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 その直後、家に隠れていた4人も捕まり、ここで死ぬまで労働させられてしまった。自分たちは子供たちを救おうとしてここにやって来たのに、どうしてこんな事にならなければならないのか。どんなに問いかけても、全く答えが見つからない。どんなに疲れても、仕事を続けなければならない。どうしようもない。


「くそっ、どうしてこんな事に・・・」


 佐藤は汗をかいていた。とても疲れていた。だが、やらなければ。でも、早く逃げなければ。子供たちを救うためにここに来たんだから。


「もうここからは逃げられないのかな?」

「そうかもしれない・・・」


 光も武も上田も絶望していた。ここで死んでいくのかな? 子供たちを救いたいがためにここにやって来たのに、ここで死ぬのは無念だ。


「里子、怜太、ごめん・・・」


 武は妻子に申し訳ない気持ちだ。実家に置いてきた妻子が心配でしょうがない。なんとしても生きて帰るんだ。子供たちも絶対に救うんだ。だけど、それは実現できるんだろうか? 武は不安になってきた。


「誰か助けてくれないかな?」


 光は祈っていた。誰かが助けに来てくれるはずだ。きっと拾う神がやってくるはずだ。だが、それはいつになるんだろう。もう来ないんじゃないかと思えてきた。


「そうだったらいいけど・・・」

「うーん・・・」


 その時、見張りがやって来た。彼らは勇人や大輔の部下で、彼らに忠実だ。現実世界からやって来た子供にも容赦はない。


「この野郎、仕事しろ!」

「痛いっ!」


 鞭で叩かれた光は泣き出した。だが、見張りは無視するかのようにしごく。ここはまるで地獄のようだ。早く脱出しなければ。


「お前、オーナーに歯向かったんだから、死ぬまで頑張ってもらうぞ!」

「そんな・・・」


 光は抵抗した。だが、再び見張りが鞭で叩いた。


「ぐずぐず言ってんじゃねーよ!」


 光はその場に倒れこんだ。だが、仕事をしなければ。つらいけれど、きっと誰かが助けてくれると信じて。


「どうしよう・・・」

「このまま救えないまま死んでいくのかな?」


 上田も絶望していた。現実世界からここには来れても、帰る手段はない。帰ろうとしたら呪いで瀕死の犬にされてしまう。千尋みたいに死んでしまうだろう。


「わからないけど、そうなるのかもしれない」

「何とかしようと思ったのに、こんな事になるなんて・・・」


 武は無念でしょうがないと思っていた。救いたい気持ちでいっぱいなのに、何もできない。


「誰かが救いに来るのを、待とう!」

「だけど・・・」


 と、隣にいた弘人が肩を叩いた。武は驚いた。まさか、生徒が励ましてくれるとは。


「奇跡を信じよう!」

「そうだね」


 ふと、武は家族の事を思い出した。家族は心配しているんだろうか? 駆け込みサイトの事を調べているんだろうか?


「家族、どうしてるのかな?」

「心配?」


 全く連絡が取れない。それは心配だろうな。でも、きっと頑張っていると、警察も動いていると信じよう。だけど、本当に動いているんだろうか? ここは現実にはない世界だ。


「うん」


 突然、誰かが光の肩を叩いた。勝だ。まさか、勝が肩を叩いてくれるとは。つい最近まで光をいじめていたのに、すっかり開き直ったようだ。だが、今開き直っても遅い。ここはただ死を待つのみの場所なのだから。


「光、大丈夫か?」

「うん・・・」


 彼らは決意した。救うためにここにやって来たのだ。絶対に一緒に帰ろう。そして、みんなで現実世界に帰ろう。


「絶対に一緒に帰ろうな!」

「ああ・・・」


 光は思った。こんなひどい所に連れ去ったのは、誰なんだろう。まさか、勇人が連れ去ったんだろうか? それとも、大輔だろうか?


「誰に連れ去られたの?」

「この男だ!」


 弘人は1枚の写真を出した。弘人はその男を隠し撮りしていた。その男は、伊藤大輔だ。やはりあの男がやっていたのか。とても許せないな。


「大輔か・・・」

「うん。この人が駆け込みサイトの管理人なんだって」


 この男が駆け込みサイトの管理人なのか。きっと、車の中で管理していて、その車に連れ去った子供たちを閉じ込めていたんだな。とても許せないな。


「そうなんだ・・・」

「あいつが管理人だったのか・・・。許せない・・・」


 武は思った。今頃、妻子は管理人の正体を調べているんだろうか? 大輔が管理人だとわかったんだろうか? すでに警察は連れ去った犯人が伊藤大輔だとわかって、指名手配しているんだろうか?


「だけど誰にも通報できない・・・」


 だが、ここからではだれにも通報できない。ここは現実世界とは隔離された世界だ。どんな情報も遮断されてしまう。情報を漏らそうと思っても、瀕死の犬にされてしまう。


「わかってんのに・・・」

「つらいよな・・・」

「うん・・・」


 武は泣き出した。妻子を残して、ここで死ぬのはごめんだ。なんとしてもここから脱出して、ここに残らなければ。ここで死んだら、きっと妻子は悲しむだろうな。そんな事にならないためにも、脱出する手段を探さなければ。


「里子、怜太、ごめん・・・」


 突然、上田は武の肩を叩いた。武は驚いた。


「その気持ち、わかるよ」

「ありがとう・・・」


 彼らは決意した。絶対にみんなで帰るんだ。そして、みんなも救うんだと。

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