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第八章 解放

 瑞穂が目を覚ますと、時刻は午前六時を少し過ぎた所だった。場所は村役場の仮眠室。寝ぼけ眼に隣を見ると、蘭と愛美子が行儀のいい姿勢で寝ているのが見えた。窓のカーテンの隙間から、かすかに光が差し込んでいるのがわかる。

「起きなきゃ……」

 瑞穂はそう言って布団から起き上がると、身だしなみを整えて仮眠室を出た。隣の捜査本部に顔を出すと、榊原が昨日と同じスーツ姿で、机の上にこれまで集めた情報の書かれたメモや書類を広げて何かを考えているのが見えた。

「先生……」

「あぁ、おはよう、瑞穂ちゃん。何とか、地獄の一夜は乗り切ったようだ」

「みたいですね。あの後、何か変わった事はあったんですか?」

「いや、巴川署の方はわからないが、結局こちら側の状況が動く事はなかった。強いて言うなら、橋本に頼んだ調査の結果がこうして送られてきた事くらいだな」

 榊原は目の前に広がる書類を示しながら言う。

「じゃあ、先生はここでずっと推理を?」

「あぁ。今の私にできる事はこのくらいしかないからね」

「それで、何かわかりましたか?」

 瑞穂の問いかけに、榊原は難しい顔で首を振った。

「いくつか考えた事はある。が、決定打がない。少なくとも現段階で犯人を特定するのは難しいと言わざるを得ない」

「そんな……」

「とにかく、今は孤立した巴川署が解放されるのを待つしかない。あちらの事件の状況がわかれば、もしかしたらこちらの事件の突破口にもつながる可能性がある」

「やっぱり、二つの事件は繋がっていると思いますか?」

「断言まではできないが、こうして同時に事件が起こっている以上、その可能性を考えないわけにはいかない。それを見極めるためにも、一刻も早い救助が必要だ」

 榊原は慎重な言い回しでそう言ったが、瑞穂は榊原がそのような言い方をする時はある程度の確証を持っているはずだという事を知っていた。

 ……今から数時間前、洪水の発生が報告されて混乱する役場だったが、すぐに決壊したのは村から見た巴川の対岸……つまり警察署側だという事が報告されて、不謹慎ではあるが、その場に一瞬安堵の空気が漂っていた。

 だが、その報告は同時に、孤立して連続殺人が繰り広げられている巴川警察署の状況がより悪化したという事でもある。実際、停電になったのかかすかに見えていた警察署の明かりは消え、夜だった事もあってこちらからでは対岸の状況がどうなっているのか全くわからなくなってしまった。おまけに無線も電話も全く通じなくなってしまい、少なくとも最後の連絡があった午前二時半以降、向こうで何が起こっているのか把握できなくなってしまっている。結果、巴川署は暗闇の中で不気味な姿を演出する事となり、こちらとしては何とも気持ちの悪い時間が流れる事になっていた。

 そんな状況である事もあり、午前四時頃になって瑞穂は榊原から「今のうちに少しでも仮眠をとっておきなさい」と言われたのだった。正直、自分でもそろそろ限界かもしれないと思っていた事もあり、瑞穂はおとなしく榊原の言う事を聞いてそのまま隣の仮眠室へ行き、そこで眠りについたのである。結局寝られたのは二時間だけだったが、それでも気休め程度ではあるが少しは疲労を回復できたとは思えた。

 そんな事を瑞穂が思い返している間に、榊原は固定電話の受話器を取って、どこかに電話をかけていた。電話口に出たのは、月園家で護衛の任に当たっていた寺桐だった。どうやら、向こうも無事に寝ずの番を成し遂げたらしい。

『寺桐だ』

「榊原です。月園家の様子はどうなっていますか?」

『今、確認しているが、ひとまず新たに誰かが死んだというような事はない』

「そうですか……」

 ただ、もちろんここで油断するわけにはいかない事は榊原もわかっているらしく、すぐにこう続けた。

「朝食には気を付けてください。犯人がその気なら、そこで毒を仕込まれる危険がありますので」

『わかっている。月園家の方々には申し訳ないが、こちらが用意した保存食のカップ麺と水で我慢してもらうつもりだ。雨もようやくやんだようだし、救助や応援もそう遠くないうちに来るだろう』

「そう願いたいところですね」

 実際、窓の外を見ると、相変わらずどんよりとした曇り空ではあるが、確かに雨はやんでいた。あの忌々しい雨さえやめば、こちらが打てる手は一気に増えるはず。ここが事件の大きな転換点になるかもしれないという事は、瑞穂にもよくわかっていた。

