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第1話

多分また書き直します。

「遂に、この時が来たんだな……。数十年に渡り人々を苦しめてきた悪魔、”魔王”を、殺すときが……!」

ここ、魔王の城の最上階、そこにあるこの巨大な扉を前に、1人の男が握った拳を震わせながら言った。

俺の他には、その男も含め3人の男がこの場にいる。その3人は、黒を基調とした禍々しい見た目の鎧を身にまとっている。逆に、俺の服装は上下共に皮の服だ。

「ああ、そうだな。魔王!母の仇、討たせてもらうぞ……。」

と、また別の男が。

魔王。厨二病のガキしか名乗らなそうなその名前の怪物と、その配下の魔物たち。そいつらは、数十年も前に人類に宣戦布告し、それ以来、人類と魔族は戦争をしていた。

だが、それも今日までだ。魔王は、俺たち”勇者パーティ”が殺す。

「魔王さんよぉ、俺はこの1年間、ずっと待ってたんだぜ?金も名誉も、全部このルフェス様のモンだ。」

俺はそう呟くと、思い切り扉を蹴り飛ばした。

木製とはいえ、10mはあるであろう扉が、バラバラに砕け散る。俺たちは部屋の中へと駆け出す。部屋はその広さとは裏腹に殺風景で、最奥にある玉座以外の調度品は無い。

その玉座に座っていた魔王が、ゆっくりと顔を上げ俺たちを見つめる。魔王は、黒いローブに身を包んだスケルトンの魔物、と言った見た目だ。魔王はカタカタと骨を鳴らしながら、その口を開く。

「遂に、人が我の元まで辿り」

「死ねえええ!」

魔王が何かを言おうとしたが聞く気は無い。俺は魔王に素手で殴り掛かる。なお、ほか3人は後方で待機している。

「ロクに会話も出来ぬとは…。やはり人間は愚かだ。早く消え去れ。」

眼球の無い虚空の目が赤く光る。何かは分からないが、危険だと本能で直感する。

「おい!A!防御だ!」

俺は仲間の1人に指示を出す。すると、次の瞬間。仲間の1人が俺の目の前に一瞬で現れた。そして、それと同時に魔王の両目から深紅のレーザーが放たれる。その攻撃は光速に近い速度で放たれ、まず回避は不可能だろう。…が、レーザーは俺ではなく、俺の前の肉壁に直撃する。レーザーは仲間の着ている鎧に傷をつけることは出来ない……が、1秒ほど止まっただけでその後勢いを取り戻し、そのままその仲間ごと壁を突き破り消えていく。

「今のが、人のみが持つ神より与えられし力、”スキル”か……。ふむ、初めて見るが、そこまで脅威になりそうでもないな。瞬間移動したはいいが、結局どちらも壁の向こうに吹き飛んでしまったな。」

魔王が高笑いする。そして、ゆっくりと残りの2人の方を見ると……。

「へぇ?スキルが脅威にならない、か。」

背後からの声に驚き動きを止めた。魔王は背後を振り向こうとするが、頭を鷲掴みにして止めると、空いた右の拳を振り上げ、

「教えてやるよ、魔王。確かにアイツらの【テレポート】は弱いが……。俺のスキル【覇者の拳】は、殺意を持って殴った全てのものを粉々に破壊する、最強のスキルだ。」

「なっ、まっ……」

雷霆の如く振り下ろした拳が、魔王の頭蓋を打ち砕いた。

骨の破片が辺りに飛び散り、頭部を失った体が地に倒れる。魔王は死んだ。俺の活躍によって。

いつの間にか先程吹き飛ばされた仲間も戻ってきており、3人の仲間たちが俺の元に駆け寄る。

「ようやく、終わったんだな……。」

「ああ。あいつらの魂も、報われた。」

仲間たちは、暫くそんなことを言って思いつめていたが、

「なあ、ルフェス。」

と、真剣な眼差しで俺を見つめてきた。

「俺たち、リーダーのアンタに今までの恩返しがしたいんだ。だから、コッチに来てくれるか?」

俺は言われるままに仲間たちのそばに寄る。こういうことは初めてだ。こいつらも、変わってくれたってことか。

そんなことを思い、フッと笑ったその時だった?

