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ネトゲ廃人をこんなふうに誘導してみました

 俺はひとりの男の頭にマーカーを置いて、シャント…山藤に押しのけられたふりをした。本当は、テヒブを助けろと突き飛ばしたかったのだ。だが、プレイヤーに自分たちの意思を強制しないというのは沙羅との取り決めだった。他のモブにやらせるしかない。

 狙い通り、怒りに駆られたひとりの男がシャントを、別の数名の中へと放り込んだ。村の男たちに囲まれたシャント…山藤はさっさと逃げ出した。

 ……根性なし!

 もっとも、男たちを投げ飛ばすぐらい、テヒブにはわけもなかった。ひとり、またひとりと、遥かに身体の大きな男たちが地面に叩きつけられていく。別にシャント…山藤はいなくても困らない。

 肝心なのは、山藤がシャントとして行動を起こすことだった。生き残った上で現実世界に戻る選択をさせるには、自分から痛い思いをさせるしかない。

 俺がマーカーを置いた村の男は、シャントを突き飛ばした後、テヒブに襲い掛かることもなく突っ立っている。他の男から罵声が飛んだ。

《何やってんだ!》

 怪しまれてもまずい。かといって、テヒブを殴るのに手を貸すつもりもなかった。家のほうを見ると、中からドアを開けたまま、外を覗いているシャントの姿が見えた。

 ……出て来い、山藤!

 そばにリューナもいたが、山藤…シャントに、ここでいいとこ見せようという気はないらしい。

 ……それでも男かよ!

《どけ!》

 俺が動かすモブが、足下に転がった男が立ち上がる拍子に、押しのけられて倒れた。男は、その辺りに転がっていた棒を拾う。シャント…山藤が持っていた方の棒だった。

 スマホの画面に指を滑らせて、モブの周りの視界を広げてみた。棒は長い方がもう一本あったはずだったが、悪いことにはもう拾われていた。

 ……連れ戻すしかない。

 俺はモブを、家の中に向かって動かした。できることならシャント…山藤を引っ捕まえて、何としてでも引き戻したかったが、そんなわけにもいかない。

 ……何を使えばいいんだ? 

 あくまでも、自分で選ばせる。これは、沙羅との間で取り決めたルールだ。

 ……答えは、きっとある。いや、見つけてみせる!

 ルールが破られれば、沙羅はこのゲームから降りる。クラスの連中を異世界から連れ戻すのは俺だけの仕事になるが、それは故郷とのつながりを沙羅から奪うということだ。俺は沙羅の下僕になるより、もっと恥ずかしい思いをして生きることになる。それは平穏でも平凡でも何でもない生活だ。

 家に入り込むと、シャント…山藤はリューナを2階へかくまおうとした。

《リューナ……!》

 シャントが指さした方向を、リューナも指差す。

《私、上へ!》

 階段を駆け上がる少女を見守るシャントを、俺はモブの両手を挙げて追い詰めた。

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