 その後、いくつか簡単な打ち合わせをした上で、榊原は電話を切った。それを見計らって、瑞穂は榊原に話しかける。

「あの、ちょっと外の空気を吸ってきていいですか? 何か、息が詰まっちゃって」

「あぁ、気を付けて」

 榊原の言葉に送られて、瑞穂は捜査本部の部屋を出ると、階段を上って屋上に通じるドアを開けた。すっかり下が濡れた役場の屋上からは村の景色がよく見えたが、やはり最初に目に着いたのは、堤防の一部分が決壊した巴川と、そこから発生した洪水で一階部分まで水没し、まるで湖の上に浮かんだような状況になっている巴川警察署の無残な姿だった。夜が明けてようやく自らの目で殺戮の嵐が襲った警察署の姿を目にする事ができたわけだが、その姿は予想以上に痛々しく、まるでどこかのダム湖の底から出てきた昔の廃墟の姿を彷彿とさせた。

 改めて目を凝らすと、決壊していない村側の堤防の上に何人かの人が集まっているのが見える。多分、村役場の職員たちが巴川署の様子を確認しているのだろうが、救出手段がないため何もできず、ただ見ている事しかできないようだった。一方、警察署側も誰かが窓から助けを求めるといったような普通ならみられるアクションが一切確認できず、不気味な沈黙を保ち続けている。助けを求める行動が起こせないほど疲弊しているのか、あるいは……

「あれが、巴川署か」

 と、瑞穂の後ろからそんな声が聞こえ、振り返ると榊原がゆっくりとこちらに近づいて来るところだった。

「先生……」

「私も気分転換だ。それに、現場の状況は一度見ておく必要がある」

 そう言いながら、榊原はジッと巴川署の方を見やる。全体的に疲れた雰囲気こそ漂っていたが、その目は死んでおらず、探偵としての静かな闘志を今なお燃やし続けているようだった。

「……決壊したのはあそこか」

 榊原が目をやっていたのは、警察署の北側の方だった。確かにそこを見ると、堤防の一部が寸断されているのが見え、そこから今なお濁流が警察署の敷地内へ流れ込んでいるのが見える。肝心の巴川の流れは今も激しいが、それでもゴムボートで何とか渡れるかもしれないくらいの所までは落ち着きつつあった。

「殺人事件もそうだが、あの洪水でどれだけの被害が出たかの方が心配だ。ここまでひどいと、被害なしの方が奇跡的に思えてくるが……」

 榊原がそんな事を呟き、もう一度警察署をよく見ようと目を凝らした……その時だった。どこか遠くから何か音が聞こえてきて、その音がだんだんと大きくなってくるのを瑞穂は感じた。だが、榊原はその音を聞いて、逆に何か安堵したかのような表情を浮かべた。

「ようやくお出ましか」

 榊原はそう言って南側の空の方を見やる。瑞穂もつられてそちらを見ると、曇り空の向こうからいくつかの黒い影がこちらへ向かっているのが見えた。

「あれは……」

「外部からの救援のヘリだ。これでようやく、事態を動かす事ができる」

 それは、事態が新たな段階に入った事を示す、何よりも明白な合図に他ならなかったのである。


 改めて空を見上げると、そこに浮かんでいたのは特徴的な自衛隊のヘリと、それに並走する形で飛んでいる側面に『警視庁』と書かれたヘリだった。二機のうち自衛隊のヘリはそのまま洪水で孤立している巴川署の方へ飛んでいき、警視庁のヘリの方は救急ヘリの緊急着陸場所に指定されている役場の駐車場の方へ向かっていく。

 すでに駐車場の車は全て隅に寄せられており、ヘリはゆっくりと役場の駐車場へと着陸する。出迎えのために屋上から駐車場に降りてきた榊原たちや鎌崎村長たち役場の関係者が見守る中、その中から何人かの人間が出てくるのが見えた。

 そして、その先頭に立つスーツ姿の男を見ながら、榊原は感心した風にその男に声をかけた。

「まさか、お前自身が先陣を切って乗り込んでくるとは思わなかった」

「当然だろう。これだけの事件となれば、現場を見ておくのは刑事として当然だ。それは管理職になった今も変わらんよ」

 その男……榊原の刑事時代の同僚である警視庁刑事部捜査一課長・橋本隆一警視正はそう言って榊原の言葉に応じた。着ているスーツこそ榊原のそれとは違ってかなり仕立ての良いものだが、その目の奥から発せられるものは榊原同様に非常に鋭く、警視庁捜査一課を率いる管理職となった今でも彼が正真正銘の『刑事』である事を知らしめていた。

「今回は苦労をかけたな、榊原」

「その言葉は事件が解決してから聞くとしよう。事件はまだ終わっていない」

「あぁ、わかっている」

 榊原と軽く言葉を交わした後、橋本の視線は瑞穂の方へと向く。

「あ、どうも、お久しぶりです……」

「瑞穂君か。君も久しぶりだね。相変わらず、元気そうで何よりだ」

 一介の女子高生に過ぎない瑞穂ではあるが、橋本とは榊原を通じてすでに面識がある間柄でもある。そしてそれは、橋本の後ろでジッとこちらを見ながら控えている橋本の部下の刑事たちも同様だった。