俺の胸に、短剣が突き刺さった。

刺したのは誰でもない、俺の仲間だ。痛みと共に、皮の服に赤色が広がっていく。俺は立っていられずその場で膝をついた。

「なっ、何を……!なんでこんなことを!」

俺は仲間たちを睨む。

「なんで?何言ってるんだい?ルフェス。それは君が1番よく分かっているだろう?」

「は?ど、どういう……」

「まさか、自覚が、無いのか?っふざけるな!俺は、俺たちは!アンタのせいで、人生を壊されたんだ!なぁ、俺たちの来ているこの鎧、これはなんだ?いえるよなぁ!」

仲間は俺に罵声を浴びせる。この鎧は、俺が一月も掛けて探し出した一級品だ。それ以外の特出した点はひとつくらいだ。

「それは、1度着れば二度と外せない、呪われた鎧、だろ。」

「ああ、その通りだ。そしてこれは、嫌がる俺たちにアンタが、無理やり気絶させて着せたものでもある。」

そうだったか。そんな時のことはもう忘れてしまった。

「なぁ、お前に俺たちの気持ちが分かるか?あれ以来、寝る時も食事の時も、ずっとこれを着たままだ!水浴びなんてずっとしてない!人の手の温かさを感じようとしても、冷たい鎧に遮られる!分からないよなぁ!」

こいつの煩い声は止まらない。そろそろ黙ってくれと思っていると、

「それだけじゃない。」

別の仲間が割って入ってきた。

「俺、お前にパーティに誘われた時は嬉しかったよ。闘いのセンスが無くて、努力しても一向に上達しない。そんな俺に、必要だと言ってくれた。だが……。」

言葉を途切らせたそいつは、瞬時に俺の背後に立っていた。

「お前が必要だったのは、これだ。知っての通り、俺のスキル【テレポート】は、一定範囲内であればどこにでも一瞬で移動出来る。」

「そう。それが俺たちのスキル。アンタは、俺たちじゃなくて、同じスキルのやつで替えのきく肉壁だったってことだ。」

俺は黙って話を聞いていたが、流石に理解が出来ないため反論する。

「……何を言っている。俺は、魔王を倒すのに必要だから、テメェらを使ってやった。実際、これが1番効率的だった。それはテメェらも分かってるだろ。じゃあ、何が不満なんだ。」

俺の言葉を聞いた仲間たちは、信じられないといった表情を浮かべる。

「っ、そのために俺たちの人生が滅茶苦茶になってもいいってのかよ!」

仲間の1人が胸ぐらを掴んでくる。我慢の限界に達した俺は、クズ共に向けて吠えた。

「何がおかしい。俺は、俺以外のゴミスキルの連中を、救ってやってるんだぞ!俺は勇者!選ばれた存在!そんな俺に使われるんだ!人類の役に立ってるんだ!何故その幸福が理解できない!」

