婚約破棄されました。そしたらクーデターが起きました(当然ですよね?)
連載中の小説の息抜きに書きました。
サラッとお読み頂ければと思います。
私はシオン・ファーミシル公爵令嬢だ。
この国の王太子の婚約者候補である。
口調が男っぽいのは私が軍を率いる『将軍』の位を預かる立場だからだ。
約10年前、隣国の突然の侵攻により、我がセリオン王国は王都近くまで侵攻された。
それを退けたのが、反対側に位置して国境を守っていた我がファーミシル公爵家だった。
私も幼いながらも『魔導兵』として参加して戦果を上げた。わずか8歳の時だった。
それから国王がお礼にと第一王子の婚約を打診してきたのだ。我が武力を取り込むつもりなのはバレバレだった。
両親が悩む中、私の意見も聞きたいと、とりあえず顔合わせに王城に向かうと───
出会いは最悪だった。
まず、教育を間違えただろう?と言うくらい周囲に威張り散らすしか能のないクソガキでした。
国王と王妃が気を遣って我が公爵家を遇しているのに、一人だけ俺が偉い!などとのたまっていました。
「おい、国王陛下よ?これはどんな罰ゲームなのだ?」
温厚なお父様も流石に顔に血管を浮かべて怒りを抑えています。
「す、すまない!愚息にはよく言って聞かせる!取り合えず婚約者候補にだけでも名前を載せてもらえないだろうか!」
国王様は土下座する勢いで頭を下げました。
この国王様は優しいので平和な時代では賢王と呼ばれるでしょうが、戦乱時はここぞと言うところで物事を決めることができない優柔不断なお方なんですよね。
「はぁ~、取り合えずこのクソガキの再教育をお願い致しますよ?」
こうして、婚約者『候補』として関係を結ぶことになったのです。
王妃教育は長い時間がかかるため、病気などで倒れた時のために、だいたい3人ほど候補を選んで育てるのです。そして成人して3人の中の一人が選ばれると、残りの二人は、側室になるか、王家が良縁を選んで高位貴族や他国に嫁がせるのです。
そして、約10年が経ち私達は学園を卒業して3人の中から誰かが王太子妃に選ばれる時期になった。
しかし問題が発生した。
あのクソガキ・・・王太子の性格の矯正が失敗したのだ。
あの選民意識の高いまま大人になれば想像がつくだろう?
私を含めてあの王太子と結婚したくないと、3人の候補達は辞退を願ったが、国の裏の情報も勉強している者をおいそれと野に放つわけにはいかず、ズルズルと時間だけが過ぎていった。その間に、たびたび隣国と小競り合いが発生して多くの兵士が亡くなった。私は王妃教育の他に軍の勉強もして、反対側の領地を任されてすぐに援軍に駆け付けることのできない両親に代わって隣国の侵攻を止めようと武術や魔法を頑張って学んだ。
そして親のコネを使って、一部隊を任されたので、その部隊と共に戦果を上げたのでした。
(こういう時こそ使わないとね!)
そしてスピード出世して将軍の地位についたと言うわけです。
私なら武力でバカ王子を止められるので、不本意ではあるが、私が筆頭の婚約者候補となって残りの2人を守ることになったのです。
「カルラ様、シオン様の新しい功績を聞きまして?」
「ええ、リーネ様、先ほど聞きましたわ!」
カルラとリーネが婚約者候補の二人である。
そして、シオンの大のファンである。
二人は武力はないが、諜報活動に才能があり、暗殺者からシオンを陰ながらに守っているのである。
バカ王子の妃になりたくはないが、シオンが王妃となれば、側室としてシオンを裏から守ると同盟を組んでいる。
あわよくば、一緒にチョメチョメできるかもと不埒なことを考えていたりもする。
ブルッ
『なんだか悪寒が・・・』
と、そんなこんなとありまして、学園の卒業式です。
学園を卒業したら各自が正式な貴族の仲間入りと大人の仲間と言う訳です。
学園の卒業パーティーは特別に王城で開かれます。
まぁ、最初の社交界の練習も兼ねています。
そして、パーティーが始まって少しすると───
「聞け!この俺、バーカ・セリオンは、シオン・ファーミシル公爵令嬢との婚約を破棄し、ここにいるビッチ・ボイン男爵令嬢と新たに婚約する事を宣言する」
!?
『あ、このローストビーフ美味しい』
もぐもぐと、シオンは演劇をみているかのように達観して見ていた。
「何をしている!シオン!早く前に出てこないか!」
えっ?
ここで見てるだけじゃダメなの?
