【R15】後世から見た真相:婚約者は幼馴染しか目に入らないようなので、婚約破棄された私は貴賤結婚に配慮してあげることにした
「何故、レイチェルを差し出した?!」
「どうして、あなたにそれを責められなければいけないの? 私は王女で、あの子は男爵令嬢。身分が低いあの子が私を守るのは、当然のことでしょう?」
「レイチェルはお前のせいで部屋から出て来ないんだぞ!!」
「だから、どうして、あなたが男爵令嬢如きのことで、私を怒鳴り付けているのか、わからないのだけど。あの子は死んでもいなければ、手足も失っていないのでしょう? それなのに、何故、そのように怒るの?」
「死んでないから良い、じゃない! 手足を失っていないから良い、じゃない! 身体に傷跡が残っていなくても、心が傷付いていることはあるんだ!」
「はあ~。これだから、リリエット家の者に政略結婚は無理だったのよ。婚約者の無事を喜ぶより、幼馴染の心配? 王女が政略結婚に使えるかどうかより、国同士の政略結婚に使えない男爵令嬢の心配? リリエット家の者は身分というのを、理解していないようね」
「なんだと?! 僕どころか、我が家を馬鹿にするつもりか?!」
「馬鹿にもしたくなるでしょう? 100年ほど前にあなたの先祖の婚約者と王女が攫われた時、王女は彼女を犠牲にして無事に保護されたそうよ。私もその例に従って無事に戻ってきたっていうのに、あなたは婚約者でもない、ただの男爵令嬢のことで、このように怒鳴り込んでくる。身分差も、その重要性もわかっていない証拠だわ」
「身分をひけらかすのか? お前のような女とは結婚できない! 婚約破棄させてもらう!」
「どうぞ。あなたの幼馴染のおかげで、私は政略結婚をいくらでもできる身のままなの。あなたは大事な幼馴染と結婚して守ってあげなさいな」
「そんなこと言われなくてもわかっている!」
大きな足音を立てて去って行った令息に、王女はもう一度、溜め息を吐く。
「流石、暴行を受けて男性恐怖症になった婚約者のことに一切、気付かなかった馬鹿公爵家の子孫だわ。どんだけ婚約者に興味ないのよ。その上、あの家の令嬢は男遊びはしても、高位貴族の務めが理解できない馬鹿娘ばかりだし、男爵令嬢と貴賤結婚にならないように配慮してあげなくてはね」
王女は婚約者のいる男と距離がおかしい男爵令嬢だから、免疫があると思って差し出した。その責任の一端は、彼女を蔑ろにして、幼馴染を優先した婚約者の言動からだった。
100年前の王女は身分はあったが、婚約者のいる男と距離がおかしくて、政略結婚に使えなかった。彼女がどんな気持ちで公爵家の令息の婚約者を差し出したか、考えただけでも虫唾が走る。
おかげで、大好きな王女と結婚してもすぐに病死(王家の意向)されて、今のリリエット家は後妻の産んだ子孫だ。
王女が降嫁した家といっても、潰れても王位継承権を持つ者はいないので、問題はない。
せっかく、王女と婚約できるように祖父、父と二代で頑張っても、下位貴族にまで降爵のフラグが立ちました。