 彼らの先頭に立っているのは実直そうな男は警視庁刑事部捜査一課第三係係長の斎藤孝二警部。年齢は四十歳で一応刑事時代の榊原の後輩という立場にあり、今では捜査一課の中心として多くの事件を手掛けているベテラン警部である。彼自身、元々の捜査能力も高い刑事であり、並大抵の事件程度なら充分解決できるだけの実力の持ち主ではあるが、そんな彼でも解決が困難な事件の際には榊原に非公式の捜査協力を求める事もあり、その結果として非公式アドバイザーとして捜査に介入した榊原が事件を解決したという事も今までに多くあった。瑞穂ともその縁からの知り合いである。

「今回の一件、担当は斎藤が?」

「えぇ。橋本一課長直々の命令です」

 榊原の問いかけに、斎藤は軽く頭を下げながらそう答えた。その後ろから、斎藤の部下である三係主任の新庄勉警部補と、同じく三係所属の竹村竜警部補も姿を見せる。彼らも榊原とは顔見知りであり、榊原に対して無言で会釈を返す。

「県道の土砂崩れもあと一時間程度で撤去できるとの報告だ。残りの捜査員はそれからこの村にやってくる手はずになっている」

「それは吉報だな。ところで、あれから巴川署から何か連絡は?」

「いや、残念ながら午後二時半頃に第三の殺人があった旨の簡易的な通信があったのが最後だ。以降は一切呼びかけに応じず、あの警察署が現状どうなっているのかは全くの不明だ」

「そうか……」

「とにかく、まずはあの警察署の救助作業だ。事件の検証はそれの結果次第という事になる」

「あぁ、もちろんだ」

 榊原の答えを確認すると、橋本は背後の刑事たちに指示を出していく。

「新庄と竹村は月園家にいる寺桐巡査部長たちの救援へ。斎藤は私とここに待機。巴川署の署員たちが救助され次第、我々で尋問に当たる」

「了解!」

 新庄と竹村はすぐさま行動に移る。

「さて、村側の被害者は二人で抑え込めたが、巴川署の方は一体どれだけ生き残っているものか……」

 橋本がそう呟くが、さすがの榊原も、その質問には答えられないようだった……。


 都知事からの要請で災害出動した自衛隊のヘリが巴川署上空でホバリングをする。その音は、大会議室で精神を摩耗させながら緊迫した時間を過ごしていた虎永たちの耳にもしっかり届いていた。

「この音は……」

「救助だ!」

 誰が叫んだのかはわからないが、その声と共に部屋の中にいた面々は一斉に窓際に駆け寄って窓を開け放ち、そこから身を乗り出して上空を見やる。そこには手を伸ばせば届くと錯覚するような距離に自衛隊の特徴的なヘリがホバリングしていた。

「お、おーい! こっちだ! 助けてくれ!」

 麻布が必死に両手を振り、しばらくすると自衛隊員がロープでこちらへ向かって降下してくるのが見えた。やがてその自衛隊員は窓のすぐ横に到達し、虎永たちがスペースを空けると、窓から室内へと慣れた様子で入ってくる。

「皆さん、怪我はありませんか?」

 自衛隊員の言葉に、その場の誰もが頷きを返した。

「生存者は何人いますか!」

「七人です!」

 虎永が答えると、自衛隊員は無線で連絡を入れる。

「要救助者は七名。これより救助活動に移る!」

『了解!』

 無線での連絡が終わると、自衛隊員は虎永たちに話しかけた。

「これから一人ずつ救助を行います! 皆さん、準備をお願いします」

 自衛隊員の要請に虎永は「わかった」と頷き返し、後ろの戸沼と紗江に指示を出す。

「戸沼君と広山君は鬼首を連れて来い。こうなった以上、彼女だけをこの場に残しておくわけにはいかない」

「了解!」

 戸沼と紗江が拘束状態で部屋の隅で退屈そうにしている鬼首塔乃の元へ向かうのを確認すると、虎永は救出順序について残っている麻布と信治に自身の考えを述べた。

「まずは衰弱している源巡査から。次に一般人の月園先生、女性の広山君の順で、その後に鬼首塔乃を引き上げてもらおう。引き上げの際にどうしても鬼首の手錠を外す事になる。だから鬼首がヘリに乗った時点で先に救助された広山君に手錠をかけてもらうのが一番の方法だ。男性警官はその後という事で構わないか?」

