椅子で眠る
一番奥の丈夫そうな扉の前で男は止まり、ノックをする。
と中から、入れ、と声が聞こえてきた。
「失礼します。カイキさんこの女、どうですか」
するとカーテンの奥から一人の男の人が出てきた。
歳は28ぐらいで若い、身長も高く髪は片方が刈り上げられている。
たれ眼なのに威圧感のある瞳をしている。
「悪くない…そいつは俺がもらう。これを持っていけ」
そういって男のほうに、何かを包んだ袋を投げた。地面に着いたときチャリッと音が鳴ったところを考えると金だろう。
金を拾った男は満足そうに部屋から出て行った。
「おい、どこから来た」
二人きりになって少しした後、カイキという男が話しかけてきた。
どこからというのはどういうことなのか
「東京」
私が答えると、そんな村あったか?と考えるようなそぶりを見せしばらくの間、品定めでもするかのように見つめてくる。
フッと鼻で笑い、一歩近づくと私の手をつかんだ。
「お前、名前は」
「…セイ」
「そうか、これはいい拾いもんをした。お前は異界から来た人間だな?」
「異界?」
「あぁ、この世界にトウキョウなんで場所はない。俺の手下どもが行く場所は把握しているからな。それに、別の街でお前のような者がいたという話を聞いたことがある…そいつがどうなったのかは知らないがな」
あぁ、なるほど
ここは私が元居た世界と違うところ
「…やった」
「ん?何か言ったか?」
今までに感じたことのないような嬉しさがこみあげてくる。
なるべく表情には出さないようにした
「なにもない」
なんだこの女、ここが自分の世界ではないと知っても表情を変えない。むしろ少し喜んでいる?
正直、はじめ見たときは驚いた。
こんな女がいるのかと、すべてが完ぺきだった。
色白で、細く、黒いきれいな髪が腰のあたりまで伸びている。
歳は20ぐらいか、それ以下か…
瞳はきれいな淡いブルー。誰もが目を奪われてもおかしくはない。
そんな女…確か名前はセイだったか、が俺のもとに来たのだ。神に感謝しなくてはな。
「そこの椅子で今日は寝ろ、明日寝るところを用意してやる」
「わかった」
今日はもう遅い、さすがに眠くなってきた。
椅子に座ったらすぐに眠ってしまった。