コソッ
「シオン様、我々も御一緒いたしますわ」
同じ婚約者『候補』のカルラとリーネも着いてきてくれました。
「来ましたよ。バカ殿下。それで私になんの用でしょうか?」
「また俺をバカにしやがって!いつもお前はそうだ!俺を敬うという事を知らん!我慢の限界だった!」
「はぁ………」
「それで、貴様との婚約を破棄して、男を持ち上げるのが上手いビッチ令嬢を新たな婚約にするのだ」
「こいつ頭大丈夫か?」
「なんだと!」
あ、口に出してしまった。
「大丈夫です。ここにいるみんなが思っておりますので」
バカ殿下は周囲を見渡して冷たい視線に気付いた。
「貴様、俺を誰だと思っている!全員不敬罪で捕まえることもできるのだぞ!」
更に嗤いの口角が上がった。
「はぁ、バカ殿下に訂正があるのでよろしいでしょうか?」
「訂正だと?」
「はい、まず私は婚約者『候補』であり、正式な婚約者ではありません。そして、婚約者候補は後二人おられます。こちらにいるカルラ様とリーネ様です」
!?
「なんだと!?」
なんだと?じゃねーよ!
なんでそんなに驚いているんだよ?
国王陛下ー!こいつ何にもわかってないじゃないか!こっちがなんだと!?だよ!
「婚約破棄ですか。前々から何度も打診してはダメと言われてうんざりしておりましたが、バカ殿下から仰るのなら喜んで破棄させて頂きますわ」
「私も婚約破棄、大変嬉しく思います。初めてバカ殿下に感謝申し上げますわ」
二人は扇で口元を隠しながら透き通る声で皆さんに聞こえる様に言いました。
「それで、そこのビッチ様はよろしいのですか?」
「な、なにがよ?」
流石のビッチさんも形勢が悪いと薄々気付き始めたわね。
「我々は約10年掛けて王宮のマナーや勉強を修めました。貴方は何年掛かるのでしょうね?王妃とは国の顔。もし他国の王族や使節団の前で失態を犯せば、それはセリオン王国の失態。王妃と言えども処刑や生涯幽閉もあり得ましてよ?」
ゾッ!?
「わ、私はバカ殿下に贅沢な暮らしができるからと言われただけで………そんなの聞いていないわ!」
ビッチさんはものすごい速さで逃げていきました。
それと皆さん突っ込まないのですがお名前はバーカ王子ですからね?
ビッチさんが逃げ出して呆然としているバカ殿下でしたが、その時逆に方向にあった扉がバンッと開かれました。
「ハァハァ、このバカ息子がーーーー!!!!!」
ドシドシと走ってきた国王様がバカ殿下を殴り倒しました。
「グハッ!何をするんだ!?」
「貴様こそ!何を仕出かしたかわかっているのか!」
いつも温厚な国王様の剣幕にバカ殿下もビビって立ち上がれません。
「国王様、殿下は我々三人が婚約候補であることも知りませんでした。そう言う教育をされていたのですか?」
「本当にすまなかった。最近になってわかった事だが、バカ息子は教育係を買収して、勉強は捗っていると嘘の報告をさせていたようなのだ」
ああ、そう言うことでしたが。悪知恵だけは働くのですから。
「いいか!よく聞け!この三人は北、西、東に位置する国防の要である大貴族の御令嬢だ。もし不当に扱ってみろ!どうなるかわかるか!?」
バカ殿下は???とわかりませんでした。
(笑)
「バカクソカス息子よ。もし不当に扱ったら、隣国と手を結んで我が国に攻める事もできると言う事だ。そうなれば王都は落ちてワシも貴様も処刑される運命と言うことだ!」
「なっ!?」
「当たり前だ!仕える王家が身を挺して国を守ってくれている者を守らずに、不当に扱えば命を賭けて守る意味がなかろうが!」
ようやく事態を飲み込めたのか、バカ殿下は真っ青になりました。
「国王様、残念ながら少し遅かったかと」
「だろうな。ワシにはこのバカ息子しか子供がおらん。それにこの戦乱の時代にワシでは国を支えられん。ちょうど潮時じゃった」
その後、私達の三家の軍が王家を包囲したと言う知らせが届いたのは少ししてからでした。
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それから話し合いの後、ファーミシル公爵家が新たな宗主として王座に着いた。
前国王様がある程度準備を整えてくれていたのです。前もって殿下を廃嫡して玉座を譲るつもりだったのでしょう。
二人は隠居して王都の隅で暮らしました。
バカ殿下は去勢され、監視付きで、孤児院で働かせられる事になりました。その腐った根性を叩き直す感じです。
速やかに統治体制が整ったので、他国に付け入られる事なく新体制が築くことができました。
そして他国の侵攻に迅速に対応できる体制を作り上げることができたのです。
そして、カルラとリーネ様は女王となったシオンの側近として側仕えしてくれた。
「ハァハァ、役得ですわ♪」
「湯浴みのお手伝いとか、着替えの手伝いとか、鼻血がでそう………」
クールビューティな女性軍人気質のシオン女王は変態友人に気付かずに今日も民の為に働くのでした。
「ねぇ、そろそろ王配を──」
「シオン女王様は気にしないで下さい」
「我々がキチンと精査しておりますので」
(シオン様の貞操は我々が守る!)
セリオン王国の未来は大丈夫だろうか?