「……わかりました。私はそれで構いません」

 麻布は虎永の案に賛成し、信治も異論はない様子だ。

「よし、では、まず源君からいこう」

 そして、部屋の隅で毛布をかぶったままぼんやりしていた響子が虎永と麻布によって窓の傍まれ運ばれ、その間に信治が彼女の症状について簡単に自衛隊員に説明する。自衛隊員は信治の説明に頷くと、すぐに響子を引き上げる準備を始めた。疲れ果ててぐったりした響子は、されるがままになっている。

「行きます!」

 自衛隊員が合図を出し、そのまま窓から響子を抱きかかえてヘリへ救出していく。すぐに別の自衛隊員が降下し、次に救助される信治に器具を装着していく。

「虎永、上で待ってるぞ!」

「あぁ」

 軽くそう言葉をかけ合い、信治は救助されていった。さらに同じ調子で紗江も救助され、いよいよ鬼首塔乃の番になる。

「絶対に暴れるなよ! 暴れたら命の保証はできない!」

「わかってるわよ。私だって死にたくはないわ」

 残った警官たちの手で塔乃の手錠が外される。一時自由の身となった塔乃に自衛隊員が器具を装着し、次の瞬間、鬼首塔乃は窓の外から宙を舞う事となった。

「……よし、上手くいった!」

 塔乃がヘリに引き上げられ、すぐに次の自衛隊員が降下してくる。残りは三人。ここまで来れば、もう安心してもいいと虎永は思った。

「何とか……生き延びた」


 その数分後、残る三人も無事救助され、生存者たちを救出したヘリは、特段トラブルもないまま、地獄と化した警察署の上空から飛び去って行ったのだった……


 生存者たちを救出した自衛隊のヘリは、先程警視庁のヘリが着陸した役場裏の駐車場に着陸し、そこで生存者たちはようやく巴川署から解放される事となった。

 だが、ヘリから降りた虎永たちは、すぐに自分たちを出迎える大勢の人々の姿に困惑する事となった。そして、その先頭に立っていた人物の正体を知ると、困惑は驚愕へと変化した。

「そ、捜査一課長殿でありますか……」

「そうだ。本件の捜査は私が直接指揮を執る。助かったところ悪いが、体調に問題がないようなら、すぐに君たちに対する聴取を行いたい」

「それは……自分たちが容疑者という事ですか?」

 思わずと言った風の麻布の言葉に、橋本は容赦なく頷いた。

「残念だがそういう事だ。閉ざされた空間でこれだけ立て続けに殺人が起これば、生き残った人間の中に犯人がいると考えるのも当然だろう。たとえそれが警察関係者であったとしても、例外は存在しない。君たちも警察官なら、それは理解できると思うが」

「……」

 もちろん、当の虎永たちも救助前の時点で自分たちの中に犯人がいる可能性が高いとは考えていたし、事態が事態だけに救助後にこうなる事はある程度覚悟していた事ではあった。だが実際にそう言われるのは、何というかかなりきついものがあった。

「村で起こった殺人事件の方はどうなっていますか?」

「そちらについても現在捜査中だ。ひとまず、先日に起こった二件以降、新たな事件は起こっていない」

「そうですか……」

 虎永は一瞬ホッとした表情を浮かべたが、すぐにそれを引き締めて、改めて警察官として橋本に自身の考えを告げた。

「聴取の件ですが、源響子巡査がかなり衰弱しているため、まずは治療が必要かと考えます。そのためにも、月園信治医師にはまず診療所で自身の業務を行えるように取り計らって頂きたいのです。現状、この村に医者は彼一人しかいません。村側にも負傷者や病人はいるでしょうし、応援の医療班が到着するまでは彼の力に頼るしかないと考えます」

「……わかった。その件は善処する。月園医師にはひとまず村の診療所に行く事を許可するつもりだ。源巡査もひとまずはそこに搬送しよう。ただし、誰か見張りはつけるつもりだが」

「ありがとうございます。それと、鬼首塔乃については……」

 その言葉に、橋本は苦い表情を浮かべた。

「警察署が使えない上に連行もできないのは今も変わらない。しかも、彼女は指名手配犯である以前の話として、君たち同様、今回の事件の重要参考人だ。そのまま移送するわけにもいかない」

「では?」

「役場の地下室に見張りをつけた上で一度収容する。その上で応援部隊が到着次第、一緒に来るはずの護送バスに移し替えるつもりだ」

「そうですか……」

「とにかく、我々としては情報がほしい。昨日一晩の間に、あの外界から隔絶された警察署で何が起こったのか。知っている事は全て話してもらうぞ」

「……わかりました」

 連続殺人そのものは終わったが、それと同時に事件は新たな局面に入った……虎永はそれを悟り、改めて覚悟を決めて橋本にそう返事をした。


 一方、虎永と橋本がそんな会話をしている中、ヘリから降りてきた信治が、どこか疲れた表情で橋本の横に立っていた榊原に声をかけていた。榊原の背後には瑞穂の他に、さっき起床したばかりの愛美子と蘭の姿もあった。

