短編9(双子・妹→兄)
シスコン、ブラコンな話ではありません。
どっちかっていうと近親相姦寄りです。ご注意ください。
許せない。
許したくなんて、ない。
愛する双子の兄。
生まれる前から一緒だった双子の兄。
いつだって一緒だった。
どこにいくのだって一緒だった。
何をするのだって。
でも、気づいてしまった。
私は私。あなたはあなた。決して同じじゃない。ひとつの命じゃない。
一緒に同じことをしていたのに、いつしか一緒に同じことができなくなった。
私にはできないのに、あなたにはできた。
あなたにはできないのに、私にはできた。
あなたは笑う。無邪気に凄いと笑う。
私は笑えない。無邪気に凄いなんて笑えない。
あなたが誰よりも大切で。
あなたを誰よりも愛していて。
あなたを誰よりも憎んだ。
世界に私とあなた、たった二人ならよかったのに。
世界に私とあなた、たった二人なら。
あなたは世界を広げる。
私の世界はあなただけ。
あなたはどんどん私から離れていく。
大切な妹だと笑うくせに。
大切な半身だと笑うくせに。
あなたは私を見なくなる。
あなたは私を想わなくなる。
許せない。
許したくなんて、ない。
あなたじゃない人の腕の中で笑う。
あなたじゃない人の口づけに酔う。
あなたじゃない人のぬくもりに溺れて。
そのたびにあなたは私を見る。
男を渡り歩く私に、自分を大切にしろと憤る。
憤って、哀しんで。けれど見える奥底の感情。
もっと、もっと憤ればいい。
もっと、もっと憤ればいい。
大切な双子の兄。
愛しい愛しい双子の兄。
世界を広げて、たくさんの人を心に住まわせて。
けれど、ねえ。ねえ、兄さん?
はやく、はやくはやく、
あなたの目に宿る憎悪の刃が、私を抱く男に突き刺さっていることに気づいてしまえばいいのに。