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大輔は幾部出身だ。高校まで過ごして、卒業後に上京した。大輔の日々は、勇人と似ていた。小学校に入学してからいじめに遭い、つらい日々を送ってきた。自殺しようとも考えたが、そのたびにカズや先生に止められた。いったんは収まったと思ったが、またいじめられる。そして大輔は思った。反省しないのなら、もう報告する意味がないのでは? もう幾部にいるべきではないのでは? 東京に行って人生をやり直せばいいのでは? そう思い、高校卒業とともに、東京の会社に就職した。
東京での評判は良かった。あっという間に仕事に慣れ、多くの社員から信頼されるほどになった。そして、あこがれる後輩まで出てくるほどだった。大輔の人生はこれからいい方向に向かっていくと思われた。
だがある日、大輔の中学校時代の同級生がやってきた事で、事態は一変した。その男が大輔をいじめていた男の1人で、大輔の悪口を言って、それが会社に浸透した事から、大輔は気力を失い、評判が下がっていった。そして、大輔はクビ寸前までに追いやられてしまった。あいつさえいなければ、自分は順風満帆な人生だったのに。あいつが悪口を広めたために、こうなってしまった。だが、あいつを消す事なんてできない。
「はぁ・・・」
帰り道、大輔はため息をついていた。今日も上司に怒られた。最近の自分の評価は下がり気味だ。何とかしないと、また怒られる。だけど、あの事が尾を引いて、仕事がままならない。どうしよう。
「今日も疲れたな・・・」
大輔は泣きそうだ。どうしてこんな人生を送ってしまったんだろう。もしできる事なら、人生をやり直したい。だけど、人生はやり直せない。どうすればいいんだろう。答えが見つからない。
「どうして自分は生まれたんだろう。こんな厳しい日々を送って」
大輔は家に帰ってきた。家には誰もいない。上京して以降、ずっと1人暮らしだ。恋に縁はない。結婚したいと思わない。散々な人生を送ってきた自分には、そんな資格がないと思っている。
大輔は帰ると、すぐにパソコンをつけた。大輔はネットサーフィンが好きで、よくやっている。ネットサーフィンをやっていると、日々の苦しさを忘れる事ができる。みんなとのつながりを感じられる。
と、大輔は1件のメールが来ているのを確認した。メールなんてあんまりないのに、どうしたんだろう。
「あれっ!?」
それは、『山中勇人』という男からのメールだ。誰だろう。初めて聞いた名前だ。僕の事を知っている人だろうか? 大輔はメールを開いた。そこには、短い文章が書かれている。
「悩んでるのか?」
そのメールを見て、大輔は思った。この人は、自分の悩みを解決してくれるだろう。そして、自分をいい方向に導いてくれるだろう。
「うん」
大輔は返信した。すると、すぐに返信が来た。そこには、こんな言葉が書かれている。
「いじめっ子を苦しめたいと思うか?」
それに対して、大輔の答えは1つだった。いじめっ子のせいで、自分の人生をめちゃくちゃにされた。だから、いじめっ子を苦しめてやる。そうすれば、世界が平和になるだろうから。
「はい・・・」
大輔はメールを送った。どんな返信が来るんだろう。楽しみだな。大輔はワクワクしてきた。
数分後、またメールが来た。それに対する返信だろうか? 大輔はメールを開いた。
「ならば、私に協力しろ! そうすれば、願いが叶う!」
大輔はすぐにメールを送った。
「本当ですか?」
大輔は興奮していた。これは自分の運命を変えるメールかもしれない。そして、自分の生きがいになるかもしれないだろう。
すぐにメールが返ってきた。大輔はメールを開いた。
「ああ・・・。いじめっ子を集める何かを作って、私の世界に送り込め! そいつらを死ぬまで労働させろ!」
死ぬまで労働させて、今までやってきた事を後悔させる。何と素晴らしい考えだ。これでいじめっ子は反省して、天国に行ける。
大輔はその考えに賛同した。ぜひとも協力しよう。
「はい、わかりました!」
大輔はメールを送った。その日から、大輔は思った。子供たちの悩みを聞く『駆け込みサイト』を作ろう。そして、みんなの悩みを解決しつつ、いじめっ子が現れた時には、地獄に送ろう。趣味で使っているハイエースに乗りながら、そのサイトをチェックして、いじめっ子の報告が出たら、そこに急行して、いじめっ子を誘拐しよう。そして、敏別炭鉱で強制労働させよう。これは世のため、子供たちのためだ。悪い事ではない。
その翌日、大輔は姿を消した。それは、自分の存在を消すためだ。自分の事は秘密にするために、遺書を残そう。そして、ハイエースで全国を飛び回るんだ。絶対に捕まってたまるものか。
大輔はいつのまにか涙を流していた。子供たちに申し訳ない気持ちでいっぱいだ。そして、カズにも申し訳ない気持ちでいっぱいだ。こんな事をやってしまったからだ。
「そういう経緯だったのか・・・」
と、そこにカズがやって来た。どうしたんだろう。何か言いたい事があるんだろうか?
「大輔、しっかり罪を償いなさい!」
「はい・・・」
ここは寒い。早く警察署に向かおう。
「それじゃあ、署に向かおうか」
だが、大輔は何かを考え、顔を上げた。どうしたんだろう。警察は顔を上げた。
「ちょっと待ってください!」
「どうした?」
警察は驚いた。何か言いたい事があるんだろうか? ならば、聞いてやろう。
「1日だけ、おばあちゃんと一緒に暮らしたいんです! いいですか?」
警察は少し考えた。大輔は今まで、カズに迷惑ばかりかけていた。故郷に帰らなかったし、多くの子供たちを誘拐してきた。とても親不孝な孫だ。
「いいぞ」
「ありがとう・・・、ございます・・・」
大輔は1日だけ、幾部の実家で過ごすことにした。それから逮捕されよう。