「どうも、探偵さん。何時間ぶりですかね」

「せいぜい、半日と言ったところでしょうね」

「それだけですか。僕はもう、一週間くらい経った気になっていますよ。本当に、色々あり過ぎました」

「……こちらで起こった事件については?」

「一通り聞いてはいます。勝治兄さんが殺されたとか。ですが……あれだけたくさんの人間の死を一度に見た今となっては、悪いですけど、正直、何も感じなくなっていますよ」

 信治は自嘲気味にそう言い、そんな信治に後ろの蘭が静かな口調で声をかけた。

「信治叔父様……」

「あぁ、蘭ちゃんか。君も大変だったみたいだね」

「いえ、叔父様ほどでは」

「それもそうか。とにかく、できれば今は少しでも休みたいものだが、そうも言ってられなさそうでね」

 そう言うと、信治は再び榊原の方へ向き直った。

「とりあえず、そちらの一課長さんとやらのご厚意に甘えて、一度村の診療所に戻ります。虎永巡査部長の言うように、今の所、この村に医者は僕しかいないようですのでね。まずは医師としての業務が最優先です。その後でなら、いくらでも聴取を受けますよ」

「それがいいでしょう」

 そうこうしている間にも、他の生存者たちが次々とその姿をヘリの中から見せていく。そして最後に、手錠で拘束されて紗江と戸沼に引き連れられた鬼首塔乃がその姿を見せ、その場に緊張が走る事となった。

「あれが……鬼首塔乃、か」

 榊原はそう呟きながら、平然とした様子で役場の地下へ連行されていく塔乃の姿をジッと見送る。そして彼女の姿が見えなくなると、おもむろに信治に問いかけた。

「彼女、署内ではどんな様子でしたか?」

「どんなって、落ち着いたものでしたよ。ずっと逃げ続けて修羅場をくぐっていたせいか知りませんが、どれだけ殺人が起こっても全く動じていませんでしたね」

「そう、ですか」

「じゃあ、僕はこれで。また後で会いましょう」

 そう言い残して、信治はその場を離れていく。それと入れ替わるようにして、虎永との話を終えた橋本がこちらに近づいてきた。

「今から改めて関係者への聴取を行う。榊原、お前も取り調べに付き合え」

「いいのか? 緊急時ならともかく、今はもう捜査員が大勢いるわけだが」

「ここまで来たら最後まで協力してもらう。お前という強力なカードを簡単に捨てるほど、私は愚かではないつもりだ」

「……わかった」

 榊原は頷きを返す。橋本はそのまま蘭の方に体を向けた。

「月園蘭さん、ですね。月園勝治氏の遺体の第一発見者として、あなたにも改めて聞きたい事があります。御面倒ではありますが、お願いできますか?」

「わかっています」

 蘭はそう言って頭を下げ、橋本の合図を受けた斎藤が彼女を役場の中に連れていく。橋本もそれに続き、最後に榊原が残された瑞穂と愛美子に言った。

「瑞穂ちゃんたちは先に役場の四階に戻って待機しておきなさい。状況いかんでは、君たちも聴取を受ける可能性がある。とにかく、勝手な行動は慎む事だ」

「わ、わかりました」

「じゃあ、後は頼むよ」

 そう言って榊原も役場の中へと入って行った。しばらくそれを見送っていた瑞穂だったが、不意に瑞穂の後ろから、愛美子が不安そうな声を上げた。

「深町さん。これから、どうなると思う?」

 振り返ると、愛美子が心細そうに瑞穂を見つめている。それを見て、瑞穂は努めて落ち着いた口調で彼女に言葉を返した。

「私にもはっきりとはわからない。わからないけど、ただ……」

「ただ?」

 瑞穂は一瞬言葉を詰まらせたが、すぐに決然とした表情でこう断言した。

「ただ、私の今までの経験上、ここから事件が大きく動くのは間違いないと思う。こっちの行動を制限していた二重のクローズドサークルから解放された先生が、このまま黙っているとは思えないし」

