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 武は中学校にやって来た。その中学校は車で数十分の所にある。運動場では子供たちが朝練をしていた。武は物々しい表情だ。行方不明事件の事でピリピリしている。今の所、この中学校での行方不明の報告はないが、いつあってもおかしくない。警戒しておかなければ。


 武は中学校の廊下を歩いていた。と、そこを1人の中学生が歩いている。その中学生、野村光のむらひかるは泣いている。どうしたんだろう。何かあったんだろうか?


「どうしたんだい?」

「うーん・・・」


 だが、光は何も言おうとしない。何を隠しているんだろう。隠さずに話してみろよ。先生だぞ。


「弘人と勝がいなくなったんだよね」


 実は昨夜、橋本弘人はしもとひろと阿部勝あべまさるが行方不明になった。まだ武はその報告を受けていなかった。武は呆然となった。ついにこの中学校でも被害が出るとは。


 それを聞いて、武は光は何かを知っているのではないかと思った。まさか、お前が連れ去っているのではと思った。だが、光は悪い事は絶対にしない。優しい子だ。


「うん、そうだけど。って、それがどうしたの?」

「いや、何でもないの」


 だが、光は何も言おうとしない。武は思った。光はそのサイトの秘密を知っているのでは? 隠さずに言ってみろよ。それが弘人と勝を助ける鍵になるかもしれないから。


「話してみてよ、先生だよ。先生はみんなの味方だよ」


 すると、光は重い口を開いた。武はじっと見ている。


「・・・、僕が書き込んだの・・・」


 武は驚いた。やっぱりそうだったのか。光はそのサイトに書き込んでしまったのか。だから、2人は行方不明になったんだなと。


「あのサイト?」

「・・・、うん・・・」


 光は下を向いていた。2人を行方不明にしてしまった後悔でいっぱいだ。もう2人は戻ってこないかもしれない。そう思うと、申し訳ない気持ちだ。家族にどういうえばいいのか、全くわからない。もう許してくれないかもしれない。


「よく正直に言ってくれたな」


 武は頭を撫でた。光は呆然となった。悪い事をしたのに、どうして頭を撫でたんだろう。2人がこうなってしまったのは、自分のせいなのに。


「でも、言ったら大変な事になるかもしれない」

「本当?」


 光はもっと何かを知っているようだ。武は思った。なんとしてもその先を知りたい。それがあのサイトの実態をつかむ手掛かりになるだろう。


「うん。それは秘密だから」


 光は言われていた。このサイトの事は誰にも秘密だ。そして、何が原因で行方不明になったのかは、誰にも言うなと。


「そうなんだー。どういう内容だったの?」

「いじめの事を話したら、あいつを地獄流しにするって」


 それを聞いて、武は呆然となった。地獄流しになるとは。じゃあ、2人は今、地獄にいるって事? じゃあ、もう助からないのか?


「地獄流し? そんな・・・」

「本当なんだって」


 すると、光は泣きだした。あのサイトに書き込んだだけで、地獄流しになるなんて。書き込んだ事を後悔しているから、2人を返してほしい。だが、もう2人は戻ってこない。申し訳ない気持ちで、泣いてしまったのだ。


「・・・、わかった・・・。正直に言ってくれたな。ありがとう」


 言っただけでありがとうと言われるとは。まさか、武はその事件を調べているのかな? ならば、自分もそのサイトの事を調べたいな。


「どうしよう・・・。もう戻ってこない・・・」

「後悔後先たたずだ。もう何も気にするな。あいつらの分も生きよう」


 だが、光は思った。2人を助けないと。そして、一緒に生きよう。僕らはクラスメイトじゃないか。


「・・・、助けたい・・・」


 武は首を振っている。そんな事、無謀だろう。2人は地獄流しにあったんだろう。もう助けるなんて、無理じゃないのか?


「もう無謀だろう?」

「でも、まだ見つかってないんでしょ?」


 だが、光はあきらめない。絶対に助けたい気持ちでいっぱいだ。自分がその原因を作ってしまった。だから、自分で助けないといけない。


「でも、地獄でしょ?」

「うん」


 でも、そこは地獄だ。あまりにも過酷な場所だ。本当に大丈夫だろうか? 本当に助ける気なのか?


「もう助からないよ・・・」

「そんな・・・」


 突然、武は頬を叩いた。光は背筋が立った。


「立ち直れ!」

「・・・、わかった・・・」


 光は立ち直った。これは書きこんだ自分に責任がある。だから、2人の分も生きなければ。


「うーん・・・」

「どうしたんですか?」


 2人は横を向いた。そこには武と同じ中学校教員の田島がいる。


「ようやくわかったんだ。行方不明事件の正体が」

「えっ!?」


 田島は驚いた。まさか、行方不明事件の原因がわかったとは。田島もその事を調べていたが、なかなか原因がつかめずにいた。ここに来て、ようやくその理由がわかったとは。


「いじめを報告したら地獄流しにあうんだって」


 田島も下を向いた。もう助からない。どうしよう。絶対に助けたいと思っていたのに。


「そんな・・・。もう助からないんじゃ!」

「確かに」


 武は拳を握り締めた。ようやくこのサイトの闇を暴いた。今すぐ、そのサイトを通報しないと。そして、そのサイトを閉鎖に追い込まないと。


「大変な事になったな。そのサイトを何とかしないと」

「そうだね」


 と、チャイムが鳴った。そろそろ朝礼だ。職員室に向かわないと。


「早く通報しよう」

「うん」


 武と田島は職員室に向かった。光は2人の後ろ姿を見ている。

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