■第11話二人きりの夜■
一緒に部屋で過ごし、夜が訪れた。
雨も止み、静かな夜だった。
狭い部屋に二人きり。真っ暗な部屋で布団の中にいた。隣にはえりこが寝ていた。
一緒の部屋にいて、数時間経っていたのでだんだん緊張も取れていたのだが、また緊張してきた。心臓がバクバク鳴っている。背中に当たった柔らかい感触を思い出していた。今考えると「寝れる?」とか「暑くない?」とか声を掛けておけば良かったなと思う。一人でテンパっていた。横を見るとえりこがキレイに正面を向いて仰向けで寝ていた。心臓がまたバクバク鳴った。
えりこは左側で寝ていたんだが、近い方の右手を見てみた。布団から出て手のひらが上を向いていた。
次の瞬間には僕はもうその手を掴んでいた。えりこは優しく反応していたと思うが、もうそこからあまり記憶にはない。えりこは女性にしては背が高い子だったのだが、指もけっこう長かった。
どれくらい手を、指を触っていただろうか。自分の中の何かが弾けてしまった。手を触っていたその手でえりこを抱きしめたいと思った。抱きしめようと身体を少し動かし、えりこの方に手をやった。えりこの右側の骨盤の方を触った。
…
…
…
ふと気がついた。
部屋が明るくなっていた。
信じていただけないと思うが、実際にそうだったのだ。えりこの腰の辺りを触ってそのまま眠ってしまっていたのだ。こうして思い出しながら文章を書いている自分もウソのような話だなと思う。しかし、事実は事実。気がつけばもう朝だった。あいことは出会って数日でセックスをした。しかも童貞だったのである。何故眠ってしまったのだろうか。すごく緊張していて、心臓もバクバク鳴っていたのに。未だに謎である。
布団の上で朝だと気がついて横を見るとえりこも起きたような様子だった。眠れたのだろうか。ずっと起きていたのだろうか。少し早く起きて様子を伺っていたのだろうか。取り敢えず起きて。「おはよう。」と声を掛けた。
起きて少しして、朝ごはんを食べた。昨日コンビニで買ったおにぎりだ。えりこも僕も朝ごはんはちゃんと買っていた。えりこがおにぎりを食べて
「あ、これあんまり美味しくない。」
と言った。
「じゃあそれちょうだい。」
と言って、おにぎりをもらった。おにぎりで両手が塞がった。