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メンヘラホームレス  作者: 鈴木タオル
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■第3話あいことの出会い■

あいことの出会いのお話です。

 気付いたときにはもうあいこは目の前に座っていた。

 「バンドをやっているんだ、サンプルのCDを作ったんだ、これ無料で配りたいんだよ、君の大学で明日配る予定なんだけど、手伝ってくれないかな?」

 そして、気付いたときには彼女を誘っていた、サンプルのCDをバンドのみんなで作ったのは本当だったが、それを明日配るつもりなんてなかった。たくさんの人に配りたいとは思っていたが、あいこの通う大学で配る予定なんてなかった。その場の思い付きだった、今思うと、とにかく彼女と何かをやりたかったのだろう、何をしゃべっているのか自分でもよくわからなかった。こんな経験、女の子を何かに誘うなんて初めてだった。口から先に動いていていた、その時何を考えていたのかよく覚えていない。とにかく必死さだけは伝わったのだろう、彼女はOKをだしてくれた。

 

 次の日、僕とあいこは大学で会った。彼女を誘ったあの後、電話番号とメールアドレスを交換したのだ。その時は興奮していて何がなんだかわからなかったが、家に帰って落ち着いた頃メールを送った。そして、やりとりして待ち合わせを決めた。彼女の大学は以前1度だけ来たことがあった。短期の派遣アルバイトで来たのである。パソコンにインターネットに繋げる為に必要な、カード型のデバイスを声を出して宣伝し、興味のある生徒に説明し契約するという仕事だ。wi-fiがある今だと古いものだが、当時ノートパソコンを外でネットに繋げたい場合は必要なものだった。当時はカフェなどに行っても無料でwi-fiなどは繋げないし、契約すればどこでもネットに繋げられる便利なものだったので、そこそこ契約する生徒はいた。そういうちょっとした思い出がある大学だった。家から自転車を漕いで5分やそこらの距離だった。

 

 10枚だったか20枚だったか、その日用意したもの、バンドの曲が3曲入ったCD-Rはすぐに配り終わった。無料で配ったが、無料で作れるものではない。1枚に換算すると安いがそれでもお金がかかっている。フリーターのバンドに用意できる枚数は限られたものだった。たかだか20枚程度だったが、配り終えてやりきった感があった。終わった後近くのファミレスに彼女を連れて行った。

 パスタを食べながら色々なことを話した。彼女はジブリが好きだと言う。彼女の父はおもちゃを作る会社に勤めている、家にはたくさんのDVDがあると言った。僕もジブリが好きだった。僕の部屋で一緒に見ようよ、と誘った。彼女はOKを出してくれた。3日後、部屋に遊びにいくね、と言ってくれた。

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