俺の言葉を聞き、クズ共の怒りの表情が消え去る。ようやく理解したか。そう思っていると。

「……そうか。やっぱり、アンタはアンタなんだな。」

「まぁ、何を言おうと結果は変わらなかったがな。お前のやったことは死でも償えない。」

なんてことを言い出した。そして、この2人以外にも、今まで黙っていた最後の一人が口を開く。

「もういいだろ。もう、終わらせよう。魔王も、ルフェスも。」

は、と声が出そうになる。だが、それよりも速く、両手剣が俺の脳天を貫いた。

魔王の死骸に被さるように倒れ、そのまま動かなくなる。

3人は、その2つの死骸に背を向け、

「結局、アンタは俺たちの名前すら覚えてくれなかったな。俺は俺らを記号で呼び出したあんときからずっと、アンタを仲間だと思ってなかったよ。クソ野郎。」

そう吐き捨て去っていった。


俺は、一面が真っ白の小さい部屋で目を覚ました。部屋の中央にテーブルと椅子があり、そこに1人のジジイが座っている。

……俺は、1度だけここに来たことがある。

「おうお前さん、ようやっと死んだか。四島拓郎……いや、今はルフェス・アグリーだったか。」

胸部まで伸びた髭がモソモソと動く。俺はジジイの向かいに勢いよく座り、

「よぉジジイ、久しぶりだな。相変わらず、辛気臭ぇとこにいんな。」

と悪態をつく。

「っと、さて、ちょっっと話があるんだけど……。なぁ、もう1回、転生させてくんねぇか?」

そう、もう1回だ。

俺は元々、日本で普通のサラリーマンをしていた。が、交通事故により死亡。俺はこの部屋で目を覚ました。そして、このジジイに、俺は神のミスだかなんだかで死んで、そのお詫びに、元の姿のまま強力なスキル付きであの世界に転生させる、ということを伝えられた。その後、俺は転生し……。

「なぁ、いいだろ?俺、これからって時に死んじまったんだよ〜。」

現在、再び死んだ俺は、こうして神に頼み込んでいた。

俺はこんなとこで死んでられない。俺はもっと遊びたいし、チヤホヤされたいし、この力で好き勝手したい。

ジジイは黙って俺の話を聞いていたが、遂に口を開く。

「本来ならダメだが、特別にOK!」

「さっすが!話の分かるオトナカッコイー!」

「ほっほっほっ、そうじゃろそうじゃろ!」

まあ本当はんな事1ミリも思ってないけど。

「さっ、それじゃとっとと言ってこんかい!」

ジジイがそう言うと、俺の意識は暗転した。

案外頼んでみるもんだな。それじゃ、次の世界も、楽しむとしますか!


俺が目を覚ますと、そこは何も見えない暗闇だった。その上、俺のいる空間はまるで麻袋の中のように狭く、体が自由に動かせない。

なんだ、これ。どうなってるんだ?スキルで壊そうにも、何故か上手く拳を握れず、腕も思うように動かない。これ、マジでヤバいんじゃないか?あのクソジジイ、あとでぶっ殺す……。

と、どうすればいいか悩んでいたその時。突然壁に穴が開き、そこから光とともに巨大な手が迫ってくる。

(な、なんだこれ、この世界の魔物か?)

とりあえず攻撃しようとしたが、何故か体は動かない。俺はなすがままに手に捕まり、そのまま外に引きずり出されて……

そこに居たのは、複数の巨人。というか、部屋も家具も、何もかもがでかい。俺は巨人に抱きかかえられたまま、あちこちを見渡す。そして、下を見た時、信じられない光景が広がっていた。

そこに居たのは1人の女。その女は、腹を切り裂かれ、ポッカリと穴が空いていた。

その瞬間、俺は全てを理解し、脳のキャパを超えたことで気を失った。


俺が目を覚ますと、そこは再びあの白い部屋だった。

「あれ?俺、また死んで……?」

「違う違う。これ、ただの夢。」

ジジイはさっきと変わらない様子だ。だが、俺はさっきとは違い怒りに燃えている。

俺はジジイに詰め寄り、

「おい、あればどういうことだ。なんで俺は赤ん坊になってんだ!答えろ!」

そう問い詰める。すると、意外な答えが帰ってきた。

「んー?あれは、あんたへの罰。」

「罰?」

「そ。あんた、だいぶ好き勝手やりすぎたってことじゃ。常習的なものだけでも、無銭飲食、強姦、市民への恐喝、仲間への暴力、窃盗……まぁよくここまで好き勝手出来たもんだ。」

「だから、1度人生をやり直して正気に戻れ。ちなみに、肉体スペックはあの世界の最底辺で、スキルもパンチが強くなる程度にしたぞ。」

「は、はぁぁぁ!?お、おい!それはナシだろ!」

俺は思わず叫んだ。特にスキル。俺はこいつのおかげであの世界で無双できた。正直、人生をやり直す程度ならスキルがあれば別にいいと思っていただけに、衝撃が大きい。

「もちろん、救済措置がない訳でもないぞ。」

「ほ、ホントか?ど、どうすれば……」

「簡単じゃ。これをすればスキルも元に戻って、肉体の強さも前の世界と同程度になる。そして、肝心の何をするかだが……。」

「…………ごくり。」

「あんたは、これまでの悪行の分、いや、それ以上に、人を救え。」


「…………え」

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