「そうなの?」

「うん」

 そして瑞穂ははっきりと告げる。

「先生は、そんなに甘い探偵じゃない。それだけは間違いないから」

 何だかんだで榊原と付き合いの長い瑞穂の言葉に、愛美子はそれ以上何も言えず、ただ不安そうに役場の建物を見上げていたのだった……


 それからすぐに、役場の空き部屋を借りた上で、橋本と斎藤、榊原の三者による巴川署の生存者に対する取り調べが始まり、署で起こった凄惨な連続殺人事件の詳細がここでようやく白日の下にさらされる事となった。一連の事件における死者・行方不明者を改めて列挙すると、八戸進巡査、桶嶋俊治郎記者、金倉英輔警部補、真砂是義警部、花町義直警部補、石井盛親警部補、柿村謙也巡査部長、奥津輝元巡査部長、山森絵麻子巡査部長、種本源三郎警部補、正親町村正警視となり、その人数は何と十一名。何人かは洪水による災害死であるとはいえ、前代未聞の大量死である。実際、事件の詳細がわかるにつれ、聴取をしていた橋本や斎藤、そして榊原の表情はみるみる険しいものへと変化していた。

「おまけに、洪水のせいで証拠も遺体もほとんど残っていないという有様だ。これはかなり捜査が難航するかもしれんな」

 一通りの聴取が終わった所で一度休憩となり、役場四階の捜査本部で橋本がそんな事をぼやきながら自販機で購入したコーヒーを飲んでいた。榊原とその隣に居心地悪そうに座っている瑞穂は黙ってそれを聞いていたが、斎藤は険しい顔で橋本の言葉に返答する。

「確実に残っているのは、洪水後に殺された正親町署長殺しの関係証拠だけのようですね」

「その証拠も現状では署内に放置しっぱなしだ。川の水の流れも少し緩んできているし、応援部隊の準備ができ次第、ゴムボートを使って本格的な捜索隊を送る必要がある」

 その応援部隊がやってきたのは、今から三十分ほど前の午前十時を過ぎた頃だった。土砂崩れの撤去がようやく終わり、五十名を超える警視庁の捜査員たちがようやく村に到達できたのである。その瞬間、榊原のいう所の「二重のクローズドサークル」のうち、少なくとも村側のクローズドサークルは完全に開放される事になったのだった。

 また、応援部隊が到着した事で、ずっと月園家で寝ずの番をしていた寺桐たち四人も役場に戻ってくる事ができた。その時、榊原と瑞穂は役場の入口で彼らを出迎えたが、さすがに四人全員が疲れ果てた顔をしているのが印象的だった。

「お疲れ様です」

「あぁ……何とかやりきった」

 寺桐はもはや、そう答えるのが精一杯のようだった。後ろの大久保も眠そうな様子で話しかけてくる。

「巴川署の生存者たちが救出されたとか?」

「えぇ、先程ヘリで」

「署内には医療道具もなかったわけですし、満足な手当てもできなかったはずです。皆さん、体の方は大丈夫だったのですか?」

「幸い、致命的な状態になっている人はいないようです」

「なら、よかったです」

 そう言い残すと、四人は役場の中へと姿を消していった。今は四人とも、役場のどこかで仮眠を取っているはずである。

「瑞穂ちゃん、水原さんは?」

「聴取を終えた蘭さんに付き添って、昨日の小会議室に。凄く心配そうでした」

 榊原の質問に瑞穂が小声で答えている間にも、橋本は状況の確認を進めていた。

「斎藤、村側の捜査の状況は?」

「捜索隊の指揮は新庄が。竹村には月園家の面々に対する改めての聴取を行わせています。応援の医療班も到着しましたので、診療所の信治氏と源巡査に対する聴取もこれから行う手はずとなっています。あと、現場の巴川小学校と巴館、それと役場のガレージに押収されている車両では、駆け付けた鑑識による鑑識作業が始まっているはずです」

「月園勝治と島永弁護士の遺体の搬送は?」

「鑑識が済み次第、最優先で行う予定です」

「結構。ようやく、まともな捜査ができるようになったな」

 橋本は大きく息を吐きながら椅子の背もたれにもたれかかる。

「それに引き換え、鬼首の捜査は苦労する事になりそうだ。あんな態度を取られてはな」

 すでに厳重な警戒態勢の下、鬼首塔乃に対する簡単な聴取も行われていた。が、何を聞いても知らぬ存ぜずの一点張りで、のらりくらりとかわすばかりであり、結局、肝心な事は何もわからないままで終わってしまっていた。

「この村に来た理由について聞いても『特に理由はない。偶然この近くにいて捕まっただけ』ときたものだ。ふざけた話だ」

「榊原さんは、彼女に対して特に何も聞かなかったようですが」

 斎藤が榊原に話しかけ、榊原は無言で頷く。

「そう言えば、私たちがあいつを尋問している後ろで、ただ黙って話を聞いているだけだったな」

「あぁ。無策のまま問いただすより、まずは相手がどんな人間なのかを知るのが第一だと考えた」

「……ま、お前にはお前のやり方があるだろうから、私は何も言わんがね。一応、お前の事は信用しているつもりだ」

「褒め言葉として受け取っておこう」

 と、そこで捜査本部の固定電話が鳴り響く。斎藤が電話に出ようとするが、橋本がそれを遮って自ら受話器を取り、そのまま何事か話をしていたが、やがて受話器を置いて息を吐いた。

