どこにいるのか
とある街、ディカルート
ここでは市場がとてもにぎわっていた。
いるのは人間だけではない、体系は人間のようだが、体には毛がびっしりはえていて、顔は犬や猫、ウサギなど種類は様々で獣人と呼ばれる者、ローブをまとい三角の帽子を頭にのせている魔法を使える者、剣やいろんな武器を装備し歩いているものなど様々だ。
その中を歩いている一匹の白い狼がいた。
「やぁシロッ、何か買いに来たのか?」
商人が狼に話しかける。
「まぁな」
そういって目的のものを探す。
「あいつ最近愛想が悪いな…」
「確かに…、何でも最近探していた人が見つかったとかで、機嫌がよかったのにどうしちまったんだろうか」
「ほんとどうしたんだろうねぇ…」
「リンゴを一つとロコベリーを五つ」
「おお、シロかいっ全部で5銅貨だよ」
商品を受け取り、銀貨を一枚渡して帰っていくシロの後姿に声をかけようとした商人だったが、何か重い空気を感じ、もらえるものはもらっておこうと声はかけなかった。
「はぁ…」
商店街から少し離れたところにある、大き過ぎないが立派なお屋敷の前で足を止める。
ここが私の家。
簡単な呪文を唱えると門が開いた。
同時に人の姿に変身する。
手にはさっき買った、リンゴとロコベリーが入っている袋を持っている。
「おかえりなさい」
屋敷の扉があき、声がする。
身長は160センチほどで髪は短く金髪。口数は決して少なくはない。
名前はカナという。
一か月ほど前に拾った人間の女の子。
異世界から来たという話をうわさで聞き、急いで迎えに行ったのだ。
俺は昔、自分の前世の記憶を見た。
異世界から来た少女、その人に仕え一生を共にする。
そんな簡単な情報だが、いつかは俺の前にも現れてくれると信じて…
だから迎えに行ったのだ。
はじめはこの人が自分の仕えるべきかたと思ったが違った。
どうして違うと思ったのか、それは俺が持っているネックレスが反応しなかったからだ。
このネックレスは目が覚めた時に首にかかっていたもの。
水色がかって見える小さめの宝石がついていて魔力が込められている。
これが反応しなかったということは、つまりそういうことだ。
俺はもはやカナには何の興味もわかない。
だが、行く当てもないということから住むことを許している。
どうしたの?と見つめてくる人間、
はぁ…自分の身の程をわきまえろ
少しにらむとカナは屋敷の中に逃げるように入っていった。
「やけにあれてんなー」
声がしたほうを見ると、一緒に住んでいるトキがあくびをしながら歩いてきていた。
「うるさいよ」
「連れてきたのはシロだろー?あんな態度じゃ後ろから刺されてもしらねーよ」
ははっと笑うトキ。
トキはタカのような獣人だ。
3年前に出会って一緒に暮らすことになった。
「その冗談は笑えない」
「はいはい、じゃあ、街にでも行って情報ないか探してくるわっ」
バサッと翼を広げ、飛んで行った。
さて、買ってきたものをしまわなくては…
あぁ、あなた様はどこにいらっしゃるのか
空を見た。どこかにいてくださることを祈って…