第六章 日記
・十一月二十四日
人を殺した。
殺すつもりはなかったのに。
私が死ぬはずだったのに。
私は死ぬつもりで、あの公園にいた。
お姉ちゃんが殺されて、おじいちゃんも倒れちゃって。
私一人になっちゃった。
私一人で生きている意味なんてないと思った。
だから、死のうと思った。
偶然見つけたあの公園で。
自分の喉を刺して死のうと思った。
でも、そこへあの人がやってきた。
多分、たまたまあそこを通りかかった人。
その人は、私を見てすぐに死のうとしているとわかったみたい。
だから、あの人は私を止めようとした。
私は死にたいから、必死に抵抗した。
そうしたら、もみ合っているうちにアイスピックがあの人に刺さっちゃった。
殺す気はなかった。
殺すつもりなんかなかった。
でも、死んでしまった。
殺してしまった。
どうしたらいいかわからなかった。
自分が死ぬ覚悟はあったけど、誰かを殺す覚悟なんてなかった。
だから、逃げた。
死ぬ事もできなくなって、しばらくその辺を歩き回った。
けど、結局気になって元の現場に戻ったら、誰かが通報したのかもう警察が来ていた。
だけど、刑事たちが捜査しているのを見て、ふと私の中にある考えが浮かんだ。
もしかして、人が死ねばそこを担当する警察署の刑事の顔を確認できる?
今、目の前を捜査している刑事たちの中に、残念だけどあの男はいない。
お姉ちゃんが生前付き合っていると言っていたのに、死んだら姿を消した怪しい男。
お姉ちゃんが「世田谷の刑事」と言っていた男はいない。
名前は言ってくれなかったけど、お姉ちゃんは、あの男の顔の特徴だけは話してくれた。
だったら、これを繰り返せば、いつかは必ずあの男を突き止められるはず。
私の中に、生きるための新しい目的が生まれた。
できないと諦めていた事が、できるとわかった。
なら、もう迷う事はない。
お姉ちゃんのために、私ができる事をするだけ。
さて、
次は、誰をどこで殺したらいいのかな?
・十一月二十七日
二人目を殺した。
誰かは知らないけど、駐車場で車に乗ろうとしていた人だった。
周りに他に誰もいなかったし、ちょうどいいと思ったから殺した。
思った通り、死体はすぐに見つかって、近くの警察署から刑事がいっぱいやってきた。
野次馬に混ざって現場検証を見ていたけど、あの男らしい人はいなかった。
外れみたい。でも、やり方は間違っていないと思う。
また、殺さないと。
・十一月二十九日
三人目を殺した。
また外れた。
次。
・十二月二日
いない。
いない、いない、いない。
いない、いない、いない、イナイ、イナイ、イナイ。
どうして? どうしていないの?
これだけ探しているのに、どうしてあいつはいないの?
今日も一人殺したけど、あの男はいなかった。
もう、残りも少ないのに、あの男は見つからない。
私の運が悪いせい?
あるいは、そんな男は最初からいなかった?
でも、お姉ちゃんが私に嘘をつくはずがない。
わからない。私にはわからないよ。
また、殺さないと。また、生贄を見つけないと。
私は悪くない。悪いのはなかなか見つからないあの男。
あいつが見つからないから人が死ぬ。
何もかも全部、あいつが悪いんだ。
お姉ちゃん、もう少しだからね。あとちょっとだからね。
十二月七日
見つけた
見つけた 見つけた
見つけた 見つけた 見つけた
見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけたやっと見つけたやっと見つけたやっと見つけたやっと見つけたやっと見つけたやっと見つけたやっと見つけたやっと見つけたやっと見つけたやっと見つけたやっと見つけたやっと見つけたやっと見つけたやっと見つけたやっと見つけたやっと見つけたやっと見つけたやっと見つけたやっと見つけたやっと見つけたやっと見つけたやっと見つけたやっと見つけたやっと見つけた
殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやるコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤル
ゼッタイニコロシテヤル