「本庁の捜査班からだ。梅島美弥子の恋人の名前がようやくわかったらしい」

「梅島美弥子……?」

 瑞穂は一瞬「誰だっけ?」と首をかしげたが、すぐにそれが牧雄が金を払った形跡がある女子大生の名前だと思い出していた。

「相手の名前は金崎良夫。歌舞伎町にあるホストクラブのホストだった。ただ……このホストクラブ、少し厄介だ」

「と言うと?」

「最近、組織犯罪対策部がマークしている新興暴力団があるんだがな。海外産の麻薬の密輸で派手に儲けている組織だが、このホストクラブはその新興暴力団のフロント企業ではないかとして組対の監視対象になっていた店だ」

 想定外の話に、瑞穂は目を丸くした。

「じゃあ、その金崎って人も……」

「組対の話だと、高確率でその新興暴力団の関係者という事だ。現状、本人が麻薬をやっている形跡はなくて、組対も手を出せないでいるようだが」

「……確認するが、梅島美弥子が麻薬を使った形跡は?」

 榊原が最悪の事態を想定して質問するが、橋本は首を振った。

「いや、それはない。もしそうなら妊娠検査の時に医者が気付いているはずだ」

「それはそうか」

「とにかく、ここへきて面倒な人間が出てきてしまった。これが今回の事件に絡んでいるかどうかはわからんが……」

 その時だった。巴川署の捜索隊の指揮を執っていたはずの新庄が捜査本部内に入ってくると、橋本の近くに駆け寄って来た。

「課長、失礼します」

 新庄はそう前置きして、何事かを橋本に耳打ちする。それを聞いて、橋本の顔色が変わった。

「確かか?」

「間違いありません」

「わかった。我々もすぐ向かう」

 短い応答の後、新庄は先に駆けていく。それを見て、榊原は橋本に尋ねた。

「何かあったのか?」

「……署内の捜索をしていた捜査員からの連絡だ。署内にもう一人、生存者がいたらしい」

「生存者?」

「あぁ。半分水没した一階で何とか生き延びていたようだ。今、救助されてこちらに向かっているらしい」

「誰だ?」

 榊原の問いに、橋本は簡潔にその名を告げた。


「鑑識の種本源三郎警部補……本人はそう名乗っているそうだ」


 水没した巴川署一階の鑑識室から救助された種本源三郎警部補は、署内を捜索中だった捜査員によって救出され、ゴムボートで巴川村側の堤防まで運ばれた後、そこでストレッチャーに寝かされていた。どうやら洪水発生時に咄嗟に机の上に避難して助かったらしいが、避難の際に全身ずぶ濡れになり、おまけに水圧でドアが開かなくなったため部屋に閉じ込められる形になった事から、そのまま狭い机の上で数時間震えながら助けを待つ事になったのだという。響子以上に衰弱が激しいため、この後一度村内にある診療所に搬送して応急処置を行い、そこから秩父市内の病院に搬送して本格的な治療を受ける事になっていた。

 だがその前に、橋本や榊原たちが彼の元に辿り着く事ができた。種本はストレッチャーの上であおむけに横たわっており、どんよりと曇った空を見つめている。顔色はすっかり青白くなっているが意識はあるようであり、ひとまず命に別状はなさそうだった。

「大丈夫かね?」

 橋本が声をかけると、種本はゆっくりと顔を橋本の方へ向け、呻くような声を上げた。

「あぁ……一課長殿……わざわざこんな所に……」

 どうやら、つい最近まで本庁の鑑識課で働いていたためか、種本は橋本の顔を知っていたようである。

「辛いなら喋らなくてもいい」

「いえ、このような事になってしまい、申し訳ありません。せっかく集めた証拠もほとんど流されてしまって……鑑識として、忸怩たる思いです」

「君の命が助かっただけでも充分だ。とにかく、今はゆっくり休みたまえ」

「もったいないお言葉を……」

 種本は一瞬目を潤ませたが、すぐに口元を引き締めて真剣な顔でこんな事を告げた。

「それより一課長殿、運ばれる前に、一つお渡ししたい物があります」

 そう言うと、種本はポケットに震える手を突っ込み、証拠保管用の小さなビニール袋に入った小さな機械のようなものを差し出した。

「これは?」

「恐らく、盗聴器です。これだけは、何とか守り抜きました」

 種本は苦しげに言う。予想外の物品の登場に、その場の誰もがどう考えたらいいのかわからないといった風な顔をしている。が、榊原だけは真剣な顔で、すぐに種本に対して確認の質問を始めた。

