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 と、そこに1人の男がやって来た。勇人だ。朝から騒然としている。何が起こったんだろう。勇人は気になって、稲荷神社に来たのだ。ここには誰も来ることはないと思われていたのに、ここ最近、放火しようとする人がいる。この稲荷神社の神様が退散したら、ここは湖底に沈むというのに。


「何が起こった!」


 その声に反応して、大輔は横を向いた。そこには勇人がいる。勇人が来てくれた。勇人なら何とかしてくれるはずだ。


「勇人、助けてくれ!」


 それを聞いて、カズは反応した。勇人がまさか、ここで生きているとは。もう死んだと思われたのに。まさかここで生きているとは。


「勇人・・・」

「こいつ!」


 それを聞いて、沢も反応した。沢は勇人の事を知っていた。勇人の肉体はここにあったのか。そして、何かに取り憑かれているのかな?


「生きてたのか・・・」

「えっ、勇人・・・」


 勇人は横を見た。そこには炭鉱から逃げ出した6人がいる。どこに行っていたのか?早く労働に戻れ。さもなければ、殺すぞ。


「お前ら、やっと見つけたぞ! 働け!」


 と、そこに沢が入ってきた。こんな恐ろしい事をしないでほしい。元の優しい勇人に戻ってほしい。


「やめて、勇人!」

「うるさい! お前らも道連れだ!」


 優ともナイフを出した。誰であっても殺してやる! この炭鉱を守るんだ。いつまでも、ここを存続させるんだ。そして、いじめっ子をここで殺して、いじめのない社会を作るんだ。


「勇人くん、もうやめて! どうしてそんな事をするの?」


 カズもやって来た。その声を聞いて、勇人は急に力が抜けた。まさか、カズも来ているとは。こんなに老けてなお、勇人の事を忘れずにいたとは。もうだいぶ前に現実世界からいなくなったのに。もう現実世界では死んだように思われているだろう。


「あんた・・・」

「えっ!?」


 大輔も驚いた。それはカズではないか? やはりカズも来ているのか。


「カズばあちゃん?」

「そうよ。もうやめて!」


 カズは優しそうな表情だ。もうこんな事はやめてほしい。元の勇人や大輔に戻ってほしい。もう子供たちを狩って、ここで重労働させないでほしい。


「カズばあちゃん・・・」


 と、霊媒師は今だと思い、近づいた。勇人の悪霊を取り払おうと思ったのだ。


「今だ!」


 霊媒師は服を脱ぎ、霊媒師の姿になった。早く勇人の悪霊を取り除かなければ。


「悪霊よ、立ち去れ! 天へ帰れ!」


 その声とともに、勇人の悪霊は天に昇り、消えていった。それとともに、勇人は倒れた。もう魂はないのだ。そして、勇人はただの抜け殻になった。


「倒れた・・・」


 それを見て、カズは呆然となった。本当に勇人は死んだ。もう会えないんだな。そう思うと、涙が出てくる。大輔も呆然としている。協力者が亡くなったからだ。


「死んだんだ・・・」


 それとともに、大きな水の音がする。何だろう。敏別炭鉱の方を向いた。すると、水が流れ込んでくる。ここが再び現実世界に戻ろうとしているようだ。早くトンネルの向こうに戻らないと、水没してしまう。


「えっ・・・」

「水だ!」


 驚いているのは、稲荷神社にいる12人だけではない。敏別炭鉱にいる男たちもだ。そこには、現実世界からやって来た子供たちもいる。幸いにも、その時間は非番で、みんな寝ていた。大きな音に反応して、外を出たようだ。大きな水を見て、悪霊が取り除かれた、敏別炭鉱は湖底に沈むんだと思った。


「早く逃げろ!」


 現実世界の子供たちは逃げていく。まだまだ水は住宅地に迫っていない。早く敏別トンネルの方に向かおう。


「早く早く!」

「水だー! 逃げろー!」


 辺りが騒がしくなっている。12人もここにやって来た。早く逃げないと。だが、その先の敏別トンネルを抜けると、瀕死の犬になってしまう。どうしよう。このまま無事に帰りたいのに。


「もう大丈夫なのか?」

「ああ。早く逃げよう! そして、現実の世界へ帰ろう!」


 それを聞いて、霊媒師は彼らを安心させようとした。もう大丈夫だ。通っても、元の姿のままだ。だから、早く逃げよう。


「うん!」

「もうこの先行っても大丈夫なの?」

「いいよ。もう悪霊はいないから」


 それを聞いて、一部の子供たちは敏別トンネルを進んでいる。何としても生きて家に帰るんだ。その為にも、敏別トンネルを抜けないと。


「いいから早く! 沈むぞ!」

「はい!」


 それを聞いて、子供たちはみんな敏別トンネルに進んだ。霊媒師の言うとおり、何も起こらない。それを確認すると、子供たちは次から次へと進んでいく。


「大丈夫だ! 早く行こう!」

「うん!」


 12人もその先に進んでいく。早く逃げないと、湖底に取り残されてしまう。早く行こう!


 最後の1人、武が通り過ぎると、間もなく敏別トンネルは閉じ、水は流れ込まなくなった。そしてそこには、敏別トンネルの閉塞地点がある。元の敏別トンネルに戻ったのだ。


「さぁさぁみんな、早く帰ろう!」


 それを見て、大輔は思った、自分だけでも逃げないと。刑務所なんてこりごりだ。


「くそっ・・・」


 それを見て、警察は大輔を追いかけた。大輔は人を殺した。そして何より、多くの子供たちを誘拐して、敏別炭鉱で働かせた。逮捕しなければならない。


「待て!」


 敏別トンネルの手前で、大輔は警察に取り押さえられた。もう動けない。どうしよう。


「離せ!」

「お前、人を殺したんだろ?」


 それを聞かれると、大輔は肩を落とした。確かに自分は人を殺した。自分の秘密を知られたくないからだ。


「はい・・・」

「子供たちを連れ去ったのも、お前だな! どうしてそんな事をやった?」


 それを聞くと、大輔は泣き出した。泣きたくなるほどの理由があるようだ。


「俺は、いじめっ子を苦しめたかった。それが、自分の喜びだと思っていた・・・」


 大輔は自分が駆け込みサイトを作り、子供たちを誘拐した理由を話し出した。

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