部屋へ向かったことだ。

 シャント…山藤はというと、ポール・ウェポンを抱えたまま、廊下の壁にもたれて眠った。

 2人とも、確かに成長していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。