「一体、これはどこで?」

 いきなり質問し始めた榊原に種本は訝しげな表情を浮かべたが、橋本が問題ないと言わんばかりに頷くのを見ると、素直に質問に答えた。

「巴川署で起こった事件で現場から押収した証拠を調べていたら出てきました。これは、と思ったら、その直後にあの洪水に襲われましてね。必死にこれをポケットに突っ込んで机の上に避難したというわけです」

「この盗聴器、まだ作動を?」

「いえ、小型電池式の盗聴器で、電池自体はもう切れています。継続時間は十二時間から十三時間程度だと思いますが」

「そうですか……」

 何か納得したかのようにそう言ってから、榊原はようやく肝心な質問をした。

「それで、この盗聴器、どこに仕掛けられていたんですか?」

「それですが……」

 一度言葉を切って、種本は『ある証拠品』の名前を告げる。それを聞いて、榊原以外の面々は困惑した表情を浮かべた。

「なぜそんな物に……」

「わかりませんし、正直、事件に関係しているかどうかも判断がつきません。その判断はそちらにお任せします」

 そう言うと、種本は疲れたように目を閉じた。話はここまでと判断した橋本が合図をすると、捜査員がストレッチャーを持ち上げて種本を診療所に運んでいく。あとには橋本と榊原、それに瑞穂が残された。村側の川の堤防の上から捜索隊の捜索が続く水没した巴川署の方を見ながら、橋本は榊原に問いかける。

「今の話、どう思う?」

「……非常に興味深い話だ」

「興味深い、ね。お前がそう言う時は、大体それが事件の突破口になったものだが」

 と、そこへ署内の捜索を行っていた別の捜査員が駆け寄って来た。

「報告します! 二階南側の倉庫で、生存者たちの証言通り焼けただれた遺体を発見! 遺体の右手の指からかすかに指紋が検出でき、簡易的な検査を行った結果、巴川署署長・正親町村正警視の指紋と一致したそうです!」

「そうか……」

 この瞬間、最後に見つかった焼死体の正体は、正親町のものという事で確定した。やはり、正親町はあの段階で死亡してしまっていたのである。

「現場の倉庫の写真を見る事はできますか?」

 と、榊原が話しかけると、捜査員は頷いた。

「デジカメの写真でよろしければ」

「お願いします」

 その捜査員がデジカメを取り出し、榊原はそのデータを一枚一枚丁寧に確認していく。その作業をしばらく続け、やがてすべて見終えると、礼を言ってデジカメを返した。

「で、これからどうする?」

 橋本の問いかけに対し、榊原は少し黙り込んだ後、慎重な口調でこう言った。

「……少し、一人で考えたい。もう少しで、一応の論理構築ができるかもしれない」

「わかった。私は捜査の進捗状況を見てくる。何かあったら声をかけてくれ」

 橋本はそう言うと、村の中心の方へ戻っていく。

「先生……」

「瑞穂ちゃんも済まない。とにかく今は、考える時間がほしい」

「……わかりました」

 それからしばらく、榊原は堤防から水に沈む巴川署の方を見つめながらジッと何かを考えていた。だが、何もしていないように見えて、榊原の頭の中で今まで集めた情報が目まぐるしく整理されている事を瑞穂は知っている。それだけに、瑞穂は固唾を飲んでそんな榊原の様子を黙って見守り続けていた。

 そして、それから相当な時間が過ぎた時だった。

「……瑞穂ちゃん、いきなりで悪いが、斎藤を呼んできてくれないか?」

 不意に榊原はそう言って顔を上げると、おもむろに瑞穂を見やってそんな事を言った。

「斎藤警部ですか?」

「あぁ、いくつか彼に頼みたい事がある。あと、問題は月園奏に対する対処か」

「奏さん?」

 予想外の名前に瑞穂は戸惑う。

「相手は公安だ。それだけに、これからする事について少し打ち合わせをしておく必要がある。途中で下手な事をされるのも面倒だ」

 そう言ってから、榊原は瑞穂に向き直った。

「それと、すまないが橋本の所に行って、一時間後に事件の関係者をどこかに集めてほしいと伝えてほしい。そこで私の考えを話そう」

 その言い回しに、瑞穂は何かピンときた様子だった。

「先生、それじゃあ……」

「あぁ」

 榊原はあくまでも平坦な口調のまま、しかし決然とした様子で宣告した。

「ひとまず、大まかな推論は帰結した。あとは、どう犯人を追い詰めるか、だ」

 ……長く、複雑だったこの事件にも、いよいよ最終章が訪れようとしていた。

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― 新着の感想 ―
明日はいよいよ真相編!楽しみにしてます。 お目汚しながら現時点の巴川署事件の考察を ・第一の事件の動機 犯人は鬼首と接触し極秘の話をする必要があり、口封じのためにその場にいた八戸、記者を殺害した? …
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